新語?流行語?
「まったく何事かと思いましたよ。」
パソコン画面の中のヒル魔に愚痴を零す。
したり顔で「だろうな」と頷くヒル魔が少しだけ恨めしかった。
年も終わりに近づいたある日のこと。
何気なくスマホでメッセージアプリを開いたセナは驚いた。
凄まじい数のメッセージが入っていたからだ。
高校や大学のチームメイトやライバルたちだ。
彼らは揃って「おめでとう」と言うのだが、何が何やら。
その謎を解いてくれたのは、ヒル魔だった。
おもしれーことになってんぞ。
ヒル魔からのメッセージはそれだけ。
だがとあるニュース記事が貼りつけられていた。
「新語・流行語大賞?」
ニュース記事を読んだセナはさらに驚いた。
この一年の間に、日本で一番流行った言葉に贈られる賞。
それに「アイシールド21」がノミネートされたというのだ。
そして1ヶ月後、ノミネートされた30語の中から大賞が決まるそうだ。
これはとても光栄な事なのだろう。
それにこれを機にアメフトに興味を持つ人が増えるなら、良いことである。
だけどどうにも実感が湧かないセナが頼るのは、やはりヒル魔だ。
さっそくパソコンでビデオ通話を繋ぎ、グチることにする。
「まったく何事かと思いましたよ。」
「笑えるよな?」
「笑っていいんでしょうか?」
「笑うしかないだろ?」
ヒル魔のリアクションを見て、セナは何だかホッとした。
他の仲間たちが「おめでとう」と騒ぐのに、違和感しかなかったのだ。
セナが「アイシールド21」を名乗って、すでに約5年余り。
新語と言われたところで、新しくもなんともない。
それに流行と言われても、違う気がする。
つまりセナにとってはおめでたくも何ともないのだ。
「大賞に選ばれちゃったりすると思います?」
セナは恐る恐るそう聞いてみた。
まさか選ばれるとは思えないが、もしかして。
アメフト人気に貢献するなら、それもいいかもしれない。
だけどセナ個人としては、こういう目立ち方は望まない。
そんなことを思ったら、ヒル魔が「ケケケ」と笑った。
「んなわけねーだろ。」
「断言できちゃうんですね。」
「ああ。テメーは受け取りに来れねぇだろ?」
「へ?あ!」
ヒル魔がきっぱり「ない」と言い切った理由が理解できた。
この賞は確か、毎年大賞の発表時には誰かしらが受け取りに来る。
「アイシールド21」が受賞したら、受け取るのはセナしかいないだろう。
だが1ヶ月後、シーズン真っ只中のセナは絶対に行けない。
それを見越して、予想できたのだろう。
「よかった。僕は流行で終わりたくないですから。」
セナはホッと胸をなでおろし、苦笑した。
画面越しのヒル魔が、一瞬驚いた顔になる。
だがすぐに「だな」と頷き「ケケケ」と笑った。
アメフトもアイシールドも今年のブームなんかじゃない。
来年も再来年もまだまだ続くのだ。
考えすぎかもしれないが、やはり気は進まない。
このままフワッと終わって欲しいのが本音だった。
「んなこと気にする暇があったら、アメフトに集中しろよ。」
ヒル魔はあっさりと、厳しいことを言った。
その通り、今はもっと他にやるべきことがある。
セナは「ですよね~」と苦笑する。
決して「おめでとう」なんて言わないヒル魔の素っ気なさが嬉しかった。
パソコン画面の中のヒル魔に愚痴を零す。
したり顔で「だろうな」と頷くヒル魔が少しだけ恨めしかった。
年も終わりに近づいたある日のこと。
何気なくスマホでメッセージアプリを開いたセナは驚いた。
凄まじい数のメッセージが入っていたからだ。
高校や大学のチームメイトやライバルたちだ。
彼らは揃って「おめでとう」と言うのだが、何が何やら。
その謎を解いてくれたのは、ヒル魔だった。
おもしれーことになってんぞ。
ヒル魔からのメッセージはそれだけ。
だがとあるニュース記事が貼りつけられていた。
「新語・流行語大賞?」
ニュース記事を読んだセナはさらに驚いた。
この一年の間に、日本で一番流行った言葉に贈られる賞。
それに「アイシールド21」がノミネートされたというのだ。
そして1ヶ月後、ノミネートされた30語の中から大賞が決まるそうだ。
これはとても光栄な事なのだろう。
それにこれを機にアメフトに興味を持つ人が増えるなら、良いことである。
だけどどうにも実感が湧かないセナが頼るのは、やはりヒル魔だ。
さっそくパソコンでビデオ通話を繋ぎ、グチることにする。
「まったく何事かと思いましたよ。」
「笑えるよな?」
「笑っていいんでしょうか?」
「笑うしかないだろ?」
ヒル魔のリアクションを見て、セナは何だかホッとした。
他の仲間たちが「おめでとう」と騒ぐのに、違和感しかなかったのだ。
セナが「アイシールド21」を名乗って、すでに約5年余り。
新語と言われたところで、新しくもなんともない。
それに流行と言われても、違う気がする。
つまりセナにとってはおめでたくも何ともないのだ。
「大賞に選ばれちゃったりすると思います?」
セナは恐る恐るそう聞いてみた。
まさか選ばれるとは思えないが、もしかして。
アメフト人気に貢献するなら、それもいいかもしれない。
だけどセナ個人としては、こういう目立ち方は望まない。
そんなことを思ったら、ヒル魔が「ケケケ」と笑った。
「んなわけねーだろ。」
「断言できちゃうんですね。」
「ああ。テメーは受け取りに来れねぇだろ?」
「へ?あ!」
ヒル魔がきっぱり「ない」と言い切った理由が理解できた。
この賞は確か、毎年大賞の発表時には誰かしらが受け取りに来る。
「アイシールド21」が受賞したら、受け取るのはセナしかいないだろう。
だが1ヶ月後、シーズン真っ只中のセナは絶対に行けない。
それを見越して、予想できたのだろう。
「よかった。僕は流行で終わりたくないですから。」
セナはホッと胸をなでおろし、苦笑した。
画面越しのヒル魔が、一瞬驚いた顔になる。
だがすぐに「だな」と頷き「ケケケ」と笑った。
アメフトもアイシールドも今年のブームなんかじゃない。
来年も再来年もまだまだ続くのだ。
考えすぎかもしれないが、やはり気は進まない。
このままフワッと終わって欲しいのが本音だった。
「んなこと気にする暇があったら、アメフトに集中しろよ。」
ヒル魔はあっさりと、厳しいことを言った。
その通り、今はもっと他にやるべきことがある。
セナは「ですよね~」と苦笑する。
決して「おめでとう」なんて言わないヒル魔の素っ気なさが嬉しかった。
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