「おお振り」×「◆A」10年後
【まだ引退するな】
「絶対ダメ!許さないからな!」
沢村は三橋の襟首を想いきり掴んで、詰め寄った。
御幸と阿部が慌てて止めに入ったが、その剣幕は収まらなかった。
二軍で調整中の沢村は、苦戦していた。
表向きは順調だ。
球速は落ちていないし、変化球のキレも悪くない。
試合に出してもらえば、ほぼ無失点だ。
表面上の成績だけ見れば、絶好調と言えるだろう。
だけど二軍とはそういうものではない。
一軍に行くための調整を行なう場所なのだ。
本人が、そして首脳陣が一軍で通用すると判断するのが大事だ。
そういう意味で、沢村は伸び悩んでいた。
どうにもしっくりこないのだ。
どこが悪いとかではなく、何かがうまくハマっていない。
その何かがわからずに、悪戦苦闘している。
一軍行きの声がかからないのは、監督やコーチ陣も同じ判断なのだろう。
とにかく早く一軍に。
口で言うのは簡単だが、実際はかなり厳しい。
特に精神的に、結構シンドイのだ。
いつ一軍に行けるのか、まったくわからない。
高校時代は大会があり、その前にスタメン発表。
つまりわかりやすいゴールがあった。
だがそのゴールが見えず、ただひたすら走るしかない。
三橋ってスゲェよな。
沢村は今さらのようにそんなことを思う。
大学卒業後にプロ入りした三橋は二軍スタート、一軍まで結構な時間がかかった。
その後も何度か二軍落ちも経験している。
だがその間も、沢村と顔を合わせた時にはニコニコ笑っていた。
闘争心がないのかと思ったりもしたが、さにあらず。
地道にコツコツ努力して、ついには一軍定着。
そして今や守護神と呼ばれるまでになっている。
その裏にはどれだけの試練があり、どれだけのメンタルが必要だったのだろう?
さらに沢村にはもう1つ、神経をすり減らすことがあった。
それは寮内の人間関係だ。
一時的に独身寮に移った沢村だが、嫌がらせを仕掛けてくる者たちもいる。
その多くはもう一軍入りが絶望的になっている年長の選手たちだ。
自ら退団する決断もできず、起死回生の一軍入りを目指すこともしない。
ただダラダラと二軍慣れして、沢村のような本気で一軍を狙う選手にからんでくる。
嫌みを言ったり、自主練の相手を拒んだり、連絡事項をわざと言わなかったり。
1つ1つは小さいが、地味に疲れる。
そんなとき、御幸からメールが来たのだ。
大事な話がある。
今夜はマンションに戻って来られないか?
メールを読んだ沢村は一瞬迷った。
一軍に戻るまでは、マンションには帰らない。
そんな決意で寮に来たからだ。
だけど大事な話とは何か気になる。
御幸のメジャー行きの話だろうか?
沢村は迷った末に「わかりました」と返信していた。
そして沢村はマンションに戻った。
二軍の試合は昼間だったので、帰りついたのは夕方だ。
久しぶりの自宅なのに、埃っぽい感じはない。
おそらく御幸が時々掃除や換気をしてくれていたのだろう。
深夜になって、試合を終えた御幸たちが帰って来た。
物音を聞きつけた沢村は、御幸の部屋に向かう。
すると御幸だけではなく、三橋と阿部もいた。
三橋は沢村の顔を見るなり「栄純君!」と笑顔になった。
「沢村。呼び出して悪かった。お前にも聞いてほしくて。」
御幸は沢村を招き入れながら、そう言った。
それを聞いた沢村は「あれ?」と思った。
御幸の渡米の件だと予想していたからだ。
だが「大事な用」のメインは三橋と阿部で、沢村はついでのような雰囲気だ。
「三橋な。今シーズンで引退するつもりなんだって」
御幸はおもむろにそう切り出した。
沢村は「は?」と間が抜けた声を上げる。
何を言っているのか、わからなかったのだ。
だがその意味を理解した瞬間「ハァァ!?」と声を荒げた。
「まさか、ケガか?」
沢村は三橋に向き直ると、恐る恐る聞いてみる。
だが三橋がブンブンと首を振ったのを見て、怒りがこみ上げた。
ケガでもないのに引退?ありえない。
自分は一軍を目指して、日々あがきまくっているのに。
優勝争いをするチームの守護神がどうして引退するのか。
「絶対ダメ!許さないからな!」
沢村は三橋の襟首を想いきり掴んで、詰め寄った。
御幸と阿部が慌てて止めに入ったが、その剣幕は収まらなかった。
*****
「三橋な。今シーズンで引退するつもりなんだって」
御幸がそう教えてやると、沢村が「は?」と間が抜けた声を上げる。
本来は三橋が自分で伝えるべきことだが、御幸は敢えてルールを無視した。
「話がある。」
御幸はそう言って、三橋と阿部を呼び出した。
わざわざ改まってやるべきことは1つだけ。
今年限りで引退などと言い出した三橋を思いとどまらせることだ。
もちろん安易な気持ちで口にしたわけではないことはわかっている。
だがやはりどう考えても、もったいなさ過ぎると思うのだ。
三橋も阿部も、ここが三橋の最高到達地点だと思っている。
御幸はその点について、肯定も否定もできない。
三橋は投手としては地味な方だと思う。
初めて会った頃、沢村のように一目でダイヤの原石を思わせるようなものはなかった。
だけど今、プロの世界で守護神とまで呼ばれている。
三橋は運と偶然で実力以上の場所に上がってしまったと思っているらしい。
だが御幸は三橋は来るべくして来たのだと思う。
そしてもっと上にいける可能性だって、ないとは言えない。
プロになれない。またはプロになっても上に行けない。
そんなヤツがゴロゴロいる世界、運や偶然だけでは進めないものだ。
だからこそ三橋にはここで辞めて欲しくない。
これは友人として、1人の捕手としての純粋な願いだ。
さらに三橋を思い止まらせることが、チームへの最後の置き土産だとも思っていた。
今年限りで自分はいなくなる。
守護神を守ることは、自分が最後にできる貢献なのだと。
だがここからが問題だった。
三橋も阿部も決意は固そうだ。
生半可な説得では折れさせられないだろう。
そこで沢村を投入することにしたのだ。
自他ともに認めるひねくれ者の御幸より、バカ正直な沢村の方が良い。
真っ直ぐに三橋と阿部の心に響くことを言うだろう。
何より沢村はまだ三橋の決心を知らない。
まるで弟分のような三橋がこんな形で去るのを知ったら悲しむはずだ。
「まさか、ケガか?」
御幸の説明を聞いた沢村は、三橋に恐る恐る聞いた。
それはまったく正しい反応だ。
プロ野球選手が自ら引退と聞けば、誰でもそう思う。
だが三橋がブンブンと首を振ったのを見た沢村の表情が変わった。
それはわかりやすく、怒りだ。
「絶対ダメ!許さないからな!」
次の瞬間、沢村は三橋の襟首を掴んで詰め寄った。
御幸と阿部が慌てて割って入る。
この場合、心配なのは沢村の方だ。
力まかせに三橋の服を握り込めば、指の故障につながりかねない。
「落ち着け。沢村!」
「これが落ち着いてられますか!」
沢村は三橋から手を離したが、怒りは収まらないようだ。
御幸は「冷静になれ」と沢村の右肩を軽く叩く。
そしてキッチンに向かうと、冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを取った。
それを沢村に手渡すと、沢村はキャップを開けてゴクゴクと飲み始める。
この短い間に、少しだけクールダウンできたようだ。
「じゃあ何で辞めるんだ?」
「そろそろ、戻れって。ジィちゃん、が、元気なうち、に」
「ジィちゃんか。オレにもいるから孝行したい気持ちはわかる」
「で、でしょ。早く、戻って、欲しいって。」
沢村はここで「ハァァ」とため息をついた。
御幸はふと沢村の祖父を思い出す。
とは言っても、交流があるわけではない。
高校時代に試合を見に来ていて、沢村と話していたのを覚えているだけだ。
もしかしておじいちゃんっ子同士、意気投合してしまうのか?
御幸の心にそんな懸念がよぎった瞬間、沢村が「なぁ」と再び口を開いた。
「廉のジィちゃんって、お前が本当は野球を続けたがっていること、知ってるのか?」
「え?」
「オレのジィちゃんは野球してるオレを応援してくれてる。」
「それ、は、うちも」
「オレが一番カッコいいのは投げてるときだって、言ってくれたし。」
「一番、カッコいい?」
「廉もそうだろ?ジィちゃんならそんな瞬間を長く見たいって思ってくれるんじゃねーの?」
沢村の言葉はわかりやすかった。
ジィちゃんなら孫が一番幸せな瞬間を望むはず。
それを聞いた三橋は考え込んでしまった。
阿部もまたいつになく思いつめた表情だ。
さすが沢村、腹をくくったバカは強い。
「三橋。阿部。オレも沢村と同意見だ。まだ引退するな。」
御幸は最後に決めぜリフよろしくそう言った。
沢村が「オイシイとこ、持ってかれた」と文句を言っている。
だけど知ったこっちゃない。
とりあえず三橋と阿部が考え直してくれれば、それで良い。
やがて三橋と阿部が御幸の部屋を出ていく。
今夜は多分、2人で話し合うだろう。
そして部屋には御幸と沢村が残された。
「久しぶりだな。元気でやってるか?」
御幸は改めて沢村に声をかけた。
沢村が「今言う!?」と顔をしかめている。
だが御幸は動じることなく「まぁ順序はおかしいけどな」と苦笑した。
【続く】
「絶対ダメ!許さないからな!」
沢村は三橋の襟首を想いきり掴んで、詰め寄った。
御幸と阿部が慌てて止めに入ったが、その剣幕は収まらなかった。
二軍で調整中の沢村は、苦戦していた。
表向きは順調だ。
球速は落ちていないし、変化球のキレも悪くない。
試合に出してもらえば、ほぼ無失点だ。
表面上の成績だけ見れば、絶好調と言えるだろう。
だけど二軍とはそういうものではない。
一軍に行くための調整を行なう場所なのだ。
本人が、そして首脳陣が一軍で通用すると判断するのが大事だ。
そういう意味で、沢村は伸び悩んでいた。
どうにもしっくりこないのだ。
どこが悪いとかではなく、何かがうまくハマっていない。
その何かがわからずに、悪戦苦闘している。
一軍行きの声がかからないのは、監督やコーチ陣も同じ判断なのだろう。
とにかく早く一軍に。
口で言うのは簡単だが、実際はかなり厳しい。
特に精神的に、結構シンドイのだ。
いつ一軍に行けるのか、まったくわからない。
高校時代は大会があり、その前にスタメン発表。
つまりわかりやすいゴールがあった。
だがそのゴールが見えず、ただひたすら走るしかない。
三橋ってスゲェよな。
沢村は今さらのようにそんなことを思う。
大学卒業後にプロ入りした三橋は二軍スタート、一軍まで結構な時間がかかった。
その後も何度か二軍落ちも経験している。
だがその間も、沢村と顔を合わせた時にはニコニコ笑っていた。
闘争心がないのかと思ったりもしたが、さにあらず。
地道にコツコツ努力して、ついには一軍定着。
そして今や守護神と呼ばれるまでになっている。
その裏にはどれだけの試練があり、どれだけのメンタルが必要だったのだろう?
さらに沢村にはもう1つ、神経をすり減らすことがあった。
それは寮内の人間関係だ。
一時的に独身寮に移った沢村だが、嫌がらせを仕掛けてくる者たちもいる。
その多くはもう一軍入りが絶望的になっている年長の選手たちだ。
自ら退団する決断もできず、起死回生の一軍入りを目指すこともしない。
ただダラダラと二軍慣れして、沢村のような本気で一軍を狙う選手にからんでくる。
嫌みを言ったり、自主練の相手を拒んだり、連絡事項をわざと言わなかったり。
1つ1つは小さいが、地味に疲れる。
そんなとき、御幸からメールが来たのだ。
大事な話がある。
今夜はマンションに戻って来られないか?
メールを読んだ沢村は一瞬迷った。
一軍に戻るまでは、マンションには帰らない。
そんな決意で寮に来たからだ。
だけど大事な話とは何か気になる。
御幸のメジャー行きの話だろうか?
沢村は迷った末に「わかりました」と返信していた。
そして沢村はマンションに戻った。
二軍の試合は昼間だったので、帰りついたのは夕方だ。
久しぶりの自宅なのに、埃っぽい感じはない。
おそらく御幸が時々掃除や換気をしてくれていたのだろう。
深夜になって、試合を終えた御幸たちが帰って来た。
物音を聞きつけた沢村は、御幸の部屋に向かう。
すると御幸だけではなく、三橋と阿部もいた。
三橋は沢村の顔を見るなり「栄純君!」と笑顔になった。
「沢村。呼び出して悪かった。お前にも聞いてほしくて。」
御幸は沢村を招き入れながら、そう言った。
それを聞いた沢村は「あれ?」と思った。
御幸の渡米の件だと予想していたからだ。
だが「大事な用」のメインは三橋と阿部で、沢村はついでのような雰囲気だ。
「三橋な。今シーズンで引退するつもりなんだって」
御幸はおもむろにそう切り出した。
沢村は「は?」と間が抜けた声を上げる。
何を言っているのか、わからなかったのだ。
だがその意味を理解した瞬間「ハァァ!?」と声を荒げた。
「まさか、ケガか?」
沢村は三橋に向き直ると、恐る恐る聞いてみる。
だが三橋がブンブンと首を振ったのを見て、怒りがこみ上げた。
ケガでもないのに引退?ありえない。
自分は一軍を目指して、日々あがきまくっているのに。
優勝争いをするチームの守護神がどうして引退するのか。
「絶対ダメ!許さないからな!」
沢村は三橋の襟首を想いきり掴んで、詰め寄った。
御幸と阿部が慌てて止めに入ったが、その剣幕は収まらなかった。
*****
「三橋な。今シーズンで引退するつもりなんだって」
御幸がそう教えてやると、沢村が「は?」と間が抜けた声を上げる。
本来は三橋が自分で伝えるべきことだが、御幸は敢えてルールを無視した。
「話がある。」
御幸はそう言って、三橋と阿部を呼び出した。
わざわざ改まってやるべきことは1つだけ。
今年限りで引退などと言い出した三橋を思いとどまらせることだ。
もちろん安易な気持ちで口にしたわけではないことはわかっている。
だがやはりどう考えても、もったいなさ過ぎると思うのだ。
三橋も阿部も、ここが三橋の最高到達地点だと思っている。
御幸はその点について、肯定も否定もできない。
三橋は投手としては地味な方だと思う。
初めて会った頃、沢村のように一目でダイヤの原石を思わせるようなものはなかった。
だけど今、プロの世界で守護神とまで呼ばれている。
三橋は運と偶然で実力以上の場所に上がってしまったと思っているらしい。
だが御幸は三橋は来るべくして来たのだと思う。
そしてもっと上にいける可能性だって、ないとは言えない。
プロになれない。またはプロになっても上に行けない。
そんなヤツがゴロゴロいる世界、運や偶然だけでは進めないものだ。
だからこそ三橋にはここで辞めて欲しくない。
これは友人として、1人の捕手としての純粋な願いだ。
さらに三橋を思い止まらせることが、チームへの最後の置き土産だとも思っていた。
今年限りで自分はいなくなる。
守護神を守ることは、自分が最後にできる貢献なのだと。
だがここからが問題だった。
三橋も阿部も決意は固そうだ。
生半可な説得では折れさせられないだろう。
そこで沢村を投入することにしたのだ。
自他ともに認めるひねくれ者の御幸より、バカ正直な沢村の方が良い。
真っ直ぐに三橋と阿部の心に響くことを言うだろう。
何より沢村はまだ三橋の決心を知らない。
まるで弟分のような三橋がこんな形で去るのを知ったら悲しむはずだ。
「まさか、ケガか?」
御幸の説明を聞いた沢村は、三橋に恐る恐る聞いた。
それはまったく正しい反応だ。
プロ野球選手が自ら引退と聞けば、誰でもそう思う。
だが三橋がブンブンと首を振ったのを見た沢村の表情が変わった。
それはわかりやすく、怒りだ。
「絶対ダメ!許さないからな!」
次の瞬間、沢村は三橋の襟首を掴んで詰め寄った。
御幸と阿部が慌てて割って入る。
この場合、心配なのは沢村の方だ。
力まかせに三橋の服を握り込めば、指の故障につながりかねない。
「落ち着け。沢村!」
「これが落ち着いてられますか!」
沢村は三橋から手を離したが、怒りは収まらないようだ。
御幸は「冷静になれ」と沢村の右肩を軽く叩く。
そしてキッチンに向かうと、冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを取った。
それを沢村に手渡すと、沢村はキャップを開けてゴクゴクと飲み始める。
この短い間に、少しだけクールダウンできたようだ。
「じゃあ何で辞めるんだ?」
「そろそろ、戻れって。ジィちゃん、が、元気なうち、に」
「ジィちゃんか。オレにもいるから孝行したい気持ちはわかる」
「で、でしょ。早く、戻って、欲しいって。」
沢村はここで「ハァァ」とため息をついた。
御幸はふと沢村の祖父を思い出す。
とは言っても、交流があるわけではない。
高校時代に試合を見に来ていて、沢村と話していたのを覚えているだけだ。
もしかしておじいちゃんっ子同士、意気投合してしまうのか?
御幸の心にそんな懸念がよぎった瞬間、沢村が「なぁ」と再び口を開いた。
「廉のジィちゃんって、お前が本当は野球を続けたがっていること、知ってるのか?」
「え?」
「オレのジィちゃんは野球してるオレを応援してくれてる。」
「それ、は、うちも」
「オレが一番カッコいいのは投げてるときだって、言ってくれたし。」
「一番、カッコいい?」
「廉もそうだろ?ジィちゃんならそんな瞬間を長く見たいって思ってくれるんじゃねーの?」
沢村の言葉はわかりやすかった。
ジィちゃんなら孫が一番幸せな瞬間を望むはず。
それを聞いた三橋は考え込んでしまった。
阿部もまたいつになく思いつめた表情だ。
さすが沢村、腹をくくったバカは強い。
「三橋。阿部。オレも沢村と同意見だ。まだ引退するな。」
御幸は最後に決めぜリフよろしくそう言った。
沢村が「オイシイとこ、持ってかれた」と文句を言っている。
だけど知ったこっちゃない。
とりあえず三橋と阿部が考え直してくれれば、それで良い。
やがて三橋と阿部が御幸の部屋を出ていく。
今夜は多分、2人で話し合うだろう。
そして部屋には御幸と沢村が残された。
「久しぶりだな。元気でやってるか?」
御幸は改めて沢村に声をかけた。
沢村が「今言う!?」と顔をしかめている。
だが御幸は動じることなく「まぁ順序はおかしいけどな」と苦笑した。
【続く】