正月は、ずっと

お正月は、ずっと家で読みたかった本を読んで過ごします。
相棒である影は、そう言っていた。

ウィンターカップが終わってすぐ、火神大我は渡米していた。
ずっと1人暮らしだから、せめて年末年始は親と過ごそうと思っていた。
だが仕事の都合で、父親は日本に帰れそうにない。
ならば学生で、時間に自由がきく自分が行くべきだろう。
そこに特に何の疑問も感じることはない。
ウィンターカップの余韻を楽しむ暇もなく、火神はアメリカに向かったのだった。

アメリカには懐かしいバスケ仲間もいる。
久し振りに彼らとプレイするのは、すごく楽しい。
だが今回は、どこか妙だった。
奇妙な違和感を感じ、日が経つにつれて、それはどんどん膨らんでいく。
楽しいことは間違いないのに、何かが足りない気がするのだ。

そろそろ年が変わるという頃、火神はその正体に気付いた。
バスケ仲間はたくさんいるが、あの魔法のようなパスをくれるヤツはいない。
そうか、足りない気がするのは、寂しいのか。
はっきりとそれがわかった瞬間、火神は相棒のことばかり考えていた。

お正月は、ずっと家で読みたかった本を読んで過ごします。
相棒である影は、そう言っていた。
きっと火神のことなど忘れて、楽しくやっているのだろう。
だけど何だか無性に会いたい。
2人でバスケをして、あのやわらかい髪に触りたい。

火神は年が変わるのを待たずに、飛行機に飛び乗った。
これなら日本時間で、元日の午後には帰れる。
相棒にも予定もあるだろうし、会えるなんて保証はない。
それでも少しでも早く帰りたい。

自宅に戻った火神は荷物を置くと、着替えもしないでボールを手に取った。
そして携帯電話を開いて、メールを1つ送信する。

今、帰った。
これからストバスのコートに行く。
一緒にバスケしないか?
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