第13話「わかった気がする」
律と黒子は、とある場所に向かう車の中にいた。
日本にいたなら、絶対に行くことがないであろう。
ボディガード2人は運転席と助手席におり、律と黒子は後部座席で談笑していた。
「結局、身代金目的の単純な誘拐だったんだよね?」
「犯行手口だけ見れば、そうなります。」
律の言葉に黒子はそう答えた。
どうしても話題は、あの誘拐事件のことになる。
ボディガードたちは日本語がわからないという気安さで、2人は話し込んでいた。
あの事件は不可解に見えたが、偶然が重なっただけだ。
1つは誘拐犯の知人が、同じマンションにいたことだ。
誘拐犯は楽々とセキュリティを抜けて、マンション内で黒子を拉致できた。
だから黒子が謎の失踪をしたように見えてしまったのだ。
そしてもう1つは、誘拐犯が火神の父親の会社の関係者だったこと。
そこで黒子の情報が知られてしまい、そもそも狙われるきっかけになった。
その2点さえ除けば、かなり力技、しかも間の抜けた誘拐事件だった。
「警察に、届けたんだよね?」
「はい。もちろん」
またしても律に問われ、黒子が答える。
そう、ややこしいのはむしろ黒子が戻ってからだった。
火神の父親は、誘拐事件そのものを隠ぺいしようとしたのだ。
だから誘拐犯から逃げた黒子と鉢合わせしたとき、黙ってマンションに送り届けたのだ。
黒子を返す代わりに、騒ぎ立てるなということだ。
その後、火神の父親はマンションを訪ねて来た。
今回の件を黙っていてくれるなら、火神との仲を認めてもいいというようなことも仄めかした。
なぜなら公になれば、会社のスキャンダルになるからだ。
特に今、火神の父親の会社は業績が落ち込んでいる。
だからこそ余計な火種は、消してしまいたいのだろう。
でも黒子は、警察に被害届を出した。
「俺のことなら、気にする必要はないよ?」
律は黒子にそう告げた。
多分、黒子が警察に届けることにしたのは、すごく怒っているから。
そしてその原因は、律がショッピングセンターで間違えられて襲われたからだ。
もしそれがなければ、黒子は黙っていたのかもしれない。
黙っていれば、恋人の親に気に入られることもできるのだ。
「気にしますよ。っていうかそもそも犯罪はダメです。」
「でも、黙っていれば」
「そうしたら、今度はまた違う誰かが巻き込まれるかもしれません。」
「・・・そう、だね。確かに」
黒子の剣幕に、律は静かに引き下がった。
単に律が我慢すればいいなんて発想、黒子にはないのだ。
正しいと思った通りに行動し、絶対に曲げない。
例え自分が、恋人の父親に悪く思われてもだ。
そんな黒子の信念を、律は美しいと思った。
「火神君が黒子君を好きな理由が、わかった気がする。。。」
「そうですか?何だか照れます。」
律の賛辞を真っ向から受け止めた黒子は、口調とは裏腹に落ち着いている。
その表情も、この上なく男前だ。
やがて車はとある建物の前で、静かに停車した。
黒子がまるで試合前の掛け声のように「行きましょう」と告げる。
律も「うん。行こう」と答えると、2人揃って車を降りた。
日本にいたなら、絶対に行くことがないであろう。
ボディガード2人は運転席と助手席におり、律と黒子は後部座席で談笑していた。
「結局、身代金目的の単純な誘拐だったんだよね?」
「犯行手口だけ見れば、そうなります。」
律の言葉に黒子はそう答えた。
どうしても話題は、あの誘拐事件のことになる。
ボディガードたちは日本語がわからないという気安さで、2人は話し込んでいた。
あの事件は不可解に見えたが、偶然が重なっただけだ。
1つは誘拐犯の知人が、同じマンションにいたことだ。
誘拐犯は楽々とセキュリティを抜けて、マンション内で黒子を拉致できた。
だから黒子が謎の失踪をしたように見えてしまったのだ。
そしてもう1つは、誘拐犯が火神の父親の会社の関係者だったこと。
そこで黒子の情報が知られてしまい、そもそも狙われるきっかけになった。
その2点さえ除けば、かなり力技、しかも間の抜けた誘拐事件だった。
「警察に、届けたんだよね?」
「はい。もちろん」
またしても律に問われ、黒子が答える。
そう、ややこしいのはむしろ黒子が戻ってからだった。
火神の父親は、誘拐事件そのものを隠ぺいしようとしたのだ。
だから誘拐犯から逃げた黒子と鉢合わせしたとき、黙ってマンションに送り届けたのだ。
黒子を返す代わりに、騒ぎ立てるなということだ。
その後、火神の父親はマンションを訪ねて来た。
今回の件を黙っていてくれるなら、火神との仲を認めてもいいというようなことも仄めかした。
なぜなら公になれば、会社のスキャンダルになるからだ。
特に今、火神の父親の会社は業績が落ち込んでいる。
だからこそ余計な火種は、消してしまいたいのだろう。
でも黒子は、警察に被害届を出した。
「俺のことなら、気にする必要はないよ?」
律は黒子にそう告げた。
多分、黒子が警察に届けることにしたのは、すごく怒っているから。
そしてその原因は、律がショッピングセンターで間違えられて襲われたからだ。
もしそれがなければ、黒子は黙っていたのかもしれない。
黙っていれば、恋人の親に気に入られることもできるのだ。
「気にしますよ。っていうかそもそも犯罪はダメです。」
「でも、黙っていれば」
「そうしたら、今度はまた違う誰かが巻き込まれるかもしれません。」
「・・・そう、だね。確かに」
黒子の剣幕に、律は静かに引き下がった。
単に律が我慢すればいいなんて発想、黒子にはないのだ。
正しいと思った通りに行動し、絶対に曲げない。
例え自分が、恋人の父親に悪く思われてもだ。
そんな黒子の信念を、律は美しいと思った。
「火神君が黒子君を好きな理由が、わかった気がする。。。」
「そうですか?何だか照れます。」
律の賛辞を真っ向から受け止めた黒子は、口調とは裏腹に落ち着いている。
その表情も、この上なく男前だ。
やがて車はとある建物の前で、静かに停車した。
黒子がまるで試合前の掛け声のように「行きましょう」と告げる。
律も「うん。行こう」と答えると、2人揃って車を降りた。
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