第37話「こんなことでつぶれるタマじゃねーっすよ。」
「本当にごめんね。」
律としては申し訳ない気持ちで、何度も黒子と火神に謝罪した。
なぜなら律が提案した「ちゃんとしたデート」のせいで、2人は大変な嵐の中に叩き込まれたのだから。
黒子と火神の恋愛が、ネットでスクープされてしまった。
それは瞬く間に、あらゆるメディアに拡散した。
テレビ、タブロイド紙、雑誌等々。
NBAの人気選手の同性愛は、あっという間に全米に広まる勢いだ。
そしてさらには日本にも、その情報は飛び火しつつあった。
さらにまずいことに、相手が黒子であることもしっかりとバレていた。
作家「まこと・りん」だけでなく、本名の黒子テツヤもそれなりの知名度はある。
何しろ高校在学中に、ウインターカップ優勝を成し遂げ、月刊バスケットボールに顔写真が載ったこともあるのだから。
かつてのチームメイトが恋人として同居し、ハウスキーパーをしている。
そんな情報まで、しっかりニュースになってしまったのだ。
そして火神はマスコミのインタビューで、それらの事実を全て認めた。
高校時代の相棒は、今、人生のパートナーであると。
するとこのニュースはますます加速しながら、世間を騒がせ、かき回していく。
だが当の火神も黒子も、落ち着いていた。
あまりのマスコミの過熱ぶりに、さすがに普段通りの生活はできなくなった。
火神は出かけるたびに、張り込んでいたパパラッチにつけ回されている。
だから試合や練習のたびに、友人の赤司が手配してくれたボディガードに守られての移動だ。
そして黒子はマンションにこもって、外に出なくなった。
ジムやマンション敷地内でのランニングくらいがせいぜいで、それ以外のときは部屋にこもって執筆に勤しんでいる。
その余韻は、同じマンションに住む青峰夫妻にも及んでいた。
青峰も桃井も、高校時代からの黒子、火神の共通の友人であるからだ。
特に桃井は子供を産んだばかり、繊細な時期だ。
だから生まれたばかりの子供を連れて、日本に戻った。
ほとぼりが冷めるまでは、実家で子育てに専念するという。
「俺に何かできること、あるかな?」
せめてもの罪滅ぼしに、律は黒子にそう申し出た。
すると黒子の答えは「買い物をお願いしたいんですが」と答えた。
外出をするといちいちつけ回される火神と、外に出られない黒子。
2人の切実な問題は、買い物だったらしい。
律は喜んで了承し、高野と2人で日々の買い物を手伝うことにした。
さすがのマスコミも、黒子と律の関係は嗅ぎつけていないらしい。
高野と律は、完全にノーマークだった。
「黒子君、買ってきたよ。」
律は頼まれた買い物を済ませると、黒子たちの部屋へと持って行く。
黒子は礼儀正しく「いつもすみません」と告げる。
そしてお礼にとコーヒーを淹れてくれて、2人で喋るのが新しい日課になった。
「本当に申し訳ないです。雑用なんか頼んでしまって。」
黒子はいつも通り、感情の見えない表情と声で頭を下げる。
どうしてこんなに落ち着いていられるのだろう?
あまりの冷静さに、律は狐につままれたような気分だった。
律としては申し訳ない気持ちで、何度も黒子と火神に謝罪した。
なぜなら律が提案した「ちゃんとしたデート」のせいで、2人は大変な嵐の中に叩き込まれたのだから。
黒子と火神の恋愛が、ネットでスクープされてしまった。
それは瞬く間に、あらゆるメディアに拡散した。
テレビ、タブロイド紙、雑誌等々。
NBAの人気選手の同性愛は、あっという間に全米に広まる勢いだ。
そしてさらには日本にも、その情報は飛び火しつつあった。
さらにまずいことに、相手が黒子であることもしっかりとバレていた。
作家「まこと・りん」だけでなく、本名の黒子テツヤもそれなりの知名度はある。
何しろ高校在学中に、ウインターカップ優勝を成し遂げ、月刊バスケットボールに顔写真が載ったこともあるのだから。
かつてのチームメイトが恋人として同居し、ハウスキーパーをしている。
そんな情報まで、しっかりニュースになってしまったのだ。
そして火神はマスコミのインタビューで、それらの事実を全て認めた。
高校時代の相棒は、今、人生のパートナーであると。
するとこのニュースはますます加速しながら、世間を騒がせ、かき回していく。
だが当の火神も黒子も、落ち着いていた。
あまりのマスコミの過熱ぶりに、さすがに普段通りの生活はできなくなった。
火神は出かけるたびに、張り込んでいたパパラッチにつけ回されている。
だから試合や練習のたびに、友人の赤司が手配してくれたボディガードに守られての移動だ。
そして黒子はマンションにこもって、外に出なくなった。
ジムやマンション敷地内でのランニングくらいがせいぜいで、それ以外のときは部屋にこもって執筆に勤しんでいる。
その余韻は、同じマンションに住む青峰夫妻にも及んでいた。
青峰も桃井も、高校時代からの黒子、火神の共通の友人であるからだ。
特に桃井は子供を産んだばかり、繊細な時期だ。
だから生まれたばかりの子供を連れて、日本に戻った。
ほとぼりが冷めるまでは、実家で子育てに専念するという。
「俺に何かできること、あるかな?」
せめてもの罪滅ぼしに、律は黒子にそう申し出た。
すると黒子の答えは「買い物をお願いしたいんですが」と答えた。
外出をするといちいちつけ回される火神と、外に出られない黒子。
2人の切実な問題は、買い物だったらしい。
律は喜んで了承し、高野と2人で日々の買い物を手伝うことにした。
さすがのマスコミも、黒子と律の関係は嗅ぎつけていないらしい。
高野と律は、完全にノーマークだった。
「黒子君、買ってきたよ。」
律は頼まれた買い物を済ませると、黒子たちの部屋へと持って行く。
黒子は礼儀正しく「いつもすみません」と告げる。
そしてお礼にとコーヒーを淹れてくれて、2人で喋るのが新しい日課になった。
「本当に申し訳ないです。雑用なんか頼んでしまって。」
黒子はいつも通り、感情の見えない表情と声で頭を下げる。
どうしてこんなに落ち着いていられるのだろう?
あまりの冷静さに、律は狐につままれたような気分だった。
1/2ページ