after story14「錬成教官」
「紫原は、かなり優秀な良化隊員だったんだな。」
玄田は使い込まれたノートをパラパラとめくりながら、そう言った。
すると進藤が緒形を見ながら「お前くらい?」と茶化す。
だが緒形は極めて冷静に「俺よりはるかに優秀だ」と答えた。
2日ほど前、検閲抗争があった。
黒子が特殊部隊を離れて以来、久しぶりの抗争。
つまり化学兵器が使われた後、初の抗争となった。
そしてこの日は定例の班長会議だ。
ごくごく自然に、話題は抗争の総括から入ることになった。
「激しい抗争だったが、よく動けていたよな。」
玄田の感想は、そのまま班長たちの感想だった。
化学兵器使用で、良化隊は世間の批判を浴びた。
そのために抗争はしばらくなかったのだ。
だがその分を取り返すように、激しい銃撃戦になった。
おそらく火気使用規制になるまでは、そんな戦いが続くのだろう。
そんな中、2日前の抗争は実に良くやれたと思う。
全員が効率よく動けたし、図書は守れた。
その最大の原因は、紫原から黒子経由で託されたノートだった。
良化隊の大まかな戦略やそれに伴うフォーメーションなどが綺麗にまとめられていた。
さらに班別に班長の戦略の立て方や、隊員のタイプから分析したその班の特性。
そしてここ数年、紫原が関わった検閲抗争の勝因や敗因。
とにかくありとあらゆる方向から、良化隊の戦力をレポートしている。
先日の抗争で図書隊の被害が最小限だったのは、ひとえにこのノートのおかげと言って過言ではない。
「こりゃ個人の覚え書きってレベルじゃねぇな。」
玄田は使い込まれたノートを見ながら、ポツリとそう呟いた。
そう、これはどう見ても誰かが見ることを想定して書かれたノートだ。
だが図書隊のために作られたとも考えにくい。
やはり普通に考えれば、赤司に報告するために作られたノートなのだろう。
「とりあえずここにいる全員、このノートをしっかり把握しとけ。」
玄田は不機嫌な表情で、そう言った。
何となく借りを作ったようで、面白くないのだろう。
だが今後の抗争を考えれば、有効活用しない手はない。
集まった班長たちが「はい!」と答える野太い声がハモる。
それを満足げに見やった玄田は、咳払いを1つすると話題を変えた。
「それから、堂上!」
「はい!」
「来年度の錬成教官に手塚と笠原に任命された。今のうちからしっかり準備させておけ。」
「わかりました!」
堂上の眉間のシワが取れて、笑顔になった。
周囲からも「よかったな」と声がかかる。
特殊部隊にはなかなか新隊員が入らず、手塚と郁は未だに末っ子のままなのだ。
なかなか後輩の面倒を見る機会がない彼らにとって、錬成教官は良い経験になるはずだ。
「それにしても、まさかあいつが『堂上教官』になる日がくるとはなぁ」
進藤がニシシと往年の人気アニメの猫のような笑いと共にそう言った。
堂上は「確かに複雑な気分です」と答えながらも、笑顔は変わらなかった。
検閲抗争時の銃火器使用が規制されて、初めての新隊員。
そんな新しい世代を、郁と手塚が指導する。
こうして図書隊は、検閲のない時代に向かって進んでいく。
堂上も他の班長たちも、そんな高揚感で盛り上がっていた。
玄田は使い込まれたノートをパラパラとめくりながら、そう言った。
すると進藤が緒形を見ながら「お前くらい?」と茶化す。
だが緒形は極めて冷静に「俺よりはるかに優秀だ」と答えた。
2日ほど前、検閲抗争があった。
黒子が特殊部隊を離れて以来、久しぶりの抗争。
つまり化学兵器が使われた後、初の抗争となった。
そしてこの日は定例の班長会議だ。
ごくごく自然に、話題は抗争の総括から入ることになった。
「激しい抗争だったが、よく動けていたよな。」
玄田の感想は、そのまま班長たちの感想だった。
化学兵器使用で、良化隊は世間の批判を浴びた。
そのために抗争はしばらくなかったのだ。
だがその分を取り返すように、激しい銃撃戦になった。
おそらく火気使用規制になるまでは、そんな戦いが続くのだろう。
そんな中、2日前の抗争は実に良くやれたと思う。
全員が効率よく動けたし、図書は守れた。
その最大の原因は、紫原から黒子経由で託されたノートだった。
良化隊の大まかな戦略やそれに伴うフォーメーションなどが綺麗にまとめられていた。
さらに班別に班長の戦略の立て方や、隊員のタイプから分析したその班の特性。
そしてここ数年、紫原が関わった検閲抗争の勝因や敗因。
とにかくありとあらゆる方向から、良化隊の戦力をレポートしている。
先日の抗争で図書隊の被害が最小限だったのは、ひとえにこのノートのおかげと言って過言ではない。
「こりゃ個人の覚え書きってレベルじゃねぇな。」
玄田は使い込まれたノートを見ながら、ポツリとそう呟いた。
そう、これはどう見ても誰かが見ることを想定して書かれたノートだ。
だが図書隊のために作られたとも考えにくい。
やはり普通に考えれば、赤司に報告するために作られたノートなのだろう。
「とりあえずここにいる全員、このノートをしっかり把握しとけ。」
玄田は不機嫌な表情で、そう言った。
何となく借りを作ったようで、面白くないのだろう。
だが今後の抗争を考えれば、有効活用しない手はない。
集まった班長たちが「はい!」と答える野太い声がハモる。
それを満足げに見やった玄田は、咳払いを1つすると話題を変えた。
「それから、堂上!」
「はい!」
「来年度の錬成教官に手塚と笠原に任命された。今のうちからしっかり準備させておけ。」
「わかりました!」
堂上の眉間のシワが取れて、笑顔になった。
周囲からも「よかったな」と声がかかる。
特殊部隊にはなかなか新隊員が入らず、手塚と郁は未だに末っ子のままなのだ。
なかなか後輩の面倒を見る機会がない彼らにとって、錬成教官は良い経験になるはずだ。
「それにしても、まさかあいつが『堂上教官』になる日がくるとはなぁ」
進藤がニシシと往年の人気アニメの猫のような笑いと共にそう言った。
堂上は「確かに複雑な気分です」と答えながらも、笑顔は変わらなかった。
検閲抗争時の銃火器使用が規制されて、初めての新隊員。
そんな新しい世代を、郁と手塚が指導する。
こうして図書隊は、検閲のない時代に向かって進んでいく。
堂上も他の班長たちも、そんな高揚感で盛り上がっていた。
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