宇宙バスケ
それ、面白いか?
火神の問いに、黒子は画面を見つめたまま「はい」と答えた。
黒子はじっと画面を凝視していた。
見ているのは、最近人気のバスケ漫画をアニメ化したお話だ。
火神は毎週必ず放送をチェックする黒子に驚いている。
いつも文庫本で小説ばかり読んでいる黒子に、アニメのイメージがないからだろう。
こういうのも何かの役に立つかもしれないでしょう?
黒子はそう答えたが、本心ではなかった。
単純にこのバスケ漫画が好きなのだ。
主人公はウィンターカップ優勝を目指す、バスケが好きな高校生。
それだけでもう、全力で感情移入ができるではないか。
でも火神はバスケ好きでも、バスケ漫画にはあまり興味がないようだ。
だからいつもこうして、テレビを見る黒子を見ている。
ちなみにアニメは現在、佳境に入っている。
ウィンターカップの決勝戦、第4クォーター。
主人公のチームのエースがゾーンに入った途端、画面は過剰な演出になった。
体育館の中だというのに、急に暗くなり、色とりどりの光が走る。
そしてプレイヤーが投げたり、ドリブルしたりするたびに、ボールからも閃光が迸るのだ。
さながら異次元空間。とてもバスケの試合には見えない。
ゾーンに入ると、こんな風に見えるものなんですか?
黒子は火神にそう聞いた。
すると火神は「そうだな。こんな感じ」と答える。
それを聞いた黒子は、一瞬だけ呆然とした後「マジですか」と呟く。
一応質問の形だったが、冗談のつもりだった。
まさか真面目な顔で肯定されるとは、思ってもみなかった。
天才って、何だかムカつきますね。
黒子は冷やかにそう告げると、再び画面を見た。
画面ではパスの軌道が、光の筋となって描かれている。
さながら宇宙空間を走る彗星のようだ。
火神だけでなく、青峰や赤司たちもゾーンに入れるものはこの景色が見えるのか。
凡人では一生見ることのできない、異次元の宇宙バスケが。
そんな風に考えると、何だか腹が立つ。
何か言ったか?
火神はそんな黒子の気持ちなど知らず、不思議そうに首を傾げている。
黒子は冷やかに「今いいトコなんで、少し黙っててください」と告げた。
天才に少しくらい八つ当たりしたって、きっとバチは当たらないはずだ。
【終】
火神の問いに、黒子は画面を見つめたまま「はい」と答えた。
黒子はじっと画面を凝視していた。
見ているのは、最近人気のバスケ漫画をアニメ化したお話だ。
火神は毎週必ず放送をチェックする黒子に驚いている。
いつも文庫本で小説ばかり読んでいる黒子に、アニメのイメージがないからだろう。
こういうのも何かの役に立つかもしれないでしょう?
黒子はそう答えたが、本心ではなかった。
単純にこのバスケ漫画が好きなのだ。
主人公はウィンターカップ優勝を目指す、バスケが好きな高校生。
それだけでもう、全力で感情移入ができるではないか。
でも火神はバスケ好きでも、バスケ漫画にはあまり興味がないようだ。
だからいつもこうして、テレビを見る黒子を見ている。
ちなみにアニメは現在、佳境に入っている。
ウィンターカップの決勝戦、第4クォーター。
主人公のチームのエースがゾーンに入った途端、画面は過剰な演出になった。
体育館の中だというのに、急に暗くなり、色とりどりの光が走る。
そしてプレイヤーが投げたり、ドリブルしたりするたびに、ボールからも閃光が迸るのだ。
さながら異次元空間。とてもバスケの試合には見えない。
ゾーンに入ると、こんな風に見えるものなんですか?
黒子は火神にそう聞いた。
すると火神は「そうだな。こんな感じ」と答える。
それを聞いた黒子は、一瞬だけ呆然とした後「マジですか」と呟く。
一応質問の形だったが、冗談のつもりだった。
まさか真面目な顔で肯定されるとは、思ってもみなかった。
天才って、何だかムカつきますね。
黒子は冷やかにそう告げると、再び画面を見た。
画面ではパスの軌道が、光の筋となって描かれている。
さながら宇宙空間を走る彗星のようだ。
火神だけでなく、青峰や赤司たちもゾーンに入れるものはこの景色が見えるのか。
凡人では一生見ることのできない、異次元の宇宙バスケが。
そんな風に考えると、何だか腹が立つ。
何か言ったか?
火神はそんな黒子の気持ちなど知らず、不思議そうに首を傾げている。
黒子は冷やかに「今いいトコなんで、少し黙っててください」と告げた。
天才に少しくらい八つ当たりしたって、きっとバチは当たらないはずだ。
【終】
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