全然守れていない

「おい、黒子!」
木吉は思わず大声をあげていた。
その声に驚いた他の部員たちが、一斉に木吉を見た。
当の黒子もキョトンとした目で、木吉を見上げている。

それは本当に偶然だった。
放課後の部活、木吉鉄平は一番最後に部室に現れた。
ドアを開けた瞬間、他の部員たちは制服から練習着に着替えている最中だった。
その時にちょうど見えたのだ。
1年生の黒子テツヤが制服のシャツを脱いだ瞬間の、裸の背中が。

「ちょっと黒子。背中を見せろ!」
練習着に着替えた黒子は、怪訝そうな顔で「え?」と声を上げた。
木吉はお構いなしに黒子の肩に手をかけて、方向を反転させる。
そして練習着をめくり上げて、背中を露わにした。

「え!?」
木吉の剣幕に驚き、事の成り行きを見ていた部員たちが声を上げる。
黒子の背中には、大きな痣ができていた。
男子生徒にしては白くて肌理の細かい肌に浮かんだ痛々しい赤紫色の内出血。
だが当の黒子は気づいていないようで「何ですか?」と呑気な声をあげている。

「痛くないのか?」
木吉はそう聞いてみたが、黒子は「別に何ともないですが」と答える。
だが痣の部分を指で押すと、黒子は「痛!」と声を上げた。
どうやら強く触らなければ痛くないようで、だから全然気付かなかったのだろう。

「転んだか何かしたか?」
「いいえ、覚えがありません。」
木吉の問いに、黒子も首を傾げている。
だが次の瞬間、木吉の脳裏に閃くものがあった。
多分間違いない。
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