黒子が欲しい

「黒子---!!」
体育館の扉が開き、大きな声が響いた。
早朝まだ眠気が残る身体でウォーミングアップしていた一同は、完全に度肝を抜かれた。

ここは誠凛高校の体育館。
バスケ部の面々は授業前の部活、いわゆる朝練に勤しんでいた。
だが開始早々に場違いな男が現れた。
早朝とは思えぬテンションで声を張り上げたのは、緑間真太郎。
かの「キセキ」の世代のNo.1シューターだ。

大きな声で一瞬怯んだ一同は、次の瞬間にもっともな疑問を持つ。
なぜコイツがここに現れるのか。
もし用事があるのなら、電話だってメールだってある。
わざわざこんな早朝に、他校に現れる理由は何なのか。
しかも今日は平日で、普通に授業がある日なのだ。

「おはようございます。緑間君。」
緑間に大声で呼ばれた黒子は、律儀に挨拶した。
そして監督である相田リコの方に向き直る。

「少しだけ、緑間君と話をしてきていいですか?」
黒子の言葉に、リコは首を傾げた。
部活中に練習を中断するのは、好ましいことではない。
だが緑間の様子を見てみると、かなり切羽詰まった様子が見て取れる。
そもそも早朝に押しかけてくるなんて、余程のことだろう。

「わかったわ。少しだけなら」
リコがそう言うと、黒子が「すみません」と頭を下げた。
待ち構えていた緑間が「早くするのだよ」と黒子を急かす。
黒子は「せっかちですね」と文句を言いながら、緑間の後を追っていった。
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