「おお振り」×「◆A」2年後
【ロマンティック(?)な夜】
「アルコール入ってないのに潰れるヤツって、初めて見た。」
阿部は感嘆を込めて、そう言った。
御幸も「オレもだ」と呆れたように言って、三橋もコクコクと頷く。
沢村は見事に潰れて、寝入ってしまったのだ。
ここまで来るともう呆れるを通り越して、感動さえ覚える。
久し振りに再会した御幸、沢村と阿部、三橋。
4人は食事をしながら、昔話に花を咲かせた。
特にはしゃいでいたのは沢村で、とにかく豪快に食べて、笑った。
そして二次会は、三橋の部屋で行なうことになっている。
御幸も沢村も有名人だし、人目につかない方が気楽だろうという配慮だ。
そして食事を終え、移動しようとしたのだが。
「とりあえず、行きましょう。」
阿部はそう言って、タクシーを止めた。
三橋のマンションまでは、そんなに遠くない。
徒歩で行くつもりだったが、電池切れした沢村を担いでいくのは少々しんどい。
御幸も沢村も球団の寮暮らしだが、今日は外泊すると伝えてきている。
4人はタクシーで、三橋のマンションに向かったのだが。
「いいとこに、住んでるな。」
御幸は呆れたように、そう言った。
その背中には沢村が背負われており、盛大ないびきと共に寝込んでいる。
もし起きていたら、目の前にそびえ立つ高級マンションに驚き、大騒ぎしていただろう。
「三橋のジイさんの持ち物なんスよ」
阿部はサラリと説明した。
御幸は「すげぇな」ともう一度呆れる。
都内の一等地、一般的な庶民には絶対に手が出ないだろう。
さらに阿部は、御幸が驚くようなことを言う。
「ちなみにオレの部屋は、三橋の隣です。これも三橋のジイさんがまとめて用意してくれて。」
「・・・お前ら、俺らより恵まれてんな。」
そうこうしているうちに、エレベーターで20階にまで上がる。
最上階ではないが高層で、夜景もさぞかしきれいだろう。
「ここ、です。」
最奥の部屋まで来ると、三橋が鍵を開けて中に入れてくれた。
広いし、綺麗な部屋だ。
三橋は「おフロ、も、ベット、も、好きに、使って、ください」と言う。
阿部が「冷蔵庫も補充してあるんで」と笑った。
御幸が「は?」と首を傾げている間に、2人は部屋を出ていく。
最後に阿部が振り返って「何かあったら、オレら隣にいるんで」と言い残して、ドアが閉まった。
どうやら阿部と三橋に仕組まれたらしい。
御幸はやられたと思いながら、深いため息をついた。
床には沢村が大の字になって、相変わらずいびきをかいていた。
*****
沢村が目を覚ましたのは、そろそろ日付が変わろうという時間だった。
それまでに御幸は苦労して上着を脱がせると、ベットまで運んだ。
いくらなんでも床に放置しておくのは、かわいそうだと思ったからだ。
三橋の部屋は、恋人と過ごすのには申し分のない部屋だった。
都心の一等地で、夜景の綺麗な高級マンションの高層階。
これだけでも、大抵の女の子は堕ちるような気がする。
だが相手はそういうムードがまったく通じない男、沢村だ。
「まぁ、疲れてるんだろうな」
御幸は沢村の寝顔を見ながら、そう思った。
プロ野球1年目、2軍から1軍に上がったばかり。
御幸は最初から一軍だったし、ポジションも違う。
だがプロ1年目の緊張感はよくわかるつもりだ。
実績を残さなければ、いつでもお払い箱。
緊張感の中で戦わなければならないプレッシャーは、意識していなくても疲れる。
無防備な寝顔に思わず御幸の頬が緩んだ瞬間、沢村がパチリと目を開けたのだ。
「何なんすか、これ!?」
沢村が大声で絶叫する。
御幸は思わず「うるせーよ」と叫び、頭を抱えた。
何でよりによって、このタイミングで起きるのか。
「ここ、どこっすか!?御幸先輩、まさか、オレを拉致。。。」
「するか!バカ!!」
御幸は思わず平手で、沢村の頭を叩いた。
そしてため息をつきながら、ここまで来た経緯や三橋の部屋であることを説明したのだった。
「こういうときって、どうするべきなんスかね?」
「は?」
「一応付き合ってるわけでしょ。オレら。」
「・・・まぁ、差し当たっては、こんな感じ?」
御幸は悪戯っぽく笑うと、沢村が横になっているベットの横に滑り込んだ。
三橋が普段使っているであろうベットは、ダブルサイズ。
2人で眠るにも、問題ない。
まさかこのために買い替えたわけではないだろうから、大きなベットが好みなのだろう。
「うわわわ!」
沢村が狼狽えた声を上げながら、顔を赤くしている。
御幸はそれを見ながら「もしも嫌なら、お前床で寝ろよ」と言った。
沢村が「先輩が床でしょう」と言い返したが、その声にはかすかに甘い響きを含んでいた。
「さすがにシーズン中だし、最後までは無理だけど」
御幸はそう言いながら、ベットサイドのテーブルにあるリモコンで、照明を消した。
暗くなった部屋に、沢村の「さ、最後って」と慌てた声が響く。
御幸はその声ごと、ずっと想い続けた男を抱き寄せた。
沢村は腕の中でビクリと震えたが、そのまま逆らうことはなかった。
その頃、隣の部屋では、阿部と三橋が同じようにベットで身を寄せ合っていた。
この2人も明日は大学があるので「最後まで」はできない。
だがお互いの体温を分け合っているだけで、満ち足りた気持ちになってくる。
「沢村、君、たち、どうし、てる、かな?」
「さぁな。オレらと同じじゃね?」
阿部の腕の中の三橋は、半分ウトウトと眠りかけている。
その温もりを抱きしめながら、阿部もゆっくりと目を閉じた。
【続く】
「アルコール入ってないのに潰れるヤツって、初めて見た。」
阿部は感嘆を込めて、そう言った。
御幸も「オレもだ」と呆れたように言って、三橋もコクコクと頷く。
沢村は見事に潰れて、寝入ってしまったのだ。
ここまで来るともう呆れるを通り越して、感動さえ覚える。
久し振りに再会した御幸、沢村と阿部、三橋。
4人は食事をしながら、昔話に花を咲かせた。
特にはしゃいでいたのは沢村で、とにかく豪快に食べて、笑った。
そして二次会は、三橋の部屋で行なうことになっている。
御幸も沢村も有名人だし、人目につかない方が気楽だろうという配慮だ。
そして食事を終え、移動しようとしたのだが。
「とりあえず、行きましょう。」
阿部はそう言って、タクシーを止めた。
三橋のマンションまでは、そんなに遠くない。
徒歩で行くつもりだったが、電池切れした沢村を担いでいくのは少々しんどい。
御幸も沢村も球団の寮暮らしだが、今日は外泊すると伝えてきている。
4人はタクシーで、三橋のマンションに向かったのだが。
「いいとこに、住んでるな。」
御幸は呆れたように、そう言った。
その背中には沢村が背負われており、盛大ないびきと共に寝込んでいる。
もし起きていたら、目の前にそびえ立つ高級マンションに驚き、大騒ぎしていただろう。
「三橋のジイさんの持ち物なんスよ」
阿部はサラリと説明した。
御幸は「すげぇな」ともう一度呆れる。
都内の一等地、一般的な庶民には絶対に手が出ないだろう。
さらに阿部は、御幸が驚くようなことを言う。
「ちなみにオレの部屋は、三橋の隣です。これも三橋のジイさんがまとめて用意してくれて。」
「・・・お前ら、俺らより恵まれてんな。」
そうこうしているうちに、エレベーターで20階にまで上がる。
最上階ではないが高層で、夜景もさぞかしきれいだろう。
「ここ、です。」
最奥の部屋まで来ると、三橋が鍵を開けて中に入れてくれた。
広いし、綺麗な部屋だ。
三橋は「おフロ、も、ベット、も、好きに、使って、ください」と言う。
阿部が「冷蔵庫も補充してあるんで」と笑った。
御幸が「は?」と首を傾げている間に、2人は部屋を出ていく。
最後に阿部が振り返って「何かあったら、オレら隣にいるんで」と言い残して、ドアが閉まった。
どうやら阿部と三橋に仕組まれたらしい。
御幸はやられたと思いながら、深いため息をついた。
床には沢村が大の字になって、相変わらずいびきをかいていた。
*****
沢村が目を覚ましたのは、そろそろ日付が変わろうという時間だった。
それまでに御幸は苦労して上着を脱がせると、ベットまで運んだ。
いくらなんでも床に放置しておくのは、かわいそうだと思ったからだ。
三橋の部屋は、恋人と過ごすのには申し分のない部屋だった。
都心の一等地で、夜景の綺麗な高級マンションの高層階。
これだけでも、大抵の女の子は堕ちるような気がする。
だが相手はそういうムードがまったく通じない男、沢村だ。
「まぁ、疲れてるんだろうな」
御幸は沢村の寝顔を見ながら、そう思った。
プロ野球1年目、2軍から1軍に上がったばかり。
御幸は最初から一軍だったし、ポジションも違う。
だがプロ1年目の緊張感はよくわかるつもりだ。
実績を残さなければ、いつでもお払い箱。
緊張感の中で戦わなければならないプレッシャーは、意識していなくても疲れる。
無防備な寝顔に思わず御幸の頬が緩んだ瞬間、沢村がパチリと目を開けたのだ。
「何なんすか、これ!?」
沢村が大声で絶叫する。
御幸は思わず「うるせーよ」と叫び、頭を抱えた。
何でよりによって、このタイミングで起きるのか。
「ここ、どこっすか!?御幸先輩、まさか、オレを拉致。。。」
「するか!バカ!!」
御幸は思わず平手で、沢村の頭を叩いた。
そしてため息をつきながら、ここまで来た経緯や三橋の部屋であることを説明したのだった。
「こういうときって、どうするべきなんスかね?」
「は?」
「一応付き合ってるわけでしょ。オレら。」
「・・・まぁ、差し当たっては、こんな感じ?」
御幸は悪戯っぽく笑うと、沢村が横になっているベットの横に滑り込んだ。
三橋が普段使っているであろうベットは、ダブルサイズ。
2人で眠るにも、問題ない。
まさかこのために買い替えたわけではないだろうから、大きなベットが好みなのだろう。
「うわわわ!」
沢村が狼狽えた声を上げながら、顔を赤くしている。
御幸はそれを見ながら「もしも嫌なら、お前床で寝ろよ」と言った。
沢村が「先輩が床でしょう」と言い返したが、その声にはかすかに甘い響きを含んでいた。
「さすがにシーズン中だし、最後までは無理だけど」
御幸はそう言いながら、ベットサイドのテーブルにあるリモコンで、照明を消した。
暗くなった部屋に、沢村の「さ、最後って」と慌てた声が響く。
御幸はその声ごと、ずっと想い続けた男を抱き寄せた。
沢村は腕の中でビクリと震えたが、そのまま逆らうことはなかった。
その頃、隣の部屋では、阿部と三橋が同じようにベットで身を寄せ合っていた。
この2人も明日は大学があるので「最後まで」はできない。
だがお互いの体温を分け合っているだけで、満ち足りた気持ちになってくる。
「沢村、君、たち、どうし、てる、かな?」
「さぁな。オレらと同じじゃね?」
阿部の腕の中の三橋は、半分ウトウトと眠りかけている。
その温もりを抱きしめながら、阿部もゆっくりと目を閉じた。
【続く】