Time Rescue (おお振り)
未来に行きませんか?
見知らぬ少年が、ナンパよろしく不可解なことを言った。
阿部は「は!?」と声をあげたものの、二の句が告げられずに固まった。
阿部隆也はいつも通りの夜を過ごしていた。
大学を卒業して、社会人になったばかり。
まだ慣れない会社勤めに、じわじわと疲れがたまり始めている。
こんな時、多少通勤が遠くても実家暮らしでよかったと思う。
会社は東京、実家は埼玉。通勤には1時間以上かかる。
だが洗濯も掃除も母親にしてもらえるし、食事も出る。
多少、家に金を入れたところで、家賃を払うことを考えれば、はるかに楽だ。
この日も真っ直ぐに帰宅し、母親が作ってくれた夕食を食べた。
そして入浴もして、濡れ髪のまま二階の自分の部屋に戻った阿部は「うわ!」と声を上げた。
部屋のベットには見知らぬ少年が、ちょこんと座っていたからだ。
誰だ、お前!?
阿部は咄嗟に部屋の隅に立てかけてあったバットに手を伸ばした。
高校、大学と野球部であった頃の名残りだ。
そして少年に向かってバットをかざすようにしながら「泥棒だ!警察に連絡!」と叫ぶ。
さして広い家でもないし、これだけ叫べば階下の両親にも聞こえたはずだ。
だが当の少年は少しも動じた様子はなく「泥棒、じゃないんですけど」と苦笑した。
ちなみに今、この部屋の時空は歪んでます。
だから声は外に届かないし、通信もできませんよ。
少年はおっとりと意味不明なことを言う。
それでも通信という言葉に反応した阿部は、机の上のスマホの画面を見て「嘘だろ?」と呻いた。
いつもは普通に通じるはずのスマホは、なぜか圏外となっていた。
オレは三橋廉といいます。
時空救助隊の隊員です。
人類保護プログラムに基づき、あなたを救出に来ました。
少年はまたしても意味不明なことを言った後「ウヒ」と笑う。
阿部は何度も瞬きをして、またゴシゴシと目を擦った。
理解不能なこの存在が消えてくれればいいと願いながら。
社会人になったばかりで、疲れているんだ。
だからこんな幻が見えるんだと、自分に言い聞かせてみたりもした。
だが目の前の少年は困ったような顔で笑うだけだ。
その服、何?
状況に少し慣れてきた阿部は、逆に質問を投げてみた。
どうやら攻撃してくる感じではないと判断し、冷静に少年を観察した結果の素朴な疑問だ。
少年は黒いボディスーツを身に着けていた。
確か何とかいう漫画、謎の大きな黒い球に命令されるあの話で集められたメンバーが来ていたコスチュームに似ている。
身体にピッタリとしていて、いかにも戦いますという感じの服。
少年が童顔であるので、酷くアンバランスだ。
これは時空救助隊の制服です。
千回以上の時空移動にも耐えられる強い素材なんですよ。
少年は心持ちドヤ顔なのだが、阿部に突っ込む余裕はなかった。
さっきからよく出てくる「時空」わかるようでわからない言葉だ。
こいつ、いったい何なんだ?
混乱する阿部に、少年は「未来に行きませんか?」と告げた。
阿部は「は!?」と声をあげたものの、二の句が告げられずに固まった。
未来に行く?何を言っている!
だが不意に部屋の外から「うわぁぁぁ!」という叫び声が聞こえた。
そしてバタンバタンと家具か何かが倒れる大きな音。
少年は「うわ、もう来た!」と声を上げると、阿部の手を掴んだ。
そして「とりあえず行きましょう!説明は後で!」と叫んだ途端、阿部の視界がグニャリと歪んだ。
その後は地獄だった。
まるで洗濯機に放り込まれて回されているような衝撃。
そしてそこから解放された時には、阿部はまったく知らない場所に立っていた。
見知らぬ少年が、ナンパよろしく不可解なことを言った。
阿部は「は!?」と声をあげたものの、二の句が告げられずに固まった。
阿部隆也はいつも通りの夜を過ごしていた。
大学を卒業して、社会人になったばかり。
まだ慣れない会社勤めに、じわじわと疲れがたまり始めている。
こんな時、多少通勤が遠くても実家暮らしでよかったと思う。
会社は東京、実家は埼玉。通勤には1時間以上かかる。
だが洗濯も掃除も母親にしてもらえるし、食事も出る。
多少、家に金を入れたところで、家賃を払うことを考えれば、はるかに楽だ。
この日も真っ直ぐに帰宅し、母親が作ってくれた夕食を食べた。
そして入浴もして、濡れ髪のまま二階の自分の部屋に戻った阿部は「うわ!」と声を上げた。
部屋のベットには見知らぬ少年が、ちょこんと座っていたからだ。
誰だ、お前!?
阿部は咄嗟に部屋の隅に立てかけてあったバットに手を伸ばした。
高校、大学と野球部であった頃の名残りだ。
そして少年に向かってバットをかざすようにしながら「泥棒だ!警察に連絡!」と叫ぶ。
さして広い家でもないし、これだけ叫べば階下の両親にも聞こえたはずだ。
だが当の少年は少しも動じた様子はなく「泥棒、じゃないんですけど」と苦笑した。
ちなみに今、この部屋の時空は歪んでます。
だから声は外に届かないし、通信もできませんよ。
少年はおっとりと意味不明なことを言う。
それでも通信という言葉に反応した阿部は、机の上のスマホの画面を見て「嘘だろ?」と呻いた。
いつもは普通に通じるはずのスマホは、なぜか圏外となっていた。
オレは三橋廉といいます。
時空救助隊の隊員です。
人類保護プログラムに基づき、あなたを救出に来ました。
少年はまたしても意味不明なことを言った後「ウヒ」と笑う。
阿部は何度も瞬きをして、またゴシゴシと目を擦った。
理解不能なこの存在が消えてくれればいいと願いながら。
社会人になったばかりで、疲れているんだ。
だからこんな幻が見えるんだと、自分に言い聞かせてみたりもした。
だが目の前の少年は困ったような顔で笑うだけだ。
その服、何?
状況に少し慣れてきた阿部は、逆に質問を投げてみた。
どうやら攻撃してくる感じではないと判断し、冷静に少年を観察した結果の素朴な疑問だ。
少年は黒いボディスーツを身に着けていた。
確か何とかいう漫画、謎の大きな黒い球に命令されるあの話で集められたメンバーが来ていたコスチュームに似ている。
身体にピッタリとしていて、いかにも戦いますという感じの服。
少年が童顔であるので、酷くアンバランスだ。
これは時空救助隊の制服です。
千回以上の時空移動にも耐えられる強い素材なんですよ。
少年は心持ちドヤ顔なのだが、阿部に突っ込む余裕はなかった。
さっきからよく出てくる「時空」わかるようでわからない言葉だ。
こいつ、いったい何なんだ?
混乱する阿部に、少年は「未来に行きませんか?」と告げた。
阿部は「は!?」と声をあげたものの、二の句が告げられずに固まった。
未来に行く?何を言っている!
だが不意に部屋の外から「うわぁぁぁ!」という叫び声が聞こえた。
そしてバタンバタンと家具か何かが倒れる大きな音。
少年は「うわ、もう来た!」と声を上げると、阿部の手を掴んだ。
そして「とりあえず行きましょう!説明は後で!」と叫んだ途端、阿部の視界がグニャリと歪んだ。
その後は地獄だった。
まるで洗濯機に放り込まれて回されているような衝撃。
そしてそこから解放された時には、阿部はまったく知らない場所に立っていた。
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