正直言って、困ってます

「お久しぶりです。高尾君」
礼儀正しく挨拶をする黒子の手には、何とも似つかわしくないものがある。
それを見た高尾は思わず「あ~」と声を上げていた。

今日は誠凛高校と対秀徳高校の、練習試合の日。
初対戦から約1年、緑間や黒子が2年生になってから初の対戦だ。
場所は秀徳高校の体育館。
高尾和成はワクワクする気持ちを押さえながら、誠凛高校の面々を待っていた。
昨年、誠凛との対戦成績は、合宿等でやったミニゲームなどを入れれば勝ち越している。
だが公式戦だけ見れば、負け越しだ。
2年になって初のこの試合は、絶対に負けたくない。

公式戦ではないのに、いくつかの学校が観戦に来ている。
おのずとテンションが上がり、早く試合がしたいと叫びそうになった瞬間、誠凛が現れた。
久しぶりに見る彼らに、懐かしさがこみ上げる。
だが一番の因縁の相手である黒子テツヤを見た瞬間、高尾は「うお!」と声を上げていた。
目が合った黒子は、ツカツカとこちらに向かって歩いて来た。

「お久しぶりです。高尾君」
礼儀正しく挨拶をする黒子の手にあったのは、信楽焼のタヌキだった。
高尾はそれに見覚えがある。
相棒である緑間真太郎の私物だ。
それを見た高尾は思わず「あ~」と声を上げていた。

「それってもしかして」
高尾は事情をほぼ理解していたが、念のために聞いた。
案の定、黒子は「先程、緑間君にいただきました」と答える。
予想通りだ。

緑間と同じチームになった高尾には、日課が1つ増えていた。
それは「おは朝占い」のチェックだ。
そして今日の「おは朝占い」によると、黒子のみずがめ座は最悪。
運気を上げるラッキーアイテムが、信楽焼のタヌキなのだ。
つまり緑間は、黒子のためにわざわざこれを持って来たのだろう。
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