最初から勝ち目なんかなかった
「オレと付き合ってくれないか?」
本当なら、すごく嬉しいその告白だった。
この人のことは大好きだ。
だけどボクには、その申し出を受ける資格はない。
1年先輩のこの人は、今日、誠凛高校を卒業する。
ボクたちは卒業式の後、他に誰もいない部室にいた。
妙に大人びた風貌のこの人の制服姿を見るのは、今日で最後。
必死に涙腺の決壊を堪えていたボクに、この人はあろうことか恋の告白をしたのだ。
「無理です。」
ボクは必死に声に感情を込めないようにして、そう答えた。
そうしなければ、この人への恋心が零れ落ちてしまいそうだから。
一瞬「どこへ?」なんてお約束のボケをしようかと思ったけど、さすがにそれはやめた。
だって真剣に告白してくれたんだ。
茶化したり、誤魔化したりするようなことはできない。
「・・・即答だな。考える余地はないのか?」
「まったくないです。すみません。」
静かな部室に響く、大きなため息。
ああ、申し訳ない。
ボクなんかのために、この人につらい思いをさせている。
「わかった。悪かった。元気でな、黒子。」
心優しい人が、ボクの肩をポンと優しく叩く。
だがすぐに背を向けてしまった。
そのままこちらを振り向かずに、手を振りながら部室を出て行く。
ドアがパタンと閉まられた瞬間、ボクはその場にガクンと膝をついた。
ああ、たまらない。
ひょっとしたら、もう2度と会わないのかもしれない。
あの人の記憶の最後のボクは、きっと冷たいヤツだろう。
そう思ったら、もう止まらない。
ボクは奥歯を噛みしめながら、両手で口を押さえた。
ここから遠ざかるあの人に声を聴かれてはならない。
だけどこっそり涙を零すくらいなら、多分罰は当たらない。
木吉センパイ。
ボクは心の中であの人の名前を叫びながら、声を殺して泣いた。
本当なら、すごく嬉しいその告白だった。
この人のことは大好きだ。
だけどボクには、その申し出を受ける資格はない。
1年先輩のこの人は、今日、誠凛高校を卒業する。
ボクたちは卒業式の後、他に誰もいない部室にいた。
妙に大人びた風貌のこの人の制服姿を見るのは、今日で最後。
必死に涙腺の決壊を堪えていたボクに、この人はあろうことか恋の告白をしたのだ。
「無理です。」
ボクは必死に声に感情を込めないようにして、そう答えた。
そうしなければ、この人への恋心が零れ落ちてしまいそうだから。
一瞬「どこへ?」なんてお約束のボケをしようかと思ったけど、さすがにそれはやめた。
だって真剣に告白してくれたんだ。
茶化したり、誤魔化したりするようなことはできない。
「・・・即答だな。考える余地はないのか?」
「まったくないです。すみません。」
静かな部室に響く、大きなため息。
ああ、申し訳ない。
ボクなんかのために、この人につらい思いをさせている。
「わかった。悪かった。元気でな、黒子。」
心優しい人が、ボクの肩をポンと優しく叩く。
だがすぐに背を向けてしまった。
そのままこちらを振り向かずに、手を振りながら部室を出て行く。
ドアがパタンと閉まられた瞬間、ボクはその場にガクンと膝をついた。
ああ、たまらない。
ひょっとしたら、もう2度と会わないのかもしれない。
あの人の記憶の最後のボクは、きっと冷たいヤツだろう。
そう思ったら、もう止まらない。
ボクは奥歯を噛みしめながら、両手で口を押さえた。
ここから遠ざかるあの人に声を聴かれてはならない。
だけどこっそり涙を零すくらいなら、多分罰は当たらない。
木吉センパイ。
ボクは心の中であの人の名前を叫びながら、声を殺して泣いた。
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