第24話「それでも前進はしたから」
黒子と律が日本に帰ってから、数日が過ぎた。
予定では3日後に戻ってくることになっている。
黒子から火神には、まるで生きていることだけを報告するような素っ気ないメールばかり来る。
だが律は高野に詳細を報告しているようで、火神には高野経由で2人の動向が知らされていた。
これは精神衛生上も、非情によくない。
どうしても黒子のことが、心配になってしまうのだ。
だが火神だって、黒子のことばかりを気にしているわけにはいかない。
NBAプレイヤーとして、なすべき仕事があるのだ。
今日もそんな仕事の一環だ。
テレビのスポーツチャンネルのインタビューを受けることになっている。
基本的にメディアの取材は好きではない火神だが、アメリカの媒体だと嬉しい。
日本のものだとNBAプレイヤーというだけで、意味なくチヤホヤされているような気がするのだ。
だがバスケの本場であるアメリカだと、そんな浅い感じがない。
むしろレベルの高い多くのプレイヤーの中から選んでもらえたという誇らしさがある。
だが今日は素直に喜べない状況だった。
「何でテメーと一緒なんだよ。」
テレビ局のスタジオで、隣のソファに座る男が火神に文句を言う。
火神は「そりゃこっちのセリフだ」と言い返した。
同じ歳の日本人プレイヤーということで、この男、青峰とはよくセットにされることはある。
まったく不本意極まりないことだ。
もっとも黒子などは「火神君の単純さは青峰君を彷彿とさせます」なんて言う。
タイプとしては、同じところに分類されているのだ。
高校で火神とコンビを組む前、中学では青峰と組んでいた黒子に言われると、反論できないのだが。
とはいえ、今ではプロのバスケ選手、インタビューだって仕事のうちだ。
不本意だろうと何だろうと、笑顔で応じる。
感情のままに、笑ったり怒ったりしていた学生の頃とは違うのだ。
青峰もそれは同じで、2人も表向きは笑顔でインタビュアーの質問に答えていった。
「火神選手は最近、よく本を読んでいるそうですね。」
インタビュアーの女性が「それでは最後に」と前置きしながら、そう言った。
その瞬間、火神は「やった!」と踊りだしたいほど嬉しくなったが、それを懸命に抑えた。
その様子を横で見ていた青峰は、笑いをかみ殺している。
火神は最近、試合会場などで、わざと目につくように本を読んでいた。
それは黒子が書き、律が英語に翻訳した本だった。
英語版の売れ行きがよくないと聞いた火神は、ささやかながらPR活動を始めたのだ。
そんなことで何が変わるわけがないと思っていたが、どうやら成果はあったようだ。
ここへ来て、コマーシャルができるのだから。
「あれは友人が書いた本なんだ。俺は本なんか読まないけど、あれだけは面白い。」
火神はこの日のために用意していたセリフを、口にした。
これは赤司の指示だ。
ただただ面白い本だと言って、のちに作者である黒子と知り合いだとバレたら、下手をすればバッシングを受ける。
だから最初から友人の本だと、きちんと明かした方がいいと。
「俺も読んだ。面白かったぜ。」
青峰が横から口を挟んだ。
何だか助け船みたいで気に入らないが、火神は素知らぬ顔をし続けた。
黒子と律の本を売り込めるチャンスに、個人的な感情などどうでもいい。
「どういう本ですか?」
インタビュアーが笑顔で、本のことを聞いてくれる。
火神も笑顔を返しながら「『まこと・りん』という日本の作家の本だ」と答えた。
予定では3日後に戻ってくることになっている。
黒子から火神には、まるで生きていることだけを報告するような素っ気ないメールばかり来る。
だが律は高野に詳細を報告しているようで、火神には高野経由で2人の動向が知らされていた。
これは精神衛生上も、非情によくない。
どうしても黒子のことが、心配になってしまうのだ。
だが火神だって、黒子のことばかりを気にしているわけにはいかない。
NBAプレイヤーとして、なすべき仕事があるのだ。
今日もそんな仕事の一環だ。
テレビのスポーツチャンネルのインタビューを受けることになっている。
基本的にメディアの取材は好きではない火神だが、アメリカの媒体だと嬉しい。
日本のものだとNBAプレイヤーというだけで、意味なくチヤホヤされているような気がするのだ。
だがバスケの本場であるアメリカだと、そんな浅い感じがない。
むしろレベルの高い多くのプレイヤーの中から選んでもらえたという誇らしさがある。
だが今日は素直に喜べない状況だった。
「何でテメーと一緒なんだよ。」
テレビ局のスタジオで、隣のソファに座る男が火神に文句を言う。
火神は「そりゃこっちのセリフだ」と言い返した。
同じ歳の日本人プレイヤーということで、この男、青峰とはよくセットにされることはある。
まったく不本意極まりないことだ。
もっとも黒子などは「火神君の単純さは青峰君を彷彿とさせます」なんて言う。
タイプとしては、同じところに分類されているのだ。
高校で火神とコンビを組む前、中学では青峰と組んでいた黒子に言われると、反論できないのだが。
とはいえ、今ではプロのバスケ選手、インタビューだって仕事のうちだ。
不本意だろうと何だろうと、笑顔で応じる。
感情のままに、笑ったり怒ったりしていた学生の頃とは違うのだ。
青峰もそれは同じで、2人も表向きは笑顔でインタビュアーの質問に答えていった。
「火神選手は最近、よく本を読んでいるそうですね。」
インタビュアーの女性が「それでは最後に」と前置きしながら、そう言った。
その瞬間、火神は「やった!」と踊りだしたいほど嬉しくなったが、それを懸命に抑えた。
その様子を横で見ていた青峰は、笑いをかみ殺している。
火神は最近、試合会場などで、わざと目につくように本を読んでいた。
それは黒子が書き、律が英語に翻訳した本だった。
英語版の売れ行きがよくないと聞いた火神は、ささやかながらPR活動を始めたのだ。
そんなことで何が変わるわけがないと思っていたが、どうやら成果はあったようだ。
ここへ来て、コマーシャルができるのだから。
「あれは友人が書いた本なんだ。俺は本なんか読まないけど、あれだけは面白い。」
火神はこの日のために用意していたセリフを、口にした。
これは赤司の指示だ。
ただただ面白い本だと言って、のちに作者である黒子と知り合いだとバレたら、下手をすればバッシングを受ける。
だから最初から友人の本だと、きちんと明かした方がいいと。
「俺も読んだ。面白かったぜ。」
青峰が横から口を挟んだ。
何だか助け船みたいで気に入らないが、火神は素知らぬ顔をし続けた。
黒子と律の本を売り込めるチャンスに、個人的な感情などどうでもいい。
「どういう本ですか?」
インタビュアーが笑顔で、本のことを聞いてくれる。
火神も笑顔を返しながら「『まこと・りん』という日本の作家の本だ」と答えた。
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