ハラスメント今昔
「本当にしつこい」
セナはパソコンの画面を睨みながら、吐き捨てた。
こんなに不機嫌を隠さないセナは珍しい。
だけど察してくれているヒル魔は、黙ってセナの頭はくしゃりと撫でた。
日本ではアメリカンフットボールの人気が下がっている。
これはセナの実感であり、多分当たっていると思う。
おそらくブームが去りつつあるのだ。
セナが「アイシールド21」と名乗り始めた頃は、そこそこ盛り上がった。
何か面白そうだという好奇心から、注目が集まったのだろう。
そして同時期に力が強い選手も多かったこと。
さらにセナを含めた数名が大学、社会人、そしてNFLへと進んだこと。
やはり自国の選手が世界に出ると、その種目は盛り上がるのだ。
だけどそこから動きがなくなった。
セナもかつての仲間たちも活躍はしているが、目新しいトピックスがない。
そんなときにNFLは、テレビの地上波放送がなくなった。
アメフトの日本トップの活躍は、有料でなければ見られなくなったのだ。
こうしてコアなファン以外の関心は薄れていく。
そんな中、日本で報じられる久々のアメフトネタは不祥事だった。
関東のある大学のアメフト部の学生寮で、薬物が見つかったという事件だ。
しかもどうやら大学側で隠ぺいしようとしたらしい。
この大学は少し前にも別の不祥事で、事件になっている。
監督を変えて、出場停止期間を経て、復活を果たしたばかりだったのだ。
「取材を申し込まれたって、言えることは何もないし」
セナはパソコン画面を見ながら、文句を言った。
薬物なんて、絶対に手を出してはいけない。
関係した選手、隠匿しようとした監督やスタッフ、大学関係者。
それらを全て明らかにして、罪に見合った処罰を受けるべき。
だけど関係ない選手は、アメフトを続けられるようにしてほしい。
セナが持つのは、そんな当たり前の感想だ。
だけどそれを表明することはなかった。
セナの立ち位置は現在の日本アメフトの現役の頂点の1人。
つまりアメフト界ではそれなりに注目される立場だからだ。
下手に擁護すれば、逆にかの大学への風当たりが強くなるだろう。
強めに非難すれば、傷つく者がいるかもしれない。
そう思うと、発言するのが躊躇われたのだ。
だが多くのマスコミが、セナに意見を求めてきた。
公開しているメールアドレスに、取材申し込みが殺到しているのだ。
今回のかの大学の事件について、ご意見をお願いしますと。
シーズン中なので、取材には応じないという定型メールを返信している。
だけど「そこを何とか」と、さらなる返信が押し寄せてくるのだ。
「ヒル魔さんのとこにも、取材申し込みありますよね?」
不機嫌なセナの頭を撫でてくれた男に、質問をしてみる。
だがすぐに愚問だったと思った。
セナより遥かに雄弁である彼に、取材がないはずがない。
だがヒル魔からは悟ったような表情で、頷くだけだった。
「これって何ハラになるんでしょうね?」
セナは「ハァァ」とため息をつきながら、そう言った。
セクハラ、パワハラ、モラハラ等々。
世間では多くのハラスメントがある。
なら断っても断っても送られてくる取材申し込みは何になるのだろう?
セナはパソコンの画面を睨みながら、吐き捨てた。
こんなに不機嫌を隠さないセナは珍しい。
だけど察してくれているヒル魔は、黙ってセナの頭はくしゃりと撫でた。
日本ではアメリカンフットボールの人気が下がっている。
これはセナの実感であり、多分当たっていると思う。
おそらくブームが去りつつあるのだ。
セナが「アイシールド21」と名乗り始めた頃は、そこそこ盛り上がった。
何か面白そうだという好奇心から、注目が集まったのだろう。
そして同時期に力が強い選手も多かったこと。
さらにセナを含めた数名が大学、社会人、そしてNFLへと進んだこと。
やはり自国の選手が世界に出ると、その種目は盛り上がるのだ。
だけどそこから動きがなくなった。
セナもかつての仲間たちも活躍はしているが、目新しいトピックスがない。
そんなときにNFLは、テレビの地上波放送がなくなった。
アメフトの日本トップの活躍は、有料でなければ見られなくなったのだ。
こうしてコアなファン以外の関心は薄れていく。
そんな中、日本で報じられる久々のアメフトネタは不祥事だった。
関東のある大学のアメフト部の学生寮で、薬物が見つかったという事件だ。
しかもどうやら大学側で隠ぺいしようとしたらしい。
この大学は少し前にも別の不祥事で、事件になっている。
監督を変えて、出場停止期間を経て、復活を果たしたばかりだったのだ。
「取材を申し込まれたって、言えることは何もないし」
セナはパソコン画面を見ながら、文句を言った。
薬物なんて、絶対に手を出してはいけない。
関係した選手、隠匿しようとした監督やスタッフ、大学関係者。
それらを全て明らかにして、罪に見合った処罰を受けるべき。
だけど関係ない選手は、アメフトを続けられるようにしてほしい。
セナが持つのは、そんな当たり前の感想だ。
だけどそれを表明することはなかった。
セナの立ち位置は現在の日本アメフトの現役の頂点の1人。
つまりアメフト界ではそれなりに注目される立場だからだ。
下手に擁護すれば、逆にかの大学への風当たりが強くなるだろう。
強めに非難すれば、傷つく者がいるかもしれない。
そう思うと、発言するのが躊躇われたのだ。
だが多くのマスコミが、セナに意見を求めてきた。
公開しているメールアドレスに、取材申し込みが殺到しているのだ。
今回のかの大学の事件について、ご意見をお願いしますと。
シーズン中なので、取材には応じないという定型メールを返信している。
だけど「そこを何とか」と、さらなる返信が押し寄せてくるのだ。
「ヒル魔さんのとこにも、取材申し込みありますよね?」
不機嫌なセナの頭を撫でてくれた男に、質問をしてみる。
だがすぐに愚問だったと思った。
セナより遥かに雄弁である彼に、取材がないはずがない。
だがヒル魔からは悟ったような表情で、頷くだけだった。
「これって何ハラになるんでしょうね?」
セナは「ハァァ」とため息をつきながら、そう言った。
セクハラ、パワハラ、モラハラ等々。
世間では多くのハラスメントがある。
なら断っても断っても送られてくる取材申し込みは何になるのだろう?
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