買い物だけはまかせられない

まったくこのボンボンが。
黒子は小さく悪態をついた。
隣に立つ火神が「何か言ったか?」と聞き返したが「別に」とスルーした。

とある日曜日、黒子と火神は駅前のスーパーマーケットに買い物に来ていた。
ちなみに数日後からは消費税が増税される。
その前の最後の週末で、街はいつも以上に賑わっている。
だが2人の目的も多くの人たちと同じ、生活必需品を買いだめするためだ。

黒子、豚肉セールだってよ!買いだめしておこうぜ!
火神がスーパーに入るなり、足を止めて声を上げる。
1階は食料品コーナーで、入り口のところにチラシが貼ってある。
そこには「本日のお買い得品、豚肉100グラム88円」と書かれていた。

これからあちこち歩き回るんですよ?今日は暖かいし生鮮食品は傷みます。
そもそもナマモノは買いだめに向きません。
黒子は冷やかにそう言い放つと、さっさとエスカレーターに向かう。
目指すは上の階、日用品の売り場だ。
火神が「待てって」と言いながら、追いかけて来た。

2階に上がった黒子は買い物かごを取ると、シャンプーのコーナーに向かう。
残りがもう少ないのだ。
今回は少し多めに買っておこうと、シャンプーとコンディショナーの詰め替えパックを2つずつ取った。

なぁボディソープは買わねーの?
火神が黒子にそう聞いて来た。
ドラッグストアの方が安いんですよ。忘れたんですか?
黒子はかすかにため息をつきながら、そう答えた。

火神と一緒に暮らすようになって、黒子が驚いたこと。
それは火神の経済観念のなさだった。
1人暮らしが長いくせに、節約という概念があまりないのだ。
黒子と住むまでは、シャンプーだって詰め替え用を買うなんてしていなかった。
食材を買う時もあまり値段を見ておらず、そのときに食べたければ高い食材でも迷わず買う。

あるときふと気になって、高校時代に火神が父親から月々もらっていた生活費の額を聞いて驚いた。
いくら生活費全般とはいえ、学生に渡すような金額ではない。
だが思い当たる節もあった。
マジバでトレイに山盛りのハンバーガーを食べていた火神。
あれは学生の財布にはかなりのダメージを与えるが、火神はそれを週1、2回のペースでやっていた。

まったくこのボンボンが。
黒子は小さく悪態をついた。
隣に立つ火神が「何か言ったか?」と聞き返したが「別に」とスルーした。
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