あんな使い方もあったのか

「あらら、面白いことやってる。」
誠凛高校バスケットボール部の監督と主将は、思わず顔を見合わせた。

2年C組、つまり相田リコと日向順平のクラスは、数学の抜き打ちテストだった。
さっさと解答を書き終えた2人は教室を出たのだ。
成績優秀なリコは、サクッと問題が解けたから。
そこそこの日向は何問かは解けたが、わからない問題はさっさと見切りをつけた。
とにかく教室を出た2人は、何とはなしに体育館に向かった。

あわよくば練習しようと思ったが、体育館はふさがっていた。
どこかのクラスが体育の授業で、バレーボールをしている。
仕方ない、部室で新しい練習メニューでも練ろう。
2人はそっとその場を去ろうとする。
だがすぐにコートの中央で悪目立ちしている大柄な男子生徒を見て、顔を見合わせた。
バスケ部期待の1年、火神大我だ。
つまりこれは誠凛バスケ部、注目の1年コンビのクラスなのだ。

「あらら、面白いことやってる。」
リコはすかさずそう呟くと、体育館の隅のドアへ向かった。
この中の階段を上がると、2階の張り出した通路部分に出られる。
つまり特等席で、彼らのプレイを見るためだ。

「一応授業中なのに、いいのかよ。」
日向も文句を言いながら、後に続いた。
授業をサボったわけではなく、ちゃんと了解を得て教室を出ている。
それに日向だって興味がないわけじゃない。
部員の身体能力を常にチェックするリコにとっても、いいデータになるのだろう。

かくして2人はコートの上方の特等席に陣取った。
バスケで活躍する2人だが、バレーではどうなるのか興味津々だ。
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