ラストシーン

「落ち込んでるか?」
ヒル魔はどこか覇気のないセナに声をかける。
セナは恨めし気にヒル魔を見ると「落ち込んでますよ」と答えた。

セナはわかりやすく、元気がなかった。
リビングのソファでスマホを見ているだけなのに、それがわかる。
ここ最近にしては、珍しいことだった。
もう子供ではないのだ。
試合などで少々失敗しても、引きずることはない。
さっさと気持ちを切り替えて、前を向く。
そんなセナが元気がないのは、珍しいことだった。

「まぁまぁ、元気出せって」
ヒル魔はいつになく優しい声をかけた。
なぜなら心当たりがあるからだ。
セナが思いっきりブルーな理由に。
だがセナは「無理です」と首を振った。

「だって、センセイが死んじゃったんですよ!?」
「は?」
「そりゃ死亡フラグ立ちまくってましたけど、こんないきなり!」
「漫画の話か!」

思わぬ種明かしに、ヒル魔が絶句した。
セナが最近ハマっている漫画の作中で、推しキャラが死んだのだ。
ショックを受けたのは知っていたが、まさかそれを引きずっているとは。
そもそもその漫画は、人気キャラでもザクザク死ぬことで有名だった。

「生き返らないかなぁ」
溜息と共にそんなことまで言われると、さすがのヒル魔も呆れるしかなかった。
そして心の底から「心配して損した」と思ったのだった。
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