金剛阿含と和風なお見舞い
「これ、お見舞いです。」
セナは睡眠時間を削って作り上げた力作を掲げてみせる。
阿含はセナではなく、その背後でニヤニヤ笑うヒル魔を睨みつけた。
現在NFLで活躍する日本人プレイヤーは4人。
ヒル魔とセナ、進清十郎、そして金剛阿含である。
注目され、何かと比較される彼らだが、実はあまり交流がない。
理由は簡単、所属しているリーグが違うからだ。
リーグが違う進、阿含とは試合で会うことさえないのだ。
そんなシーズン終盤のある日、阿含が負傷した。
試合中に敵チームの選手から強引なタックルを受けたのだ。
阿含にまったく非はなく、どう見ても相手の方が悪い。
だけどだから怪我が治るわけでもない。
選手生命に影響はないが、今シーズンは絶望。
阿含は悔しさを噛みしめながら、入院中だった。
そこへヒル魔とセナが現れたのだ。
正直言って、阿含にとっては、めんどくさい話だった。
それにかつて阿含を負かした忌々しい相手に、こんな姿は見せたくない。
だけど2人はどこ吹く風で、満面の笑顔で現れた。
もっともセナはニコニコ、ヒル魔はニヤニヤ、笑顔の質はかなり違ったが。
「阿含さん、大丈夫ですか?」
セナが病室に飛び込むなり、阿含のベットに駆け寄ってきた。
ここは個室で、それなりに広いのに、一瞬で。
こんなときまで、俊足を披露すんな。
阿含は心の中だけで、悪態をつく。
ヒル魔はその後ろから、悠然と近づいてきた。
「よぉ。見舞いに来てやったぞ。」
ヒル魔は不敵にそう言い放ち「ケケケ」と笑った。
トレードマークだった逆立てた金髪はもうない。
だが阿含もまたもうドレッドヘアはやめている。
2人とも黒い短髪だ。
セナだけが高校時代と同じ、毛先がピョコピョコと撥ねていた。
「これ、お見舞いです。」
セナはニコニコ笑顔のまま、手に持っていたカラフルな物体を差し出した。
だがすぐに申し訳なさそうに「実は千羽は間に合わなくて二百羽ちょいなんです」と言う。
そう、それは千羽鶴だった。
何色かの折り鶴をグラデーションに並べて、糸をつなげたものだ。
日本人には馴染み深い、見舞いの定番品である。
これほど俺のキャラに似合わない見舞いはない。
阿含は呆れながら、セナの後ろでニヤニヤ笑うヒル魔を睨みつけた。
セナの笑顔を見ているうちに、完全に怒鳴るタイミングを逸してしまった。
だけど不意打ちを食らった怒りが収まらず、ヒル魔に当たるしかなかったのだ。
セナは睡眠時間を削って作り上げた力作を掲げてみせる。
阿含はセナではなく、その背後でニヤニヤ笑うヒル魔を睨みつけた。
現在NFLで活躍する日本人プレイヤーは4人。
ヒル魔とセナ、進清十郎、そして金剛阿含である。
注目され、何かと比較される彼らだが、実はあまり交流がない。
理由は簡単、所属しているリーグが違うからだ。
リーグが違う進、阿含とは試合で会うことさえないのだ。
そんなシーズン終盤のある日、阿含が負傷した。
試合中に敵チームの選手から強引なタックルを受けたのだ。
阿含にまったく非はなく、どう見ても相手の方が悪い。
だけどだから怪我が治るわけでもない。
選手生命に影響はないが、今シーズンは絶望。
阿含は悔しさを噛みしめながら、入院中だった。
そこへヒル魔とセナが現れたのだ。
正直言って、阿含にとっては、めんどくさい話だった。
それにかつて阿含を負かした忌々しい相手に、こんな姿は見せたくない。
だけど2人はどこ吹く風で、満面の笑顔で現れた。
もっともセナはニコニコ、ヒル魔はニヤニヤ、笑顔の質はかなり違ったが。
「阿含さん、大丈夫ですか?」
セナが病室に飛び込むなり、阿含のベットに駆け寄ってきた。
ここは個室で、それなりに広いのに、一瞬で。
こんなときまで、俊足を披露すんな。
阿含は心の中だけで、悪態をつく。
ヒル魔はその後ろから、悠然と近づいてきた。
「よぉ。見舞いに来てやったぞ。」
ヒル魔は不敵にそう言い放ち「ケケケ」と笑った。
トレードマークだった逆立てた金髪はもうない。
だが阿含もまたもうドレッドヘアはやめている。
2人とも黒い短髪だ。
セナだけが高校時代と同じ、毛先がピョコピョコと撥ねていた。
「これ、お見舞いです。」
セナはニコニコ笑顔のまま、手に持っていたカラフルな物体を差し出した。
だがすぐに申し訳なさそうに「実は千羽は間に合わなくて二百羽ちょいなんです」と言う。
そう、それは千羽鶴だった。
何色かの折り鶴をグラデーションに並べて、糸をつなげたものだ。
日本人には馴染み深い、見舞いの定番品である。
これほど俺のキャラに似合わない見舞いはない。
阿含は呆れながら、セナの後ろでニヤニヤ笑うヒル魔を睨みつけた。
セナの笑顔を見ているうちに、完全に怒鳴るタイミングを逸してしまった。
だけど不意打ちを食らった怒りが収まらず、ヒル魔に当たるしかなかったのだ。
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