Time Footballer (アイシ×図書戦×おお振り)
セナ君、準備はいい?
上司兼相棒である女性に声をかけられ、セナは「はい」と頷く。
そして初めてのミッションに緊張する自分を戒めるように、頬を両手で叩いた。
40世紀初頭、人口減少に悩む日本は超法規的な解決法を実施した。
長年研究を重ね、ようやく確立した時空制御の技術。
つまり過去や未来に移動することが可能になった。
その技術を使い、過去から人材を回収するのだ。
回収するのは、誰でも良いわけではない。
絶対のルールは、絶対に歴史に干渉しないこと。
だから若くして死を遂げた者から選ばれる。
条件は善良であり、生活環境が変わっても適応できる者。
それを選び出し、その人物が死ぬ直前にこちらに連れてくる。
つまり死んで消えていくはずの命を再利用するのだ。
その任務を担うのが、時空救助隊である。
小早川瀬那は、その時空救助隊の隊員だった。
とはいえ、本日初任務の新米だ。
セナ自身も不遇の死を迎える直前、救助されてここに来たのだ。
生きていたのは21世紀、一気に2000年もの時間を飛び越えたことになる。
そこから先は苦労の連続だった。
何せ生活様式が変わり過ぎているのだ。
進化した未来、万歳。
だけど馴染むのはかなり大変だ。
例えば通信は脳内にデバイスを埋め込んで、それで行なう。
だがセナは21世紀ではガラケーからスマホに変わっただけで苦戦した派。
ハイテクに弱い上、不器用なのだ。
だからこの世界に馴染むために受けた研修でも、劣等生のグループにいた。
そのセナもついに初任務だ。
かつてのセナのように、若くして死を遂げる若者をこの世界に連れてくる。
任務用の身体にピッタリした黒いコスチュームに身を包み、セナは深呼吸をした。
ちなみに初めてこの衣装を見た時には思わず「ガンツ?」と呟いてしまった。
謎の黒い球に命令されるあの漫画の服によく似ていると思ったからだ。
セナ君、救助者のデータは頭に入ってるよね。
初任務に同行してくれる女性隊員が声をかけてくれる。
慣れるまではこうして先輩隊員が教官として同行してくれるのだ。
セナは「大丈夫です。堂上教官」と答えた。
先輩教官の名は堂上郁。
現役バリバリの時空救助隊員で、セナも彼女に救助された。
実は郁の夫は時空救助隊の隊長で、彼女自身は副隊長なのだ。
そんな人に救助されたのかと、セナは大いに恐縮した。
だけど郁は「そこは気にしなくていいよ」と笑っていた。
ちなみに堂上郁も実は元々セナと近い時代に生きていたそうだ。
それが夫共々救助され、今では夫婦で隊長と副隊長。
だけど2人とも指示を出すだけではなく、現場に出動する。
それは別に人手不足と言う理由ではない。
2人とも管理職でありながら、現場に出るのが好きなのだ。
セナ君、準備はいい?
上司兼相棒である女性に声をかけられ、セナは「はい」と頷く。
そして初めてのミッションに緊張する自分を戒めるように、頬を両手で叩いた。
2人は今、時空移動装置の前に立っている。
ここから目指す時代に飛び、選ばれた救助者を連れてくるのだ。
救助者は過去の膨大なデータの中から吟味され、選ばれる。
今からその人物が命を落とす直前まで飛ぶのだ。
セナはふと自分のときのことを思い出した。
刃を向けられ、殺害されそうになった瞬間、時が止まったのだ。
セナを刺そうとしていた男も、風で舞っていた木の葉や、揺れていた前髪さえ止まった。
驚くセナの前に現れた郁が「未来に行きませんか?」と告げたのだった。
セナは迷った。
ここに留まれば確実に死ぬ。
だけど助かるとしたら未来に行くしかなく、そうすれば全ての絆を失う。
両親、友人、そして大切な人。
セナが愛し、そして愛してくれる人と会えなくなる。
だけど郁はここで意外なことを言ったのだ。
あなたが一番大事だと思う人とは、また会えるかもしれないよ。
それを聞いたセナは「え?」と声をあげた。
思い浮かぶのはたった1人、金色の髪と尖った耳を持つあの男だ。
また会えるなら。その可能性があるなら。
セナは郁の手を取り、全てを捨てて未来へ飛んだのだ。
それじゃ、行くわよ。
郁の言葉にセナは「はい」と頷いた。
まずい。思い出に浸っている場合じゃない。
今はただ目の前の任務をこなすだけだ。
ヒル魔さん。行ってきます。
セナは祈るように腕を胸の前で組み、目を閉じる。
その瞬間、時空移動装置が稼働し、セナと郁は時を越えた。
上司兼相棒である女性に声をかけられ、セナは「はい」と頷く。
そして初めてのミッションに緊張する自分を戒めるように、頬を両手で叩いた。
40世紀初頭、人口減少に悩む日本は超法規的な解決法を実施した。
長年研究を重ね、ようやく確立した時空制御の技術。
つまり過去や未来に移動することが可能になった。
その技術を使い、過去から人材を回収するのだ。
回収するのは、誰でも良いわけではない。
絶対のルールは、絶対に歴史に干渉しないこと。
だから若くして死を遂げた者から選ばれる。
条件は善良であり、生活環境が変わっても適応できる者。
それを選び出し、その人物が死ぬ直前にこちらに連れてくる。
つまり死んで消えていくはずの命を再利用するのだ。
その任務を担うのが、時空救助隊である。
小早川瀬那は、その時空救助隊の隊員だった。
とはいえ、本日初任務の新米だ。
セナ自身も不遇の死を迎える直前、救助されてここに来たのだ。
生きていたのは21世紀、一気に2000年もの時間を飛び越えたことになる。
そこから先は苦労の連続だった。
何せ生活様式が変わり過ぎているのだ。
進化した未来、万歳。
だけど馴染むのはかなり大変だ。
例えば通信は脳内にデバイスを埋め込んで、それで行なう。
だがセナは21世紀ではガラケーからスマホに変わっただけで苦戦した派。
ハイテクに弱い上、不器用なのだ。
だからこの世界に馴染むために受けた研修でも、劣等生のグループにいた。
そのセナもついに初任務だ。
かつてのセナのように、若くして死を遂げる若者をこの世界に連れてくる。
任務用の身体にピッタリした黒いコスチュームに身を包み、セナは深呼吸をした。
ちなみに初めてこの衣装を見た時には思わず「ガンツ?」と呟いてしまった。
謎の黒い球に命令されるあの漫画の服によく似ていると思ったからだ。
セナ君、救助者のデータは頭に入ってるよね。
初任務に同行してくれる女性隊員が声をかけてくれる。
慣れるまではこうして先輩隊員が教官として同行してくれるのだ。
セナは「大丈夫です。堂上教官」と答えた。
先輩教官の名は堂上郁。
現役バリバリの時空救助隊員で、セナも彼女に救助された。
実は郁の夫は時空救助隊の隊長で、彼女自身は副隊長なのだ。
そんな人に救助されたのかと、セナは大いに恐縮した。
だけど郁は「そこは気にしなくていいよ」と笑っていた。
ちなみに堂上郁も実は元々セナと近い時代に生きていたそうだ。
それが夫共々救助され、今では夫婦で隊長と副隊長。
だけど2人とも指示を出すだけではなく、現場に出動する。
それは別に人手不足と言う理由ではない。
2人とも管理職でありながら、現場に出るのが好きなのだ。
セナ君、準備はいい?
上司兼相棒である女性に声をかけられ、セナは「はい」と頷く。
そして初めてのミッションに緊張する自分を戒めるように、頬を両手で叩いた。
2人は今、時空移動装置の前に立っている。
ここから目指す時代に飛び、選ばれた救助者を連れてくるのだ。
救助者は過去の膨大なデータの中から吟味され、選ばれる。
今からその人物が命を落とす直前まで飛ぶのだ。
セナはふと自分のときのことを思い出した。
刃を向けられ、殺害されそうになった瞬間、時が止まったのだ。
セナを刺そうとしていた男も、風で舞っていた木の葉や、揺れていた前髪さえ止まった。
驚くセナの前に現れた郁が「未来に行きませんか?」と告げたのだった。
セナは迷った。
ここに留まれば確実に死ぬ。
だけど助かるとしたら未来に行くしかなく、そうすれば全ての絆を失う。
両親、友人、そして大切な人。
セナが愛し、そして愛してくれる人と会えなくなる。
だけど郁はここで意外なことを言ったのだ。
あなたが一番大事だと思う人とは、また会えるかもしれないよ。
それを聞いたセナは「え?」と声をあげた。
思い浮かぶのはたった1人、金色の髪と尖った耳を持つあの男だ。
また会えるなら。その可能性があるなら。
セナは郁の手を取り、全てを捨てて未来へ飛んだのだ。
それじゃ、行くわよ。
郁の言葉にセナは「はい」と頷いた。
まずい。思い出に浸っている場合じゃない。
今はただ目の前の任務をこなすだけだ。
ヒル魔さん。行ってきます。
セナは祈るように腕を胸の前で組み、目を閉じる。
その瞬間、時空移動装置が稼働し、セナと郁は時を越えた。
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