火神の思うバレンタイン

なぁなぁ、火神と黒子はいくつもらった?
放課後部室に入るなり、2人に詰め寄ってきたのは小金井だ。
何のことを言っているのか、今日が何の日か考えればだいたい推察がつく。
今日はバレンタインデー。
チョコレートをいくつもらったかと聞いているのだ。

誠凛高校バスケ部の面々は、今日かなりモテていた。
さすがにウィンターカップでの活躍がきいているのだろう。
2年生たちは多かれ少なかれ、チョコレートをもらっている。
ちなみに一番多いのは、一見爽やかなイケメンの伊月だった。
次に多いのが日向、そして木吉。
やはり試合に出ているメンバーの方が人気が高いようだ。
降旗、河原、福田の1年生トリオも2年生には及ばないが、いくつかもらっている。

ボクは3個だけです。
黒子は静かにそう答えた。
受け取ったのは母親からと、カントクから部員全員に配られた義理チョコ、そして桃井からの3つだけだ。
それには小金井だけでなく、他の部員たちも「えええ~!?」と驚く。
黒子はウィンターカップでは、かなり活躍したのだ。
いくら影が薄いからと言っても、それなりに興味を持つ女子がいるだろうに。

ボク、女性にはモテないんですよ。
黒子は淡々とそう答えた。
だが実はそれは嘘だった。
教室や廊下で、何となく黒子の方を見ながらソワソワしている女子生徒は何人かいた。
今日という日のことを考えると、チョコレートを渡したいのかなと察しが付く。

黒子は得意の視線誘導で、気配を消しまくった。
それでも自分に近づいてくる女子生徒からは、さりげなく逃げた。
つまり3個しかもらわずに済んだのは、黒子自身の努力によるものだった。

そこまでして避けたのは、簡単な理由だ。
小食な黒子は、そんなにチョコレートをもらっても処理に困るだけなのだ。
食べるのも苦痛だし、別の人にあげるのも何だか申し訳ない。
そもそも好きでもない人からもらっても仕方ないと思っている。
それなら最初からもらわなければいいだけだ。

もしかしてバレンタインって、女から男にチョコをやる日なのか。。。ですか?
相変わらずの妙な言葉遣いで会話に割って入ったのは、火神だった。
そこで他の部員たちは、先程以上のテンションで「えええ~!?」と叫んでいた。
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