平成から令和へ
「どうだ?これ!」
火神は帰宅した黒子に意気揚々Tシャツの柄を見せた。
驚いたように固まっている黒子の顔が愉快だった。
もうすぐ元号が変わる。
だから街はなんとなくお祭りムードだ。
デパートやスーパーなどでは「改元セール」なるものをやっている。
また元号が入った限定商品も店頭やネットでよく見かけるようになった。
火神にしてみれば、どうにも理解できない。
幼少期をアメリカで過ごした火神は、元号を使うことがなかったのだ。
誕生日や記念日ももちろん西暦表記。
日々の生活だって、少しも困らない。
だから日本に帰って、年の数え方が2つあることに混乱した。
しかも明確に使い分けの基準があるわけでもない。
ぶっちゃけ、不便なんじゃね?
火神はそう思い、黒子に聞いてみた。
だけど黒子には「全然不便じゃないですよ」と一刀両断された。
「元号は貴重な文化ですよ。中国が発祥ですが、今はもう日本しか使ってないんです。」
「それって、なくても平気ってことだろ?」
「まったく。火神君には日本の美しい伝統が理解できないんですね。」
呆れたようにため息をつかれ、火神としてはムッとする。
だけど黒子に文化と言われれば、そうなのかと思うしかない。
何しろ黒子は本好きで、暇さえあれば本を読んでいる。
きっと火神とはまったく別の感性で元号の存在を受け入れているのだろう。
それに「美しい伝統」と言われれば、少しだけわかる気がした。
平成とか令和とかの漢字表記は、ちょっとカッコいい。
響きも悪くないし、何より目で見てクールだと思うのだ。
そして平成最後の夜のこと。
火神はちょっとしたサプライズを仕掛けた。
テーブルに並ぶのは「平成」や「令和」の文字が入った食べ物が並ぶ。
ワインボトルもしっかり「令和」だ。
極めつけは、Tシャツにも「令和」の文字。
それを着こみ、黒子が帰るなり「どうだ?これ!」と胸を張った。
「・・・令和、ですね。」
しばらく固まった黒子は、すぐに我に返った様子で微妙なリアクションだ。
そしてテーブルの上を見て「うわ」と声を上げる。
相変わらずリアクションが薄く、感情がわかりにくい。
「せっかくだから年越しパーティしようぜ。」
「年越し、じゃないですよ。」
「何でもいいだろ。」
「結局騒げればいいって感じですか。」
「悪いかよ!」
「悪くないです。元号が変わるお祝いなんて一生に一度あるかないかですから。」
「じゃあ、これ」
「え!?」
火神は黒子にも「令和」Tシャツを手渡した。
黒子は珍しく露骨に嫌そうな顔をしたが、火神も引くつもりはない。
「すぐに着ろ」「嫌です」と言い合うこと10分。
だがついに根負けした黒子が着替えたところで、2人きりのパーティ開始だ。
「ダサくないですか?このTシャツ」
「そうかぁ~?」
「しかもペアルック」
「誰も見てねーよ。」
火神は苦笑しながら「乾杯!」とワイングラスを掲げた。
文句ばかり言っているけれど、黒子だって内心満更じゃない。
それがはっきりわかるほど、2人の関係は深いのだ。
「そろそろ令和ですね。」
やがて時計を見上げながら、黒子はポツリとそう呟いた。
そしてワイングラスを掲げると「令和でもよろしくお願いします」と告げる。
いつも素っ気ない男の頬がほんのり赤い。
そのことに気をよくした火神は、ワイングラスをカチンと合わせたのだった。
火神は帰宅した黒子に意気揚々Tシャツの柄を見せた。
驚いたように固まっている黒子の顔が愉快だった。
もうすぐ元号が変わる。
だから街はなんとなくお祭りムードだ。
デパートやスーパーなどでは「改元セール」なるものをやっている。
また元号が入った限定商品も店頭やネットでよく見かけるようになった。
火神にしてみれば、どうにも理解できない。
幼少期をアメリカで過ごした火神は、元号を使うことがなかったのだ。
誕生日や記念日ももちろん西暦表記。
日々の生活だって、少しも困らない。
だから日本に帰って、年の数え方が2つあることに混乱した。
しかも明確に使い分けの基準があるわけでもない。
ぶっちゃけ、不便なんじゃね?
火神はそう思い、黒子に聞いてみた。
だけど黒子には「全然不便じゃないですよ」と一刀両断された。
「元号は貴重な文化ですよ。中国が発祥ですが、今はもう日本しか使ってないんです。」
「それって、なくても平気ってことだろ?」
「まったく。火神君には日本の美しい伝統が理解できないんですね。」
呆れたようにため息をつかれ、火神としてはムッとする。
だけど黒子に文化と言われれば、そうなのかと思うしかない。
何しろ黒子は本好きで、暇さえあれば本を読んでいる。
きっと火神とはまったく別の感性で元号の存在を受け入れているのだろう。
それに「美しい伝統」と言われれば、少しだけわかる気がした。
平成とか令和とかの漢字表記は、ちょっとカッコいい。
響きも悪くないし、何より目で見てクールだと思うのだ。
そして平成最後の夜のこと。
火神はちょっとしたサプライズを仕掛けた。
テーブルに並ぶのは「平成」や「令和」の文字が入った食べ物が並ぶ。
ワインボトルもしっかり「令和」だ。
極めつけは、Tシャツにも「令和」の文字。
それを着こみ、黒子が帰るなり「どうだ?これ!」と胸を張った。
「・・・令和、ですね。」
しばらく固まった黒子は、すぐに我に返った様子で微妙なリアクションだ。
そしてテーブルの上を見て「うわ」と声を上げる。
相変わらずリアクションが薄く、感情がわかりにくい。
「せっかくだから年越しパーティしようぜ。」
「年越し、じゃないですよ。」
「何でもいいだろ。」
「結局騒げればいいって感じですか。」
「悪いかよ!」
「悪くないです。元号が変わるお祝いなんて一生に一度あるかないかですから。」
「じゃあ、これ」
「え!?」
火神は黒子にも「令和」Tシャツを手渡した。
黒子は珍しく露骨に嫌そうな顔をしたが、火神も引くつもりはない。
「すぐに着ろ」「嫌です」と言い合うこと10分。
だがついに根負けした黒子が着替えたところで、2人きりのパーティ開始だ。
「ダサくないですか?このTシャツ」
「そうかぁ~?」
「しかもペアルック」
「誰も見てねーよ。」
火神は苦笑しながら「乾杯!」とワイングラスを掲げた。
文句ばかり言っているけれど、黒子だって内心満更じゃない。
それがはっきりわかるほど、2人の関係は深いのだ。
「そろそろ令和ですね。」
やがて時計を見上げながら、黒子はポツリとそう呟いた。
そしてワイングラスを掲げると「令和でもよろしくお願いします」と告げる。
いつも素っ気ない男の頬がほんのり赤い。
そのことに気をよくした火神は、ワイングラスをカチンと合わせたのだった。
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