after story7「優劣」
「いいよなぁ。贔屓されてるやつは。」
聞こえよがしにそんな声が聞こえ、道場内に不穏な空気が流れる。
それを聞いた郁は思わず、声の主を睨んでしまう。
だが当の黒子はまったくのノーリアクションだった。
この日は特殊部隊と防衛部の合同訓練だった。
黒子が特殊部隊に配属されてから、初めてのことだ。
だが黒子に特に気負いはなかった。
組まれた訓練メニューにひたすら食らい付いていた。
「頑張ってるんだけどな。」
思わずそんなことを口にしたのは、手塚だった。
もちろん黒子のことだ。
つい先日まで後方支援部だったと思えば、よく動けている。
だが防衛員としては、普通だった。
若い防衛員の中に混じれば、どの種目もほぼ中の下程度。
特殊部隊としたら、ほぼビリだ。
もちろん防衛員たちも、そんな黒子の様子にはすぐ気づいた。
そして多くの者たちは、冷やかに見ている。
黒子が特殊部隊に配属された経緯は、明かされていない。
だからなぜこんなヤツが特殊部隊なのかと、不思議なのだろう。
だがその中には、黙っていられない者もいるのである。
「いいよなぁ。贔屓されてるやつは。」
「本当にな。いきなり特殊部隊なんてありかよ。」
道場で格闘訓練の最中、聞こえよがしに声を上げたのは、郁たちと同期の男たちだった。
特殊部隊志望で、郁が特殊部隊に配属になった当初も因縁をつけてきたヤツらだ。
郁が実績を重ねてきたことで文句がつけにくいところで、黒子が配属になった。
格好のターゲットを見つけたとでも思っているのだろう。
何なのよ。こいつら。
頭に来た郁は、彼らを睨みつける。
だが黒子はまったくの無視で、スルーしている。
もしかして聞こえていなかったのかとさえ思うほどだ。
だがあの距離で大声で呼ばわれば、聞こえないはずがない。
「なぁ、勝負しろよ!」
無視されたのが面白くないのか、男たちは黒子の前に回り込んで、挑みかかった。
このときになって、黒子はようやく反応を示した。
とはいえ、小首を軽く傾げただけの薄いリアクションだが。
「お前ら、何を言ってるんだ。」
「ボクは別にかまいませんが。」
手塚の窘める声と、黒子の了承の声が重なる。
そして呆然とする郁の前で、あっさりと話が決まった。
黒子と防衛員の1人は道場の中央で、組手で戦うことになった。
そんな。勝てるわけない。
郁はヒヤヒヤしながら、2人を見ていた。
相手の男は格闘術が得意なのだ。
いくら何でも、力勝負なら黒子に勝ち目はない気がする。
だが勝負は予想外の展開となった。
ものの数秒の早業だった。
黒子は視線誘導(ミスディレクション)を駆使して、あっけなく男を床に組み伏せたのだ。
「うっそ~!?すご~い!!」
「堂上三正、声が大きすぎます。」
郁の驚きの声に、黒子は冷静にツッコミを入れた。
どんなときでも飄々としているのが、黒子の真骨頂である。
聞こえよがしにそんな声が聞こえ、道場内に不穏な空気が流れる。
それを聞いた郁は思わず、声の主を睨んでしまう。
だが当の黒子はまったくのノーリアクションだった。
この日は特殊部隊と防衛部の合同訓練だった。
黒子が特殊部隊に配属されてから、初めてのことだ。
だが黒子に特に気負いはなかった。
組まれた訓練メニューにひたすら食らい付いていた。
「頑張ってるんだけどな。」
思わずそんなことを口にしたのは、手塚だった。
もちろん黒子のことだ。
つい先日まで後方支援部だったと思えば、よく動けている。
だが防衛員としては、普通だった。
若い防衛員の中に混じれば、どの種目もほぼ中の下程度。
特殊部隊としたら、ほぼビリだ。
もちろん防衛員たちも、そんな黒子の様子にはすぐ気づいた。
そして多くの者たちは、冷やかに見ている。
黒子が特殊部隊に配属された経緯は、明かされていない。
だからなぜこんなヤツが特殊部隊なのかと、不思議なのだろう。
だがその中には、黙っていられない者もいるのである。
「いいよなぁ。贔屓されてるやつは。」
「本当にな。いきなり特殊部隊なんてありかよ。」
道場で格闘訓練の最中、聞こえよがしに声を上げたのは、郁たちと同期の男たちだった。
特殊部隊志望で、郁が特殊部隊に配属になった当初も因縁をつけてきたヤツらだ。
郁が実績を重ねてきたことで文句がつけにくいところで、黒子が配属になった。
格好のターゲットを見つけたとでも思っているのだろう。
何なのよ。こいつら。
頭に来た郁は、彼らを睨みつける。
だが黒子はまったくの無視で、スルーしている。
もしかして聞こえていなかったのかとさえ思うほどだ。
だがあの距離で大声で呼ばわれば、聞こえないはずがない。
「なぁ、勝負しろよ!」
無視されたのが面白くないのか、男たちは黒子の前に回り込んで、挑みかかった。
このときになって、黒子はようやく反応を示した。
とはいえ、小首を軽く傾げただけの薄いリアクションだが。
「お前ら、何を言ってるんだ。」
「ボクは別にかまいませんが。」
手塚の窘める声と、黒子の了承の声が重なる。
そして呆然とする郁の前で、あっさりと話が決まった。
黒子と防衛員の1人は道場の中央で、組手で戦うことになった。
そんな。勝てるわけない。
郁はヒヤヒヤしながら、2人を見ていた。
相手の男は格闘術が得意なのだ。
いくら何でも、力勝負なら黒子に勝ち目はない気がする。
だが勝負は予想外の展開となった。
ものの数秒の早業だった。
黒子は視線誘導(ミスディレクション)を駆使して、あっけなく男を床に組み伏せたのだ。
「うっそ~!?すご~い!!」
「堂上三正、声が大きすぎます。」
郁の驚きの声に、黒子は冷静にツッコミを入れた。
どんなときでも飄々としているのが、黒子の真骨頂である。
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