第20話「頑張りますから!」
「黒子君と話をしました。」
律はスマホ画面の中の高野に、そう告げた。
高野は律の表情から、うまくいったことを悟ってくれたようだ。
「俺、本当は黒子君の友だちでいる資格、ないんだ。」
「それは爆弾事件のことですか?」
律の突然の告白に、黒子はそう答えた。
黒子はあの事件を知っていた。
そのことに驚いた律は、二の句も告げられず黙り込んでしまった。
確かに一時、マスコミを騒がせた事件ではあった。
律は当時、親が勝手に決めた婚約者がいた。
高野と恋をしていた律は、それを拒んだ。
だがそれは許されず、律の親は圧力をかけた。
高野を出版業界にいられなくする、場合によっては身の安全も保障しない。
金や権力にものを言わせて、そんなことをするような家だったのだ。
高野の安全を考えれば、律は従わざるを得なかった。
そして律の婚約披露パーティで、その爆弾事件は起きたのだ。
容疑者として、パーティの出席者の何人か名前が挙がった。
律も高野も、その1人だ。
そして最有力容疑者は、律の婚約者の父親だった。
爆破事件の現場は彼の持ち物であり、多額の保険金が入る。
大企業のトップの容疑に、当時のマスコミは面白おかしく書き立てた。
事件は証拠不十分な上、被害自体は大きくなかったので、捜査は打ち切られている。
「すみません。赤司君がいろいろ調べてて、それで聞いちゃったんです。」
黒子はそう白状した。
そして「あくまでマスコミに報道された程度の情報しか知りません」と付け加えた。
律は小さく息を吸い込むと、意を決して語り始めた。
「あの事件、犯人は俺なんだ。爆弾を用意したのは高野さんだけど、爆発させたのは俺」
「・・・そうですか」
「驚かないの?」
「驚いてますよ」
律は黒子のリアクションに戸惑った。
誘拐事件の犯人を隠匿した火神の父親を許さなかった黒子なのだ。
どんな犯罪でも許さないというポリシーなのかと思った。
そして律の告白を聞いたら、もう友人でいてくれないだろうとも思っていたのだ。
だが黒子は表情も口調も変わらず、リアクションは読めない。
「実はちょっと予想もしてたんですよ。何か事件に関わってるのかなって。」
「え?」
「初めて会った頃、律さんの怯え方は尋常じゃなかったので」
「・・・そう、かな」
「はい。1人で外出ができないって、よっぽどのことだと思って。」
つまりお見通しというわけか。
さすが人気作家、観察眼は並大抵ではない。
感心する律に、黒子は静かに語りかけた。
「律さんは後悔してますか。もう1度同じ状況になったら、どうしますか?」
「後悔してないと言ったら嘘になる。だけど同じ状況になったら、同じことをすると思う。」
律は迷わずそう答えた。
あの茶番のような婚約パーティで高野の顔を見た時、決めたのだ。
誰を不幸にしても、たとえ地獄に落ちても、一緒に生きていきたい。
だから迷わず爆弾の起爆スイッチを押したのだ。
「だったらそれは正しい決断だったんですよ。」
黒子はそう告げて、微笑した。
律は単に犯罪者を憎んでいるわけではなく、彼なりの尺度があるらしい。
そして律は許してもらえたのだ。
「律さんも決着をつけるために来たんでしょう?」
「そうだよ。」
「ボクもです。アメリカに帰る時、2人とも笑っていたいですね。」
黒子の言葉に、律は涙ぐみながら「うん」と頷いたのだった。
そしてその夜、律は高野にこの話をテレビ電話で伝えたのだ。
「俺、頑張りますから!」
律がそう叫ぶと、スマホの中の高野は「あまり無理するなよ」と苦笑する。
だけど律は「いいえ、無理します!」と答えた。
高野という恋人がいて、黒子という友人がいる。
今ならばどんなことだって、できる気がした。
律はスマホ画面の中の高野に、そう告げた。
高野は律の表情から、うまくいったことを悟ってくれたようだ。
「俺、本当は黒子君の友だちでいる資格、ないんだ。」
「それは爆弾事件のことですか?」
律の突然の告白に、黒子はそう答えた。
黒子はあの事件を知っていた。
そのことに驚いた律は、二の句も告げられず黙り込んでしまった。
確かに一時、マスコミを騒がせた事件ではあった。
律は当時、親が勝手に決めた婚約者がいた。
高野と恋をしていた律は、それを拒んだ。
だがそれは許されず、律の親は圧力をかけた。
高野を出版業界にいられなくする、場合によっては身の安全も保障しない。
金や権力にものを言わせて、そんなことをするような家だったのだ。
高野の安全を考えれば、律は従わざるを得なかった。
そして律の婚約披露パーティで、その爆弾事件は起きたのだ。
容疑者として、パーティの出席者の何人か名前が挙がった。
律も高野も、その1人だ。
そして最有力容疑者は、律の婚約者の父親だった。
爆破事件の現場は彼の持ち物であり、多額の保険金が入る。
大企業のトップの容疑に、当時のマスコミは面白おかしく書き立てた。
事件は証拠不十分な上、被害自体は大きくなかったので、捜査は打ち切られている。
「すみません。赤司君がいろいろ調べてて、それで聞いちゃったんです。」
黒子はそう白状した。
そして「あくまでマスコミに報道された程度の情報しか知りません」と付け加えた。
律は小さく息を吸い込むと、意を決して語り始めた。
「あの事件、犯人は俺なんだ。爆弾を用意したのは高野さんだけど、爆発させたのは俺」
「・・・そうですか」
「驚かないの?」
「驚いてますよ」
律は黒子のリアクションに戸惑った。
誘拐事件の犯人を隠匿した火神の父親を許さなかった黒子なのだ。
どんな犯罪でも許さないというポリシーなのかと思った。
そして律の告白を聞いたら、もう友人でいてくれないだろうとも思っていたのだ。
だが黒子は表情も口調も変わらず、リアクションは読めない。
「実はちょっと予想もしてたんですよ。何か事件に関わってるのかなって。」
「え?」
「初めて会った頃、律さんの怯え方は尋常じゃなかったので」
「・・・そう、かな」
「はい。1人で外出ができないって、よっぽどのことだと思って。」
つまりお見通しというわけか。
さすが人気作家、観察眼は並大抵ではない。
感心する律に、黒子は静かに語りかけた。
「律さんは後悔してますか。もう1度同じ状況になったら、どうしますか?」
「後悔してないと言ったら嘘になる。だけど同じ状況になったら、同じことをすると思う。」
律は迷わずそう答えた。
あの茶番のような婚約パーティで高野の顔を見た時、決めたのだ。
誰を不幸にしても、たとえ地獄に落ちても、一緒に生きていきたい。
だから迷わず爆弾の起爆スイッチを押したのだ。
「だったらそれは正しい決断だったんですよ。」
黒子はそう告げて、微笑した。
律は単に犯罪者を憎んでいるわけではなく、彼なりの尺度があるらしい。
そして律は許してもらえたのだ。
「律さんも決着をつけるために来たんでしょう?」
「そうだよ。」
「ボクもです。アメリカに帰る時、2人とも笑っていたいですね。」
黒子の言葉に、律は涙ぐみながら「うん」と頷いたのだった。
そしてその夜、律は高野にこの話をテレビ電話で伝えたのだ。
「俺、頑張りますから!」
律がそう叫ぶと、スマホの中の高野は「あまり無理するなよ」と苦笑する。
だけど律は「いいえ、無理します!」と答えた。
高野という恋人がいて、黒子という友人がいる。
今ならばどんなことだって、できる気がした。
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