オレにも雪かき、やらせろよ

「黒子、代わろう。」
木吉は、黒子の手からスコップを取り上げようとする。
だが黒子は「結構です」と答えて、手を離そうとしなかった。

土曜日に降った大雪は、日曜日の晴天にも関わらず、消えなかった。
そして月曜日、部室から体育館へ続く道は、足首まで埋まる積雪が残っていた。
バスケ部員たちは練習の前にまずスコップを手に取った。
体育館から部室の間は昼間でも建物の影になっており、雪はいつまでも残っているだろう。
部活の度に転倒の危険に晒されるよりは、雪かきをした方がいい。

遅れて部活に現れた木吉は、雪かきをする部員たちを見ながら苦笑した。
全員、スコップの使い方が下手だったからだ。
木吉の家は祖父母も住んでいる古い木造家屋であるせいで、庭仕事の手伝いもよくさせられる。
年に何回か、雪が降れば雪かきもするし、スコップの扱いも慣れていた。
だが部員たちはそうでもないようだ。
そして中でも一番危なっかしいのが黒子だった。
小さな身体をよたよたさせながら、必死に雪を掻いている。

「黒子、代わろう。」
木吉は、黒子の手からスコップを取り上げようとする。
雪かきは重労働なのだ。
バスケ部の中で一番体力がない黒子では、部活の前にへとへとになりそうだ。
だが黒子は「結構です」と答えて、手を離そうとしなかった。

「センパイこそすっこんでて下さい。膝の怪我に悪いですよ。」
「慣れてるから大丈夫だ。」
「特別扱いは嫌なんです。」
黒子はきっぱりと言い放った。
思いのほか強い拒絶に、木吉が思わず怯む。
2人の間の空気が、微妙に重くなった。

「すみません。実は」
黒子は沈黙を破るように、詫びる。
そしてポツポツと昔の思い出を語り始めた。
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