スタートライン

小早川セナ、21番。ポジションはランニングバックです。

セナはそう言って、持っていたチケットを破り捨てる。
そして周囲の驚きの声に動じることなく、ラインのこちら側に足を進めた。
セナが真っ直ぐ十文字に視線を向けて、ふっと笑う。
その瞬間、十文字はセナの答えの意味を理解した。

十文字がセナに告白したのは「デビルガンマンズ」なるチームがビーチフットに優勝した後だった。
宿無しの泥門デビルバッツは、牛の運搬と引き換えにベン牧場へ招かれた。
そしてバーベキューを大いに満喫した後、十文字はセナに想いを告げた。

答えはちょっと待って欲しい。
ありがとう、とまず礼を言った後、セナはそう答えた。
それを聞いた十文字は、ああフラれたんだと思った。
根が優しいセナは、はっきりと断れることができないのだろう。
だから十文字を傷つけないようなうまい言葉を考える時間がほしいのだと思った。

僕も十文字くんが好き。
セナがそう続けたときにもまだ疑っていた。
その「好き」は友人としてチームメイトとしてだろう。
だってOKならば、待つなんて必要ないはずだ。
でもセナはさらにこう続けた。

どうしてもやらなくちゃいけないことがあるんだ。
十文字くんの気持ちを受け入れるために。
そう言うセナの眼差しに、迷いや逃げは感じられなかった。
だから十文字は理由はわからないまま、待つことにしたのだった。
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