第6話「気晴らし」
「あ、黒子先生」
館内で配架をしていた郁が、黒子を見つけて声をあげる。
書籍のチェックをしていた黒子は、無表情のまま「先生はやめて下さい」と、もはやお約束のチェックを入れた。
「最近、元気がないですね。」
黒子は書籍チェックの手を休めることなく、郁に声をかけた。
郁は「え?そうですか?」と答えながら、配架のスピードが落ちた。
2つのことは同時にできないし、感情が顔に出やすい。
黒子と真逆の性質の郁は、黒子のかつてのパートナーたちによく似ている。
「実は両親が来ることになって」
「ご両親が上京されるんですか?」
「はい」
「もしかして笠原一士の職場見学ですか?」
「はい。。。」
黒子が質問を重ねると、郁の声がどんどん沈んでいく。
話しているうちに、郁と両親の人間関係がわかってきた。
女の子らしくと幼いころから言い続ける母親と、完全に母の味方である父親。
そんな両親と折り合いが悪いこと。
そしてその両親には、自分は図書館員であると伝えていることなど。
何よりも郁は完全に両親、特に母親に苦手意識を持っている。
だから気持ちが沈んでいるのだろう。
時折館内で見かけるだけの黒子でさえ、何だか元気がないと感じるほどに。
「よかったら、気晴らしでもしますか?」
「え?」
「昼休み、時間があったら中庭に来てみてください。」
「図書館の中の?」
「はい。もちろん仕事の都合がついたらでかまいませんよ。」
黒子はそう告げると、あとは黙って書籍のチェックを続けた。
郁も「わかりました」と答えると、黙々と配架作業をしている。
やがて2人が離れた後、まるで入れ替わるように男性隊員が黒子の横に立った。
いつもより眉間のしわが深めの堂上である。
「笠原と何を話していた?」
「何って、雑談です。」
「具体的には?」
「笠原一士のご両親がいらっしゃるので憂鬱なんだという話を聞きました。」
「・・・そうか」
黒子は堂上たち図書特殊部隊が自分の身辺を探っているのは気付いていた。
やはり少々動き過ぎたらしい。
今まで小出しにして、目立たないようにしていたのに。
別にバレてまずいことなど1つもないが、注目されてしまうとやりにくいこともあるのだ。
「それと昼休みに気晴らしに誘いました。」
「は?」
「落ち込んでいるようだったので。よかったら堂上二正もいかがですか?」
「気晴らしに?」
「ええ。中庭にいますので。」
ポカンとした顔の堂上に、黒子はそう言ってやった。
何も知らない郁と黒子が親し気であることに、警戒したのだろう。
それがまったくバカバカしいことだと、教えてやることにする。
郁をどうこうするつもりなど毛頭ないし、特殊部隊とはあまり関わりたくないのだ。
館内で配架をしていた郁が、黒子を見つけて声をあげる。
書籍のチェックをしていた黒子は、無表情のまま「先生はやめて下さい」と、もはやお約束のチェックを入れた。
「最近、元気がないですね。」
黒子は書籍チェックの手を休めることなく、郁に声をかけた。
郁は「え?そうですか?」と答えながら、配架のスピードが落ちた。
2つのことは同時にできないし、感情が顔に出やすい。
黒子と真逆の性質の郁は、黒子のかつてのパートナーたちによく似ている。
「実は両親が来ることになって」
「ご両親が上京されるんですか?」
「はい」
「もしかして笠原一士の職場見学ですか?」
「はい。。。」
黒子が質問を重ねると、郁の声がどんどん沈んでいく。
話しているうちに、郁と両親の人間関係がわかってきた。
女の子らしくと幼いころから言い続ける母親と、完全に母の味方である父親。
そんな両親と折り合いが悪いこと。
そしてその両親には、自分は図書館員であると伝えていることなど。
何よりも郁は完全に両親、特に母親に苦手意識を持っている。
だから気持ちが沈んでいるのだろう。
時折館内で見かけるだけの黒子でさえ、何だか元気がないと感じるほどに。
「よかったら、気晴らしでもしますか?」
「え?」
「昼休み、時間があったら中庭に来てみてください。」
「図書館の中の?」
「はい。もちろん仕事の都合がついたらでかまいませんよ。」
黒子はそう告げると、あとは黙って書籍のチェックを続けた。
郁も「わかりました」と答えると、黙々と配架作業をしている。
やがて2人が離れた後、まるで入れ替わるように男性隊員が黒子の横に立った。
いつもより眉間のしわが深めの堂上である。
「笠原と何を話していた?」
「何って、雑談です。」
「具体的には?」
「笠原一士のご両親がいらっしゃるので憂鬱なんだという話を聞きました。」
「・・・そうか」
黒子は堂上たち図書特殊部隊が自分の身辺を探っているのは気付いていた。
やはり少々動き過ぎたらしい。
今まで小出しにして、目立たないようにしていたのに。
別にバレてまずいことなど1つもないが、注目されてしまうとやりにくいこともあるのだ。
「それと昼休みに気晴らしに誘いました。」
「は?」
「落ち込んでいるようだったので。よかったら堂上二正もいかがですか?」
「気晴らしに?」
「ええ。中庭にいますので。」
ポカンとした顔の堂上に、黒子はそう言ってやった。
何も知らない郁と黒子が親し気であることに、警戒したのだろう。
それがまったくバカバカしいことだと、教えてやることにする。
郁をどうこうするつもりなど毛頭ないし、特殊部隊とはあまり関わりたくないのだ。
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