物書き青年と影の薄い少年

物書きをしてます。
有名じゃないですけど、何とか食べてます。
職業を聞かれると、そう答えているけど、本当はそんなカッコいいもんじゃない。
オレはマイナーなフリーペーパーで毒にも薬にもならない記事を書いているライター。
実際はそれだけじゃ暮らせなくて、バイトの方が主な収入源だ。

それでもいつか面白いものを書きたいと思っている。
そんなオレの趣味は人間観察だ。
暇な時間があれば街に出て、風景を眺める。
そしてこれと思う人間がいれば、ずっとそいつを眺めている。
うまくすれば、いいネタになるからな。

そんなオレが今日、見ていたのはバスケットボール。
ビルの谷間の公園には、バスケのゴールがあって、少し前にはストバスを楽しむ若者が多かった。
今はさすがに寒いから、めっきり人は減ったけどな。
そんな場所で、熱心に練習するバスケ少年たちを見つけたのだ。

最初に目に留まったのは、妙に迫力のある少年だった。
彼の第一印象は「青」。
髪の色とか何となく青味がかってて、来ているダウンジャケットも青。
それよりも、少年って言っていいのかな。
背が高くて、目付きが悪くて、すごい威圧感がある男。
おそらく10代だろうけど、オレなんか一撃で踏みつぶされそうだ。
きっとケンカも強いんだろうな。
とにかくあんまりお友だちになれそうもないタイプだ。

だがゴールにシュートを撃つのは、彼ではなかった。
彼とは対照的に小柄で、何だか妙に影の薄い少年が、もっぱらボールを放っている。
どうやら青い少年が、シュートを教えているらしい。

最初は何かのイジメかと思った。
身体が弱い少年に無理矢理バスケをやらせるとか、そんな感じの。
でもよくよく2人を見ていると、そうでもないらしいんだとわかった。
青い少年は「肩に力、入ってんぞ」とか「雑になってる。よく狙え」とか言ってる。
上っ面だけでなくて、本気で教えようとしてるんだ。

青い少年はお手本のつもりか、時々自分でシュートを撃ってみせた。
それがまた驚くほど上手いんだ。
ちゃんとしたシュートの構えになってなくても、吸い込まれるように入る。
まるでゴミ箱にゴミを放り込むみたいに、ポイッと入るんだ。

それに比べると影の薄い少年、シュートが下手だ。
成功率は、2、3回に1回というところか。
それでも飽きることなく、2人はシュート練習を続けていた。
そしてオレはそんな2人に訳も分からないままに惹かれて、ずっと彼らを盗み見ていた。
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