第25話「なんで、こんなことに」
「はぁぁ、何だ、こりゃ!?」
黒子が操作するノートパソコンを覗き込んだ火神は、思わず声を上げる。
だが当の黒子は冷やかに「のぞかないで下さい」と文句を言った。
日本に一時帰国していた黒子と律が、アメリカに戻った。
火神にとって、待っている時間は本当に長かった。
律は高野と頻繁に連絡を取っていたが、黒子は日に1、2回、短いメールを寄越すだけだったせいだと思う。
結局高野経由で、2人の東京での行動を知らされたのだ。
まったくじれったい。
「ツンデレ」という言葉があるが、黒子の場合は9割以上が「ツン」だ。
空港まで迎えに行った時だって、そうだ。
高野の車に乗せてもらい、一緒に行ったのだが、律は高野の姿を見るなりパァッと笑顔になった。
まさに花が咲くようにという感じだ。
元々が美形なせいもあるだろう。
その変化は劇的で、火神でさえ思わず見とれたほどだ。
だが黒子は「ただいま帰りました」と素っ気なく一言だけだ。
表情もまったく変わらない、いつもの黒子だ。
それでこそ黒子ではあるのだが、やはりちょっと寂しい。
すこしくらい甘えるとか、せめて笑うとかあってもいいと思うのだが。
「火神君のお父様とは、この先、争うことはなさそうです。」
「そうなのか?」
「和解までは至りませんでしたが、お互いの立場を冷静に伝えることはできました。」
マンションに戻って来て2人きりになるなり、黒子は日本での成果を報告した。
何だかフワッとした話だが、黒子が確信したのなら、きっと大丈夫なのだろう。
帰国の翌日から、黒子は執筆に励んでいた。
どうやら日本であったことが、創作意欲を刺激したらしい。
パソコンに向かい、とにかくキーを叩いている。
火神はそんな黒子を横目で見ながら、世話を焼いていた。
邪魔をしないように、話しかけるのは必要最低限にして、食事だけはしっかりとらせる。
本音を言えば、会いなかった分だけもっとじゃれ合いたい気はする。
でもそれ以上に、黒子の作家としての活動は応援したかった。
「ほいよ、黒子。」
火神はパソコンに向かい、画面を見ている黒子の横にカップを置いた。
中身は火神特製のバニラシェイク。
黒子の好きなマジバの味に近づけるために、研究を重ねたものだ。
そしてその瞬間、チラリと見えたパソコン画面を見て「はぁぁ!?」と絶叫することになった。
「何だ、こりゃ!?」
「のぞかないで下さい。」
いやのぞいたわけではなく、たまたま見えてしまっただけだ。
画面に表示されているのは、丸川書店の桐嶋からメールで送られてきた黒子の作品のコミカライズ用の資料。
主要なキャラクターのデザインが描かれていたのだが、問題は主役のカップルの男の方だ。
その姿形は知っている人物によく似ていた。
かつての中学時代の黒子のチームメイト、黄瀬涼太だ。
黄瀬はバスケを引退して、モデルから俳優に転身している。
「これはバスケの話だし、モデルがいるってことは公表してるので」
「だけど、何で黄瀬だよ!?」
「僕も黄瀬君ではないと言ったんですけどね」
そう、黒子の処女作は黒子と火神の物語がモチーフになっている。
つまりカップルの男のモデルは、火神なのだ。
「これはダメだろ。」
「そうですね。カッコ良すぎです。」
黒子の言葉に、火神は「はぁ!?」と文句を言う。
だが黒子は「修正を申し入れますから、安心してください」と答え、火神の抗議はサクッと無視された。
黒子が操作するノートパソコンを覗き込んだ火神は、思わず声を上げる。
だが当の黒子は冷やかに「のぞかないで下さい」と文句を言った。
日本に一時帰国していた黒子と律が、アメリカに戻った。
火神にとって、待っている時間は本当に長かった。
律は高野と頻繁に連絡を取っていたが、黒子は日に1、2回、短いメールを寄越すだけだったせいだと思う。
結局高野経由で、2人の東京での行動を知らされたのだ。
まったくじれったい。
「ツンデレ」という言葉があるが、黒子の場合は9割以上が「ツン」だ。
空港まで迎えに行った時だって、そうだ。
高野の車に乗せてもらい、一緒に行ったのだが、律は高野の姿を見るなりパァッと笑顔になった。
まさに花が咲くようにという感じだ。
元々が美形なせいもあるだろう。
その変化は劇的で、火神でさえ思わず見とれたほどだ。
だが黒子は「ただいま帰りました」と素っ気なく一言だけだ。
表情もまったく変わらない、いつもの黒子だ。
それでこそ黒子ではあるのだが、やはりちょっと寂しい。
すこしくらい甘えるとか、せめて笑うとかあってもいいと思うのだが。
「火神君のお父様とは、この先、争うことはなさそうです。」
「そうなのか?」
「和解までは至りませんでしたが、お互いの立場を冷静に伝えることはできました。」
マンションに戻って来て2人きりになるなり、黒子は日本での成果を報告した。
何だかフワッとした話だが、黒子が確信したのなら、きっと大丈夫なのだろう。
帰国の翌日から、黒子は執筆に励んでいた。
どうやら日本であったことが、創作意欲を刺激したらしい。
パソコンに向かい、とにかくキーを叩いている。
火神はそんな黒子を横目で見ながら、世話を焼いていた。
邪魔をしないように、話しかけるのは必要最低限にして、食事だけはしっかりとらせる。
本音を言えば、会いなかった分だけもっとじゃれ合いたい気はする。
でもそれ以上に、黒子の作家としての活動は応援したかった。
「ほいよ、黒子。」
火神はパソコンに向かい、画面を見ている黒子の横にカップを置いた。
中身は火神特製のバニラシェイク。
黒子の好きなマジバの味に近づけるために、研究を重ねたものだ。
そしてその瞬間、チラリと見えたパソコン画面を見て「はぁぁ!?」と絶叫することになった。
「何だ、こりゃ!?」
「のぞかないで下さい。」
いやのぞいたわけではなく、たまたま見えてしまっただけだ。
画面に表示されているのは、丸川書店の桐嶋からメールで送られてきた黒子の作品のコミカライズ用の資料。
主要なキャラクターのデザインが描かれていたのだが、問題は主役のカップルの男の方だ。
その姿形は知っている人物によく似ていた。
かつての中学時代の黒子のチームメイト、黄瀬涼太だ。
黄瀬はバスケを引退して、モデルから俳優に転身している。
「これはバスケの話だし、モデルがいるってことは公表してるので」
「だけど、何で黄瀬だよ!?」
「僕も黄瀬君ではないと言ったんですけどね」
そう、黒子の処女作は黒子と火神の物語がモチーフになっている。
つまりカップルの男のモデルは、火神なのだ。
「これはダメだろ。」
「そうですね。カッコ良すぎです。」
黒子の言葉に、火神は「はぁ!?」と文句を言う。
だが黒子は「修正を申し入れますから、安心してください」と答え、火神の抗議はサクッと無視された。
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