ヒートドーム
「なんでそんなに元気なの?」
パンサーが呆れたように言い放ち、チームメイトたちが頷く。
だが当のセナはキョトンとした顔で「何が?」と首を傾げた。
8月下旬、あと1ヶ月ほどでNFLのプレシーズンが開幕する。
セナもヒル魔も他の選手たちも、しっかりと身体を作り始めていた。
そんな中、予想外の事態が彼らを襲いつつあった。
その名は「ヒートドーム」猛暑をもたらす高気圧だ。
ヒートドームは彼らのチームの本拠地の上空に停滞していた。
そしてその名の通り。
強い高気圧がフタのようになり、熱気を地表に閉じ込めるのだ。
気温は35度超えが続き、湿度も高い。
そのため体調を崩す選手も増えた。
もちろんトレーニングメニューは気温を考慮している。
室内練習を増やし、屋外は気温の低い時間にする。
水分や塩分を補給しながら、効率よく。
それでも猛暑を全部避けられるわけではない。
例年の夏より、疲労は確実に溜まっていく。
そんな中、セナとヒル魔は淡々と日々を過ごしていた。
もちろん暑さを感じないわけではない。
だけど平然としているのだ。
今も夕刻のマシな時間を選んでの屋外トレーニング後。
ロッカールームでグッタリと肩を落とすチームメイトたちの中。
セナは特に何事もなく、着替えていた。
「なんでそんなに元気なの?」
パンサーに問われ、セナは首を傾げた。
チームメイトたちが頷いているのを見て、少し困惑する。
迷った末に出た言葉は「日本の夏は暑いんだよ」だった。
そう、日本の夏は暑い。
35度超えはザラだし、湿度はもっと高いのだ。
だからセナもヒル魔も、暑さとの付き合い方は上手かった。
そして猛暑の中の練習にも慣れていた。
学生時代は恵まれない環境で、屋内設備などなかったのだ。
「本当に慣れてるだけだから」
セナは穏やかに微笑みながら、そう言った。
そしてしみじみと「今は恵まれてるなぁ」と思う。
エアコンの効いた屋内練習場は、やはりありがたい。
高校時代にこれがあったら、どれだけ楽だったか。
セナはふとヒル魔に目を向けた。
話が聞こえていなかったのか、何事もない顔で着替えている。
その横顔を見ながら思い出すのは、あのデスマーチだ。
石を蹴りながら、アメリカを横断したあの夏。
だけどあの年がもしヒートドームだったら。
脱落者どころか、死者が続出したかもしれない。
生きててよかったぁ。
セナはそんなことを思いながら、クスリと笑った。
彼のあの逆立てたトレードマークの金髪は今はもうない。
だけど冴えた瞳はあの頃のまま。
一緒にいれば、どんなに暑い夏でも乗り越えられる。
パンサーが呆れたように言い放ち、チームメイトたちが頷く。
だが当のセナはキョトンとした顔で「何が?」と首を傾げた。
8月下旬、あと1ヶ月ほどでNFLのプレシーズンが開幕する。
セナもヒル魔も他の選手たちも、しっかりと身体を作り始めていた。
そんな中、予想外の事態が彼らを襲いつつあった。
その名は「ヒートドーム」猛暑をもたらす高気圧だ。
ヒートドームは彼らのチームの本拠地の上空に停滞していた。
そしてその名の通り。
強い高気圧がフタのようになり、熱気を地表に閉じ込めるのだ。
気温は35度超えが続き、湿度も高い。
そのため体調を崩す選手も増えた。
もちろんトレーニングメニューは気温を考慮している。
室内練習を増やし、屋外は気温の低い時間にする。
水分や塩分を補給しながら、効率よく。
それでも猛暑を全部避けられるわけではない。
例年の夏より、疲労は確実に溜まっていく。
そんな中、セナとヒル魔は淡々と日々を過ごしていた。
もちろん暑さを感じないわけではない。
だけど平然としているのだ。
今も夕刻のマシな時間を選んでの屋外トレーニング後。
ロッカールームでグッタリと肩を落とすチームメイトたちの中。
セナは特に何事もなく、着替えていた。
「なんでそんなに元気なの?」
パンサーに問われ、セナは首を傾げた。
チームメイトたちが頷いているのを見て、少し困惑する。
迷った末に出た言葉は「日本の夏は暑いんだよ」だった。
そう、日本の夏は暑い。
35度超えはザラだし、湿度はもっと高いのだ。
だからセナもヒル魔も、暑さとの付き合い方は上手かった。
そして猛暑の中の練習にも慣れていた。
学生時代は恵まれない環境で、屋内設備などなかったのだ。
「本当に慣れてるだけだから」
セナは穏やかに微笑みながら、そう言った。
そしてしみじみと「今は恵まれてるなぁ」と思う。
エアコンの効いた屋内練習場は、やはりありがたい。
高校時代にこれがあったら、どれだけ楽だったか。
セナはふとヒル魔に目を向けた。
話が聞こえていなかったのか、何事もない顔で着替えている。
その横顔を見ながら思い出すのは、あのデスマーチだ。
石を蹴りながら、アメリカを横断したあの夏。
だけどあの年がもしヒートドームだったら。
脱落者どころか、死者が続出したかもしれない。
生きててよかったぁ。
セナはそんなことを思いながら、クスリと笑った。
彼のあの逆立てたトレードマークの金髪は今はもうない。
だけど冴えた瞳はあの頃のまま。
一緒にいれば、どんなに暑い夏でも乗り越えられる。
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