ボクの沽券にかかわります

2人きりで過ごす正月。
付き合って何年も経つ黒子と火神だったが、意外にも今年が初めてだった。
早くから親と離れて暮らす火神にとって、正月は数少ない家族と過ごす機会。
黒子だって火神程ではないにしろ、親と顔を合わせる貴重な時間だ。
だから何となくクリスマスに一緒に過ごした後、その次に会うのは年明けになっていた。

それが今年は何の偶然か。
火神の父親は相変わらずアメリカなのだが、仕事の関係で急に帰国しないことになった。
そして黒子の親は旅行券を頂いたとかなんとかで、どこかの温泉に出かけた。
こうして偶然にも2人とも身体が空いたのだ。
そこで火神のマンションで、年を越すことになったのだが。

「お雑煮くらいは作りたいですね。おせちも簡単なセットくらい買いますか?」
黒子は火神にそう聞いた。
大晦日、2人はスーパーに買い出しに来たのだが、信じられないほどの人の多さだ。
通路を歩くのもままならず、のんびりと品物を選ぶような雰囲気でもない。
それならばさっさと決めて、済ませてしまうのがいいだろう。

「火神君のおうちのお雑煮は、関東風ですか?」
「・・・」
「お餅と鶏肉とかまぼこと小松菜くらいでいいですか?あとおせちに絶対欲しいのは何ですか?」
「・・・」
「ボクはかまぼこと伊達巻は絶対欲しいんですが。火神君?」

買うものを早く決めたいのに、火神からまったく反応がない。
黒子は怪訝に思って、首を傾げた。
だが次の瞬間、火神から思いもよらない言葉が飛び出したのだ。
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