Diffuse reflection
ねぇ、今日これから、時間ある?
黄瀬は狙いを定めたターゲットに近づくと、自信たっぷりな笑顔を見せた。
黄瀬涼太は、この近くのホストクラブで働いている。
やりはじめてわかったことは、ホストは自分の天職だということだ。
スラリとした長身、綺麗な顔立ち、そして明るく人懐っこい笑顔と、親し気な口調。
黄瀬はこれらを生まれながらにして持っている。
そして女の子と喋るのも、大好きだった。
好きなことをして大金をもらい、客である女の子もいい気分になれる。
こんなにステキはことはない。
調子がよい月には、月間ナンバーワンになることもある。
店では気にしていない素振りをしているけれど、やっぱり順位があると燃えるものだ。
だから心の中では、こっそりと年間ナンバーワンを目指している。
少しでも多くの顧客を持ち、少しでも多く売り上げたい。
そのためにこうして道に立ち、女の子に声をかけるのだ。
もちろん誰でもいいわけじゃない。
条件は2つある。
1つは黄瀬の好みであること。
それなりにストライクゾーンは広いが、できればまぁまぁかわいくて髪が長くて胸が大きい子がいい。
2つめは、それなりにお金がかかった身なりをしていることだ。
単なるナンパを装って声をかけるけど、客になってもらわなければならない。
ならばそこそこの財力がなければ、話にならないのだ。
店で盛大に飲み食いしてもらっても、会計ができなければ、それは黄瀬の負債になる。
ねぇ、今日これから、時間ある?
黄瀬は狙いを定めたターゲットに近づくと、自信たっぷりな笑顔を見せた。
女の子は足を止めると、明るい茶色に染めた長い髪をかき上げながら、黄瀬を見た。
彼女はスタイルがよく、それを強調するように身体のラインを強調した服を着ている。
胸が小さいのと、メイクが濃すぎるのは減点だが、身に着けているものがそれを上回った。
プラダのワンピースと、シャネルのバック。アクセサリーはティファニーだ。
金回りのよさは、多少の減点をすべて帳消しにしてくれる。
今日?別にいいけど。
ジロジロと無遠慮に黄瀬を見ていた女は、ニッコリと笑顔になった。
黄瀬が女を値踏みしていたように、女も黄瀬を値踏みしていたのだ。
そしてどうやら合格らしい。
女は「ごはん、おごって」と言いながら、黄瀬の腕に自分の腕を絡ませてきた。
黄瀬は「いいよ、何食べたい?」と軽い口調で応じた。
えぇ、えぇ、メシくらいいくらでもおごってやるよ。
黄瀬は明るい笑顔を見せたまま、内心では毒づいていた。
今日のところは食事して、いい雰囲気になったら自分がホストであることを明かす。
そして「今日はタダでいいから」と言って、店に誘うのだ。
そうして自分の虜にして、その後は店に通ってもらう。
その後、落としてくれる金を考えたら、今日の出費など安い初期投資だ。
黄瀬は女と腕を組みながら、雑踏の中へと歩き出す。
その途端、反対側から歩いてきた人物と肩がぶつかった。
そして耳元で「すみません」と男の声が聞こえる。
だが黄瀬が「こちらこそ」とそちらを向き直った時には、それらしい人物はもういなかった。
何しろ繁華街なので、人はやたらに行き交っているのだけれど、みな足を止めずに行ってしまう。
足を止めているのは、黄瀬に見惚れている女の子が何人かだけだ。
だがその中にぶつかった人物がいないのは明白だった。
だってさっき「すみません」と告げた声は、男だったのだから。
気のせいかな?誰かにぶつかった気がしたんだけど。
黄瀬は何だか化かされたような気分で、首を傾げる。
だが腕にぶら下がっている女に「早く行こうよぉ」と急かされたので、そのまま歩き出した。
黄瀬は狙いを定めたターゲットに近づくと、自信たっぷりな笑顔を見せた。
黄瀬涼太は、この近くのホストクラブで働いている。
やりはじめてわかったことは、ホストは自分の天職だということだ。
スラリとした長身、綺麗な顔立ち、そして明るく人懐っこい笑顔と、親し気な口調。
黄瀬はこれらを生まれながらにして持っている。
そして女の子と喋るのも、大好きだった。
好きなことをして大金をもらい、客である女の子もいい気分になれる。
こんなにステキはことはない。
調子がよい月には、月間ナンバーワンになることもある。
店では気にしていない素振りをしているけれど、やっぱり順位があると燃えるものだ。
だから心の中では、こっそりと年間ナンバーワンを目指している。
少しでも多くの顧客を持ち、少しでも多く売り上げたい。
そのためにこうして道に立ち、女の子に声をかけるのだ。
もちろん誰でもいいわけじゃない。
条件は2つある。
1つは黄瀬の好みであること。
それなりにストライクゾーンは広いが、できればまぁまぁかわいくて髪が長くて胸が大きい子がいい。
2つめは、それなりにお金がかかった身なりをしていることだ。
単なるナンパを装って声をかけるけど、客になってもらわなければならない。
ならばそこそこの財力がなければ、話にならないのだ。
店で盛大に飲み食いしてもらっても、会計ができなければ、それは黄瀬の負債になる。
ねぇ、今日これから、時間ある?
黄瀬は狙いを定めたターゲットに近づくと、自信たっぷりな笑顔を見せた。
女の子は足を止めると、明るい茶色に染めた長い髪をかき上げながら、黄瀬を見た。
彼女はスタイルがよく、それを強調するように身体のラインを強調した服を着ている。
胸が小さいのと、メイクが濃すぎるのは減点だが、身に着けているものがそれを上回った。
プラダのワンピースと、シャネルのバック。アクセサリーはティファニーだ。
金回りのよさは、多少の減点をすべて帳消しにしてくれる。
今日?別にいいけど。
ジロジロと無遠慮に黄瀬を見ていた女は、ニッコリと笑顔になった。
黄瀬が女を値踏みしていたように、女も黄瀬を値踏みしていたのだ。
そしてどうやら合格らしい。
女は「ごはん、おごって」と言いながら、黄瀬の腕に自分の腕を絡ませてきた。
黄瀬は「いいよ、何食べたい?」と軽い口調で応じた。
えぇ、えぇ、メシくらいいくらでもおごってやるよ。
黄瀬は明るい笑顔を見せたまま、内心では毒づいていた。
今日のところは食事して、いい雰囲気になったら自分がホストであることを明かす。
そして「今日はタダでいいから」と言って、店に誘うのだ。
そうして自分の虜にして、その後は店に通ってもらう。
その後、落としてくれる金を考えたら、今日の出費など安い初期投資だ。
黄瀬は女と腕を組みながら、雑踏の中へと歩き出す。
その途端、反対側から歩いてきた人物と肩がぶつかった。
そして耳元で「すみません」と男の声が聞こえる。
だが黄瀬が「こちらこそ」とそちらを向き直った時には、それらしい人物はもういなかった。
何しろ繁華街なので、人はやたらに行き交っているのだけれど、みな足を止めずに行ってしまう。
足を止めているのは、黄瀬に見惚れている女の子が何人かだけだ。
だがその中にぶつかった人物がいないのは明白だった。
だってさっき「すみません」と告げた声は、男だったのだから。
気のせいかな?誰かにぶつかった気がしたんだけど。
黄瀬は何だか化かされたような気分で、首を傾げる。
だが腕にぶら下がっている女に「早く行こうよぉ」と急かされたので、そのまま歩き出した。
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