宣戦布告の後に

「憂太。とりあえず説教、な?」
教室でクラスメイトたちに取り囲まれ、そう宣言される。
憂太は「え、なんで?」と首を傾げた。

それはどこか現実味に欠ける出来事だった。
ふざけてるとしか言いようがないビジュアルの呪霊が上空から舞い降りた。
乗っていたのは、一見僧侶のような黒い袈裟を纏った男とその一味。
夏油と名乗ったその男は、物騒な持論を展開した。
そしてさらに物騒な宣戦布告をした後、飛び去っていった。

その後、憂太たちは教室に戻った。
五条に教室で待つようにと言われたからだ。
大人たちはこれから対策を練るのだろう。
学生である彼らは、指示されるのを待つだけだ。

結局、何だったんだろう?
自分の席に座った憂太は、先程起こったことを考える。
結局あの男は何がしたかったんだろう。
呪術高専に詳しいようだったし、憂太のことも知っていた。
もっと言うなら、ロックオンされたような気がしてならない。

「おい。憂太」
考え込んでいたら、いつの間にか目の前に真希が立っていた。
右隣にパンダ、左隣に狗巻。
いつの間にか取り囲まれるような形になっていたのだ。

「何?」
憂太は真希を見上げながら、首を傾げた。
1人だけ座っているので、3人から見下ろされている。
何だか威圧されている感じだが、気のせいだろうか?

「お前、さっきの連中のこと、どう思った?」
まさに考えていたことを聞かれ、憂太は「あれ?」と思った。
何だか責められているような気がする。
何で?何か間違えたのだろうか?

「あの夏油さんって人、お坊さん?なのに、髪が長かったね。」
考えた末に、憂太はそう言った。
袈裟を着ているから僧侶かなと思いきや、髪がすごく長い。
それが率直な第一印象だったのだ。

「あ、あと、あの白いの。鳥かと思ったけど、ペリカン?」
これも正直な感想だった。
降り立った姿を見て「デッカイ鳥」と言ってしまった。
だけどよくよく見たらペリカンだと思う。

「あ、でもペリカンって鳥の一種?」
沈黙してしまった3人を見て、憂太は慌てて付け加える。
すると真希が「憂太!」と叫んだ。
その声色は明らかに怒っている。

「憂太。とりあえず説教、な?」
「え、なんで?」
「いろいろやらかしてる。わかんねぇのか?」

真希に詰め寄られて、救いを求めるようにパンダと狗巻を見た。
だけど彼らは真希に同意するように頷いている。
憂太が途方に暮れかけたとき、教室の扉が開いた。

「みんな、お待たせ~!って何?どうしたの?」
現れたのは、担任の五条だった。
どうやらただならぬ雰囲気を察したらしい。
憂太はどうやら説教は免れたとホッとした。したのだが。

「悟も一緒に説教しようぜ。憂太がヤバすぎる。」
あろうことか、真希が五条まで巻き込み始めた。
五条が「どういうこと?」と輪に加わってくる。
結果4人に囲まれた憂太には、もう為す術がない。
諦めて説教されようと、覚悟を決めていた。
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