黒子テツヤとキセキな異世界
ここが異世界ですか。
黒子は目の前に広がる景色を見渡した。
RPG風の街並みは、日本人がイメージする典型的な異世界だった。
さぁ、行こう。
黒子はゆっくりと歩き出した。
異世界なんて、本や漫画でしか知らない。
だけど中世ヨーロッパの田舎のような景色は、想像の範疇だった。
初めてなのにどこかで見たような風景は、とても美しい。
まずは何をすべきだろうか?
黒子はかつて読んだ異世界小説や漫画の記憶を辿った。
とりあえず何で身を立てるか、決めるべきだろう。
定番は冒険者になること?
それともこの世界にはない日本の知識を利用して、収入を得る?
そこまで考えた黒子は「あ」と思いついた。
異世界なら「ステータス」ってやつがあるはずだ。
自分のレベルや能力を数値で見られるアレ。
なんなら自分だけの固有スキルもあるかもしれない。
この先どうするかは、自分の適性を見てからでも遅くないだろう。
ステータス、オープン。
黒子が静かに唱えると、目のまえにウィンドウが開いた。
表示されたのは名前と年齢、そして現在の自分の能力だ。
黒子は心の中で、それを読み上げる。
レベル1、体力10、魔力50、攻撃力0、防御力80、俊敏性20。
正直のところすごいのか、すごくないのか、よくわからない。
だけどレベル1ってことは、あまりすごくないのだろう。
断言できるのは、攻撃より守備の方が向いているらしい。
そんなことを思いながら、スキルを見た黒子は「えええ~?」と文句を言った。
スキル:ファントム。
一番下にそう書かれていたのだ。
よくわからないけれど、なじみ深い言葉だ。
半目になりながら文字に触れると、詳細が出た。
ファントム。
周りの人に気配を悟られない能力。
人知れず移動したり、攻撃や魔法を仕掛けることが可能。
それを見た黒子は無言のまま、装着していたVRゴーグルを外した。
先程まで見えていた異世界が消え、見慣れた自分の部屋に変わる。
思わず「ハァァ」とため息をついた。
最初に付与されたスキルが、本来の自分と全然変わらないなんて。
せっかく異世界転生気分を味わえるゲームだというのに、やる気が失せた。
黒子はもう1度ため息をつくと、文庫本を開いた。
やっぱりいつものスタイルの方が落ち着く。
こうして黒子の短い短い異世界物語が終わったのだった。
【終】
黒子は目の前に広がる景色を見渡した。
RPG風の街並みは、日本人がイメージする典型的な異世界だった。
さぁ、行こう。
黒子はゆっくりと歩き出した。
異世界なんて、本や漫画でしか知らない。
だけど中世ヨーロッパの田舎のような景色は、想像の範疇だった。
初めてなのにどこかで見たような風景は、とても美しい。
まずは何をすべきだろうか?
黒子はかつて読んだ異世界小説や漫画の記憶を辿った。
とりあえず何で身を立てるか、決めるべきだろう。
定番は冒険者になること?
それともこの世界にはない日本の知識を利用して、収入を得る?
そこまで考えた黒子は「あ」と思いついた。
異世界なら「ステータス」ってやつがあるはずだ。
自分のレベルや能力を数値で見られるアレ。
なんなら自分だけの固有スキルもあるかもしれない。
この先どうするかは、自分の適性を見てからでも遅くないだろう。
ステータス、オープン。
黒子が静かに唱えると、目のまえにウィンドウが開いた。
表示されたのは名前と年齢、そして現在の自分の能力だ。
黒子は心の中で、それを読み上げる。
レベル1、体力10、魔力50、攻撃力0、防御力80、俊敏性20。
正直のところすごいのか、すごくないのか、よくわからない。
だけどレベル1ってことは、あまりすごくないのだろう。
断言できるのは、攻撃より守備の方が向いているらしい。
そんなことを思いながら、スキルを見た黒子は「えええ~?」と文句を言った。
スキル:ファントム。
一番下にそう書かれていたのだ。
よくわからないけれど、なじみ深い言葉だ。
半目になりながら文字に触れると、詳細が出た。
ファントム。
周りの人に気配を悟られない能力。
人知れず移動したり、攻撃や魔法を仕掛けることが可能。
それを見た黒子は無言のまま、装着していたVRゴーグルを外した。
先程まで見えていた異世界が消え、見慣れた自分の部屋に変わる。
思わず「ハァァ」とため息をついた。
最初に付与されたスキルが、本来の自分と全然変わらないなんて。
せっかく異世界転生気分を味わえるゲームだというのに、やる気が失せた。
黒子はもう1度ため息をつくと、文庫本を開いた。
やっぱりいつものスタイルの方が落ち着く。
こうして黒子の短い短い異世界物語が終わったのだった。
【終】
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