after story8「戦闘開始」

「黒子はどうした!?」
堂上は集まった班員たちを見回すと、声を張り上げる。
だが背後からの「ここにいます」という無機質な声に「うわ!」と驚くことになった。

久しぶりの検閲抗争。
堂上班にとっては、6人体制になって初めての抗争となる。
いつも通りだがいつもと違う、身支度を整えて班ごとに集合。
そののっけから、プチハプニングだ。
影が薄い黒子に驚かされた堂上は、仕切り直しとばかりに小さく咳払いをした。

「小牧、手塚は狙撃班へ合流。笠原は俺とバディだ。」
堂上は抗争前、班員たちに指示を飛ばした。
抗争時に銃火器の使用がもうすぐできなくなる。
だからこそそれまでは銃撃戦メインの抗争が予想できる。
それを見越して、小牧も狙撃班に加わることになった。
堂上と郁は通常通りの配置につく。

「伊月、黒子。お前たちは。。。わかっているな。」
堂上の指示を受けて、2人は頷いた。
今回、良化隊の新装備である化学兵器が登場する可能性がある。
黒子たちはその対応のために別行動をとることになっていた。

「激しい抗争になることが予想される。各自注意しろ。自分の身を守るのが最優先だ。」
班長の指示に全員が敬礼で答えた。
そして6人が3方向へと散っていく。
それぞれの戦闘配置に向かうためだ。

「郁。俺から離れるな。」
2人きりになるなり、堂上はそう言った。
郁は「篤さんも」と微笑みながら、拳を差し出した。
拳同士を軽く合わせて、気合いを入れる。
そんなつもりだったのだが。

「絶対に生き残る。」
堂上は郁の拳を大きな手で包み込んだ。
そしてキュッと力を入れる。
驚き、堂上の顔を見た郁の胸がドキンと高鳴った。
郁を見つめる堂上の視線の熱っぽさと色っぽさ。
堂上にその気はないのだろうが、戦闘職種の男のフェロモンがダダ漏れている。

まったく何でこんなときに、エロくなるわけ!?
初々しい新妻の郁は、夫のただならぬエロスに動揺しながらも「うん」と答える。
そして握っていた手が離れた時には、2人とも優秀な戦闘員の顔になっていた。
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