「おお振り」×「◆A」2年後
【引退!そして進路】
久し振りにいろいろ話をしたいな。
沢村からのメールを読んだ三橋は、思わず頬を緩ませていた。
三橋は最後の夏大で敗退し、高校野球を終えた。
結局甲子園に行くことはできなかった。
1年の夏以降、だいたい県のベスト16にはほぼ確実に残るほどの実績を残した。
創部間もない県立高校としては、これはかなりの快挙だ。
できることはすべてやったと思う。
だけど悔いがないかと問われれば、答えはノーだ。
あのときこうすれば、勝てていたのではないか。
もう少しだけ頑張れていれば、甲子園に行けたのではないか。
今はもう取り返しがつかないことを思いだして、迷ったりする。
だけど終わってしまった日々は、もう戻らない。
次に向かって、進まなければならない。
三橋の次の目標は、大学受験だ。
野球はまだまだ続けたいが、プロに行くほどの能力がないことはわかっている。
だから最後の学生生活である大学で、全てを出し切るつもりだ。
そして大学卒業と共に、野球も終わらせる。
最後の4年間、バッテリーを組もう。
高校最後の試合の後、阿部はそう言ってくれた。
阿部もまた三橋同様、大学で野球を終わらせるつもりでいる。
最後の4年間だから、まだ2人でやりたい。
そこまでは迷いながらも順調に決まったのだ。
だがそこから先が大変だった。
何しろ阿部と三橋では、学力が違いすぎるのだ。
大学で野球をするなら最悪でも東都リーグ、できれば六大学を狙いたい。
そして阿部ならば、充分射程圏内なのだ。
だが三橋の学力では、かなり難しい。
死ぬほど、勉強しなきゃ。
三橋は秘かにそう決意していた。
阿部は三橋と同じ大学に行けるなら、ランクを落としてもいいと言ってくれている。
でもそれはさすがに申し訳ないと思う。
だからやはり六大学を目指して、頑張らなくてはならない。
そんなとき、以前練習試合をして親しくなった沢村から、メールが届いたのだった。
久し振りにいろいろ話をしたいな。
沢村からのメールを読んだ三橋は、思わず頬を緩ませていた。
現役時代はお互いに忙しく、数えるほどしか会えなかった。
だけど沢村とは不思議と、ウマが合ったのだ。
ここ最近、勉強ばかりで少々ストレスも溜まっている。
1日くらい会ったところで、バチは当たらないだろう。
オレも話したい。遊びにおいでよ。
三橋は携帯電話を操作して、沢村に返信を送った。
そして今から再会のシーンを想像して、少しだけ笑った。
*****
オレも話したい。遊びにおいでよ。
三橋からの返信を受け取った沢村は「おおお!」と声を上げた。
部を引退した後、沢村は手持ち無沙汰な日々を送っていた。
引退した後の寮という環境は、実に落ち着かない。
同じ学年でも、実家が通学圏内にある者は、寮を出てしまった。
寮では後輩たちが、依然として甲子園を目標にして頑張っているからだ。
引退した身の上で、それらを目の当たりにするのは、案外辛かったりする。
沢村だって、本当は寮を出たいところだ。
後輩たちを見ていると、羨ましいような、じれったいような気分になる。
どうにもストレスが溜まってしまうのだ。
だが現実問題、沢村の実家の長野からは通えない。
近くに親戚などもないので、寮にいるしかないのだ。
沢村は三橋と違い、進学は考えていない。
甲子園のマウンドに上がったこともある沢村は、今や全国区の注目選手である。
目指すはプロ野球選手。
それもあながち遠い夢ではない。
事実「卒業したらうちへ」と声をかけてくれた球団もあるのだ。
だけど1つ、問題があった。
沢村には行きたい球団があるのだ。
だけどそこから、スカウトはこなかった。
その球団はあろうことか、降谷の獲得に動いているのだ。
もちろんドラフト前であるので、あくまで非公式だ。
だが学校を通じて、スカウト担当者が降谷に接触している。
ここでも降谷かよ。
沢村は思わず悪態をついてしまう。
高校の3年間、いつも降谷を追いかけていた気がする。
引退近くになって、ようやく差を詰められたと思っていたのに。
最後の最後で、行きたい球団を攫われたような気分だ。
もちろん降谷が悪いのではないと、百も承知しているが。
沢村が三橋に連絡を取ったのは、進路に迷ったからだ。
別に相談に乗って欲しいとまでは思っていないが、少しだけ話を聞いてもらいたい。
でもチームメイトでそれをしてくれそうな春市も金丸も今は寮を出て、実家に戻っている。
それなら久し振りに三橋と会って話せば、気分転換になりそうな気がする。
そうと決まれば、早く会いたいな。
沢村は頬を緩ませながら、三橋との再会を楽しみにしていた。
【続く】
久し振りにいろいろ話をしたいな。
沢村からのメールを読んだ三橋は、思わず頬を緩ませていた。
三橋は最後の夏大で敗退し、高校野球を終えた。
結局甲子園に行くことはできなかった。
1年の夏以降、だいたい県のベスト16にはほぼ確実に残るほどの実績を残した。
創部間もない県立高校としては、これはかなりの快挙だ。
できることはすべてやったと思う。
だけど悔いがないかと問われれば、答えはノーだ。
あのときこうすれば、勝てていたのではないか。
もう少しだけ頑張れていれば、甲子園に行けたのではないか。
今はもう取り返しがつかないことを思いだして、迷ったりする。
だけど終わってしまった日々は、もう戻らない。
次に向かって、進まなければならない。
三橋の次の目標は、大学受験だ。
野球はまだまだ続けたいが、プロに行くほどの能力がないことはわかっている。
だから最後の学生生活である大学で、全てを出し切るつもりだ。
そして大学卒業と共に、野球も終わらせる。
最後の4年間、バッテリーを組もう。
高校最後の試合の後、阿部はそう言ってくれた。
阿部もまた三橋同様、大学で野球を終わらせるつもりでいる。
最後の4年間だから、まだ2人でやりたい。
そこまでは迷いながらも順調に決まったのだ。
だがそこから先が大変だった。
何しろ阿部と三橋では、学力が違いすぎるのだ。
大学で野球をするなら最悪でも東都リーグ、できれば六大学を狙いたい。
そして阿部ならば、充分射程圏内なのだ。
だが三橋の学力では、かなり難しい。
死ぬほど、勉強しなきゃ。
三橋は秘かにそう決意していた。
阿部は三橋と同じ大学に行けるなら、ランクを落としてもいいと言ってくれている。
でもそれはさすがに申し訳ないと思う。
だからやはり六大学を目指して、頑張らなくてはならない。
そんなとき、以前練習試合をして親しくなった沢村から、メールが届いたのだった。
久し振りにいろいろ話をしたいな。
沢村からのメールを読んだ三橋は、思わず頬を緩ませていた。
現役時代はお互いに忙しく、数えるほどしか会えなかった。
だけど沢村とは不思議と、ウマが合ったのだ。
ここ最近、勉強ばかりで少々ストレスも溜まっている。
1日くらい会ったところで、バチは当たらないだろう。
オレも話したい。遊びにおいでよ。
三橋は携帯電話を操作して、沢村に返信を送った。
そして今から再会のシーンを想像して、少しだけ笑った。
*****
オレも話したい。遊びにおいでよ。
三橋からの返信を受け取った沢村は「おおお!」と声を上げた。
部を引退した後、沢村は手持ち無沙汰な日々を送っていた。
引退した後の寮という環境は、実に落ち着かない。
同じ学年でも、実家が通学圏内にある者は、寮を出てしまった。
寮では後輩たちが、依然として甲子園を目標にして頑張っているからだ。
引退した身の上で、それらを目の当たりにするのは、案外辛かったりする。
沢村だって、本当は寮を出たいところだ。
後輩たちを見ていると、羨ましいような、じれったいような気分になる。
どうにもストレスが溜まってしまうのだ。
だが現実問題、沢村の実家の長野からは通えない。
近くに親戚などもないので、寮にいるしかないのだ。
沢村は三橋と違い、進学は考えていない。
甲子園のマウンドに上がったこともある沢村は、今や全国区の注目選手である。
目指すはプロ野球選手。
それもあながち遠い夢ではない。
事実「卒業したらうちへ」と声をかけてくれた球団もあるのだ。
だけど1つ、問題があった。
沢村には行きたい球団があるのだ。
だけどそこから、スカウトはこなかった。
その球団はあろうことか、降谷の獲得に動いているのだ。
もちろんドラフト前であるので、あくまで非公式だ。
だが学校を通じて、スカウト担当者が降谷に接触している。
ここでも降谷かよ。
沢村は思わず悪態をついてしまう。
高校の3年間、いつも降谷を追いかけていた気がする。
引退近くになって、ようやく差を詰められたと思っていたのに。
最後の最後で、行きたい球団を攫われたような気分だ。
もちろん降谷が悪いのではないと、百も承知しているが。
沢村が三橋に連絡を取ったのは、進路に迷ったからだ。
別に相談に乗って欲しいとまでは思っていないが、少しだけ話を聞いてもらいたい。
でもチームメイトでそれをしてくれそうな春市も金丸も今は寮を出て、実家に戻っている。
それなら久し振りに三橋と会って話せば、気分転換になりそうな気がする。
そうと決まれば、早く会いたいな。
沢村は頬を緩ませながら、三橋との再会を楽しみにしていた。
【続く】