そばにいたい

「黒子っち、本当に大丈夫っすか!?」
黄瀬が心配そうに声をかける。
その他の「キセキ」の面々も、心配そうに黒子の顔を覗き込んでいた。

アメリカで人気のストバスチーム「ジャパウォック」。
「キセキ」の世代と火神、黒子は彼らと対戦することになった。
急に招集され、試合までの時間は1週間というタイトなスケジュールだ。
それでも何とかできる限りの連携の確認をして、いよいよ試合は明日だ。

だがその日の練習後、黒子が唐突に姿を消した。
この瞬間、火神と黄瀬の脳裏に浮かんだのは、かつての出来事。
黒子はガラの悪い連中に、ケンカを売ったのだ。
今回の対戦相手は、日本人のバスケプレーヤーを「サル」と言い切るゲスな連中だ。
もしかして黒子は、対戦相手にケンカを売りにいったのではあるまいか?

火神と「キセキ」の5人は慌てて「ジャバウォック」が遊んでいるキャバクラに駆けつける。
すると不吉な予想通り、黒子は暴力を振るわれていた。
口から出血し、凶暴なリーダー格の男、ゴールドに髪を掴まれている。
それを見つけた火神はゴールドに殴りかかったが、あっさりと躱されてしまった。

ここで乱闘になってもいいと、火神は思った。
黒子にケガを負わせた相手を許せるはずがない。
だが当の黒子が、乱闘を好まなかった。
自分からケンカを売りに来たくせに「決着はバスケ」がポリシーなのだ。

かくしてキャバクラから引き上げた「キセキ」と黒子、火神は病院にいた。
もちろん黒子のケガの治療だ。
こんな夜中に普通の病院はもう終わっているのだが、このチームには赤司がいる。
おもむろにスマホを取り出し、どこかに電話を1本かけた。
それだけで赤司家かかりつけの病院が時間外の診療を了承し、こうして治療も受けられたのだ。
幸いなことに黒子は、口の中を少し切っただけで、大したケガではなかった。

「黒子っち、本当に大丈夫っすか!?」
黄瀬が心配そうに声をかける。
その他の「キセキ」の面々も、心配そうに黒子の顔を覗き込んでいた。
黒子はいつもの無表情で「平気ですよ」と答える。
火神はそんな元「帝光」メンバーを見ながら、割り込めない雰囲気にイラついていた。
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