もっとデートしよう
「すごい!飛んでます!」
セナは空を指差し、子供のようにはしゃいでいる。
ヒル魔は「そりゃ飛ぶだろ」と返しながら、苦笑した。
冷静を装っているが、実はヒル魔も内心はしゃいでいるのだ。
ヒル魔とセナは空港にいた。
日本に一時帰国していたセナが、今日アメリカに戻る。
だから見送りを兼ねて、空港デートとしゃれこむことにした。
セナが乗る飛行機は、夕方に飛ぶ。
そこで前日の夜に空港近くのホテルに泊まり、朝から出発まで空港内で過ごすのだ。
数日前に街中でデートした時は、特に服装などは意識しなかった。
周りから見れば、ヒル魔とセナだとバレバレ。
その代わりに撮影するメンバーを引き連れ、ネタ動画を撮っている風を装ったのだ。
あれはあれで楽しかったが、やはりデートにしては甘さが足りなかった。
だけど今回はバッチリ変装している。
ヒル魔は金髪をスプレーで暗めの茶色に染めて、逆立てずにゴムで束ねた。
そしてピアスを外し、特長的な耳を髪の中に押し込む。
さらにマスクで大きめの口を隠せば、早々ヒル魔とは気づかれない。
セナはトレードマークともいえるくせ毛をキャスケットで隠した。
そして可愛らしいサングラスをかけた。
チークグラスと呼ばれるそれは、レンズの下半分がうっすらピンク色。
かけるだけで、チークを塗ったような感じになる優れモノだ。
これでセナもかなり印象が変わった。
そんな2人が最初に向かったのは、展望デッキだった。
離陸または着陸していく飛行機が見える。
2人は事故防止の金網越しに、滑走路を見ていた。
結構早い時間なのに、人はチラホラいる。
そのほぼ全員が一眼レフカメラを持っており、飛行機を撮るのが目的なのだろう。
「すごい!飛んでます!」
「そりゃ飛ぶだろ」
「近くで見ると、迫力ありますね!」
「こんな時間でも、結構飛んでるんだな」
2人は他愛のないことを言い合いながら、並んで飛行機を見ていた。
近くに人がいないのを良いことに、手を繋いで。
朝の澄んだ空気が心地よい。
そしてこうして寄り添っているのが嬉しい。
「あ、あれ何でしたっけ?あの丸いやつ」
セナが離陸を待つ飛行機を指差した。
ヒル魔が「ミャクミャクだったか?」と答える。
機体に描かれていたのは大阪万博のマスコットキャラだ。
「期間限定のやつを見れると、ちょっと得した気分ですね。」
「そうか?」
「とりあえず喜んでおきましょうよ!」
「フン」
「他にもないかなぁ。ディズニーとかアニメとか」
「運が良ければ、見れるかもな。」
ヒル魔はセナと繋いだ手に少しだけ力を込めた。
セナは一瞬驚いた顔になったが、すぐにニコリと笑う。
それだけで未だにドキドキする。
ヒル魔も実は恋愛に関しては不器用な初心者だ。
「僕の乗る飛行機も特別なヤツだといいな。」
「乗ったら見えないぞ?」
「そんな身も蓋もないことを言わないでくださいよ。」
「事実だろ?」
ヒル魔は素っ気なく話しながら、内心密かにため息をついた。
そう、セナは飛行機に乗ってしまう。
本当はこのままずっと一緒にいたい。
恋人としてのヒル魔はそう思っている。
ヒル魔は小さな感傷を心から追い出した。
だけど恋人の前にアメフト選手なのだ。
楽しい思い出と一緒に送り出してやる。
だから出発までデートを満喫しようと決めたのだった。
セナは空を指差し、子供のようにはしゃいでいる。
ヒル魔は「そりゃ飛ぶだろ」と返しながら、苦笑した。
冷静を装っているが、実はヒル魔も内心はしゃいでいるのだ。
ヒル魔とセナは空港にいた。
日本に一時帰国していたセナが、今日アメリカに戻る。
だから見送りを兼ねて、空港デートとしゃれこむことにした。
セナが乗る飛行機は、夕方に飛ぶ。
そこで前日の夜に空港近くのホテルに泊まり、朝から出発まで空港内で過ごすのだ。
数日前に街中でデートした時は、特に服装などは意識しなかった。
周りから見れば、ヒル魔とセナだとバレバレ。
その代わりに撮影するメンバーを引き連れ、ネタ動画を撮っている風を装ったのだ。
あれはあれで楽しかったが、やはりデートにしては甘さが足りなかった。
だけど今回はバッチリ変装している。
ヒル魔は金髪をスプレーで暗めの茶色に染めて、逆立てずにゴムで束ねた。
そしてピアスを外し、特長的な耳を髪の中に押し込む。
さらにマスクで大きめの口を隠せば、早々ヒル魔とは気づかれない。
セナはトレードマークともいえるくせ毛をキャスケットで隠した。
そして可愛らしいサングラスをかけた。
チークグラスと呼ばれるそれは、レンズの下半分がうっすらピンク色。
かけるだけで、チークを塗ったような感じになる優れモノだ。
これでセナもかなり印象が変わった。
そんな2人が最初に向かったのは、展望デッキだった。
離陸または着陸していく飛行機が見える。
2人は事故防止の金網越しに、滑走路を見ていた。
結構早い時間なのに、人はチラホラいる。
そのほぼ全員が一眼レフカメラを持っており、飛行機を撮るのが目的なのだろう。
「すごい!飛んでます!」
「そりゃ飛ぶだろ」
「近くで見ると、迫力ありますね!」
「こんな時間でも、結構飛んでるんだな」
2人は他愛のないことを言い合いながら、並んで飛行機を見ていた。
近くに人がいないのを良いことに、手を繋いで。
朝の澄んだ空気が心地よい。
そしてこうして寄り添っているのが嬉しい。
「あ、あれ何でしたっけ?あの丸いやつ」
セナが離陸を待つ飛行機を指差した。
ヒル魔が「ミャクミャクだったか?」と答える。
機体に描かれていたのは大阪万博のマスコットキャラだ。
「期間限定のやつを見れると、ちょっと得した気分ですね。」
「そうか?」
「とりあえず喜んでおきましょうよ!」
「フン」
「他にもないかなぁ。ディズニーとかアニメとか」
「運が良ければ、見れるかもな。」
ヒル魔はセナと繋いだ手に少しだけ力を込めた。
セナは一瞬驚いた顔になったが、すぐにニコリと笑う。
それだけで未だにドキドキする。
ヒル魔も実は恋愛に関しては不器用な初心者だ。
「僕の乗る飛行機も特別なヤツだといいな。」
「乗ったら見えないぞ?」
「そんな身も蓋もないことを言わないでくださいよ。」
「事実だろ?」
ヒル魔は素っ気なく話しながら、内心密かにため息をついた。
そう、セナは飛行機に乗ってしまう。
本当はこのままずっと一緒にいたい。
恋人としてのヒル魔はそう思っている。
ヒル魔は小さな感傷を心から追い出した。
だけど恋人の前にアメフト選手なのだ。
楽しい思い出と一緒に送り出してやる。
だから出発までデートを満喫しようと決めたのだった。
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