この身長差は保ちたい

あれ?
伊月は今日に限って、何かが違うことに気が付いた。
だけどそれが何なのかが、どうしてもわからなかった。

誠凛高校バスケ部の面々は、今日も練習に励んでいた。
ウィンターカップが終わっても、のんびりするということはない。
まだまだ上を目指すのだ。
そのために日々、努力を怠らない。

今日は主に連係プレイの確認をした。
特に誠凛の持ち味は、パスワークを主体としたチームバスケット。
そのために連係の確認は、念入りにやる。
PGの伊月は、この連係の起点となる。
だから伊月は鷲の目(イーグルアイ)を駆使して、他の選手を見る。
それはまったくいつも通りのことだったはずなのに。

あれ?
伊月は今日に限って、何かが違うことに気が付いた。
だけどそれが何なのかが、どうしてもわからなかった。
今まで試合でも練習でも、何度もやったフォーメーションなのに。
この違和感はいったい何だ?

だが原因が誰なのかは、はっきりわかる。
バスケ部の中では一番小柄で、影の薄い1年生。
黒子の動きが、微妙にいつもと違うのだ。
何がどう違うのかはわからないが。

「10分休憩!」
一通りフォーメーションを確認した後、リコがホイッスルを吹いて、号令をかけた。
伊月は日向をつかまえて「今の連係、ちょっと変じゃなかった?」と聞いてみる。
だが日向は「そうか?」と首を振る。
この会話を聞いた他の部員も、キョトンとした顔をしている。
どうやらこの違和感を感じたのは、伊月だけなのか。

だが黒子だけは困ったような表情をしている。
どうやら心当たりがあるようだ。
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