after story9「特A」
『堂上と笠原は、特Aの確保に向かえ。』
無線から玄田の指示が聞こえてくる。
堂上は「了解!」と答えて、郁を見た。
同じ無線を聞いていた郁は、堂上の目を真っ直ぐに見ながらしっかりと頷いた。
抗争は未だかつてないほどの混乱を呈していた。
関東図書基地を包囲する良化隊の数は、かなり多い。
しかも今回の検閲対象は数十冊もあり、代執行命令が届いてから抗争開始までの時間が短い。
そして抗争が始まるなり、激しい銃撃戦が始まったのだ。
無線からは様々な報告が上がって来る。
防衛ラインが突破された、負傷者が出た、弾薬が足りない等々。
そんな中、堂上と郁の任務は隊内で「特A」と呼ばれている本を確保することだった。
特Aとは検閲対象図書の中でも、特に守る優先順位が高い本だった。
武蔵野第一図書館では1冊しか保有しておらず、だが絶版になっているもの。
つまり取られたら再入手が非常に困難であることが予想される図書を指す。
今回の検閲対象の中で「特A」は15冊だった。
それを図書館内から運び出し、安全な場所に運び出す。
「行くぞ、笠原。」
「了解です!」
堂上と郁は声をかけ合うと、図書館に侵入した。
すでに普段の新婚ラブラブモードは微塵もない。
戦闘職種の上官と部下として、堂上と郁は走り出した。
「抗争で銃が使えるうちに、1冊でも多く取っておこうってことですかね?」
「だけじゃないだろう。やり方が陰湿すぎる。」
「やっぱり嫌がらせ?」
「だろうな。」
堂上と郁はそんな言葉を交わしながら、15冊の本をかき集めていく。
たかが15冊、されど15冊。
図書館前まで良化隊が迫って来ていることは、無線を通じて伝わって来る。
時間がない中、書架の間を走り回って対象図書をかき集めるのはきつい作業だ。
ようやく全部揃ったところで背嚢に納め、それを郁が背負ったところで正面が破られた。
図書館内に良化隊の制服を着た男たちが、なだれ込んでくる。
「笠原、行くぞ!」
「はい!」
郁は背嚢を背負って走り出し、堂上がそれを守るように続いた。
館内に侵入してきた良化隊員を、防衛部の隊員たちが何とか押さえ込もうとしている。
だがそれを逃れた数名が、堂上と郁を追いかけて来た。
何としても、守る!
郁はそう念じながら、走るスピードを上げた。
背中を守ってくれる堂上の力強いオーラが、それを後押ししてくれた。
無線から玄田の指示が聞こえてくる。
堂上は「了解!」と答えて、郁を見た。
同じ無線を聞いていた郁は、堂上の目を真っ直ぐに見ながらしっかりと頷いた。
抗争は未だかつてないほどの混乱を呈していた。
関東図書基地を包囲する良化隊の数は、かなり多い。
しかも今回の検閲対象は数十冊もあり、代執行命令が届いてから抗争開始までの時間が短い。
そして抗争が始まるなり、激しい銃撃戦が始まったのだ。
無線からは様々な報告が上がって来る。
防衛ラインが突破された、負傷者が出た、弾薬が足りない等々。
そんな中、堂上と郁の任務は隊内で「特A」と呼ばれている本を確保することだった。
特Aとは検閲対象図書の中でも、特に守る優先順位が高い本だった。
武蔵野第一図書館では1冊しか保有しておらず、だが絶版になっているもの。
つまり取られたら再入手が非常に困難であることが予想される図書を指す。
今回の検閲対象の中で「特A」は15冊だった。
それを図書館内から運び出し、安全な場所に運び出す。
「行くぞ、笠原。」
「了解です!」
堂上と郁は声をかけ合うと、図書館に侵入した。
すでに普段の新婚ラブラブモードは微塵もない。
戦闘職種の上官と部下として、堂上と郁は走り出した。
「抗争で銃が使えるうちに、1冊でも多く取っておこうってことですかね?」
「だけじゃないだろう。やり方が陰湿すぎる。」
「やっぱり嫌がらせ?」
「だろうな。」
堂上と郁はそんな言葉を交わしながら、15冊の本をかき集めていく。
たかが15冊、されど15冊。
図書館前まで良化隊が迫って来ていることは、無線を通じて伝わって来る。
時間がない中、書架の間を走り回って対象図書をかき集めるのはきつい作業だ。
ようやく全部揃ったところで背嚢に納め、それを郁が背負ったところで正面が破られた。
図書館内に良化隊の制服を着た男たちが、なだれ込んでくる。
「笠原、行くぞ!」
「はい!」
郁は背嚢を背負って走り出し、堂上がそれを守るように続いた。
館内に侵入してきた良化隊員を、防衛部の隊員たちが何とか押さえ込もうとしている。
だがそれを逃れた数名が、堂上と郁を追いかけて来た。
何としても、守る!
郁はそう念じながら、走るスピードを上げた。
背中を守ってくれる堂上の力強いオーラが、それを後押ししてくれた。
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