絶対黄瀬に捕まるな!
あれは、黒子?
笠松は数人の女生徒の輪の中にいる少年を見て、首を傾げた。
海常高校3年の笠松幸男は、のんびりした日々を持て余していた。
ウィンターカップの後、下級生たちにすべてを託して部を引退した。
進学先はとっくにバスケ推薦で、決まっている。
あとは卒業までの3ヶ月を、ゆっくりと過ごすだけだ。
本当は今まで同様、練習漬けの日々を送りたいとも思う。
だが部に頻繁に顔を出せば、後輩たちに気を使わせてしまうだろう。
進学先の大学のバスケ部は早めの練習参加を認めてくれているが、海常高校からは少々遠い。
だから笠松は身体がなまらない程度に自主トレをしながら、じっと卒業を待っていた。
放課後、今日はまっすぐ帰ろうと教室を出た笠松は、廊下の窓から校庭を見下ろした。
これが最近の笠松の日課になっている。
基本的にインドアでの練習が多いバスケ部だが、校庭でトレーニングすることだって少なくなかった。
その校庭とももうすぐお別れ。
名残惜しい気分を味わいながら、下校するのだ。
だが今日は違った。
校門近くのところで10人程の女生徒が輪になっているのが、見えた。
そしてその中心にいるのは、海常のものではない制服姿の小柄な男子生徒だ。
どこかで見たような。
じっと目を凝らしてしばらくその男子生徒を凝視した笠松は、特徴のある髪色を見て「あれ?」と思う。
あれは、黒子?
笠松は数人の女生徒の輪の中にいる少年を見て、首を傾げた。
黒子だけでなく、誠凛高校のバスケ部員が海常高校に来るのはさほど珍しいことではない。
一番多いのは、データの交換だ。
誠凛は東京、海常は神奈川なので、地区予選で対戦する高校は異なる。
そして例えば海常が東京の高校と練習試合を組む場合、直近の試合のデータがなかったりする。
そういう時、誠凛に対戦データがあれば借り受けることがあるのだ。
逆に誠凛に神奈川の学校のデータを貸したりすることもある。
だから黒子が海常高校の校庭にいることは、さほど不思議ではない。
だが海常の女子生徒に囲まれているという事態は、妙だった。
しかも女子生徒たちは、バスケ部員でもない。
だがその顔ぶれを見た時に、笠松は「なるほど」と思った。
彼女たちの顔には見覚えがある。
たしか黄瀬のファンで、よくバスケ部の練習を覗いていた者たちだ。
女子生徒たちが、何か紙切れのようなものを、黒子に渡そうとしている。
おそらくは手紙か、携帯番号を書いたメモだろう。
だが黒子は何度も首を振って、それを受け取ろうとしない。
押し問答のような状態になっているのだった。
そのうちに女子生徒の1人が、黒子の肩を思い切り手で突いた。
突き飛ばされた黒子の足が、よろめいた。
これはさすがにまずいのではないか。
笠松は急いで廊下を抜けると、校庭に走り出た。
笠松は数人の女生徒の輪の中にいる少年を見て、首を傾げた。
海常高校3年の笠松幸男は、のんびりした日々を持て余していた。
ウィンターカップの後、下級生たちにすべてを託して部を引退した。
進学先はとっくにバスケ推薦で、決まっている。
あとは卒業までの3ヶ月を、ゆっくりと過ごすだけだ。
本当は今まで同様、練習漬けの日々を送りたいとも思う。
だが部に頻繁に顔を出せば、後輩たちに気を使わせてしまうだろう。
進学先の大学のバスケ部は早めの練習参加を認めてくれているが、海常高校からは少々遠い。
だから笠松は身体がなまらない程度に自主トレをしながら、じっと卒業を待っていた。
放課後、今日はまっすぐ帰ろうと教室を出た笠松は、廊下の窓から校庭を見下ろした。
これが最近の笠松の日課になっている。
基本的にインドアでの練習が多いバスケ部だが、校庭でトレーニングすることだって少なくなかった。
その校庭とももうすぐお別れ。
名残惜しい気分を味わいながら、下校するのだ。
だが今日は違った。
校門近くのところで10人程の女生徒が輪になっているのが、見えた。
そしてその中心にいるのは、海常のものではない制服姿の小柄な男子生徒だ。
どこかで見たような。
じっと目を凝らしてしばらくその男子生徒を凝視した笠松は、特徴のある髪色を見て「あれ?」と思う。
あれは、黒子?
笠松は数人の女生徒の輪の中にいる少年を見て、首を傾げた。
黒子だけでなく、誠凛高校のバスケ部員が海常高校に来るのはさほど珍しいことではない。
一番多いのは、データの交換だ。
誠凛は東京、海常は神奈川なので、地区予選で対戦する高校は異なる。
そして例えば海常が東京の高校と練習試合を組む場合、直近の試合のデータがなかったりする。
そういう時、誠凛に対戦データがあれば借り受けることがあるのだ。
逆に誠凛に神奈川の学校のデータを貸したりすることもある。
だから黒子が海常高校の校庭にいることは、さほど不思議ではない。
だが海常の女子生徒に囲まれているという事態は、妙だった。
しかも女子生徒たちは、バスケ部員でもない。
だがその顔ぶれを見た時に、笠松は「なるほど」と思った。
彼女たちの顔には見覚えがある。
たしか黄瀬のファンで、よくバスケ部の練習を覗いていた者たちだ。
女子生徒たちが、何か紙切れのようなものを、黒子に渡そうとしている。
おそらくは手紙か、携帯番号を書いたメモだろう。
だが黒子は何度も首を振って、それを受け取ろうとしない。
押し問答のような状態になっているのだった。
そのうちに女子生徒の1人が、黒子の肩を思い切り手で突いた。
突き飛ばされた黒子の足が、よろめいた。
これはさすがにまずいのではないか。
笠松は急いで廊下を抜けると、校庭に走り出た。
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