セナが大学を卒業したのを機に、俺たちは一緒に暮らすようになった。
2人ともアメフトを続けているが、所属チームは違う。
だから昼間はそれぞれ自分のチームで練習をし、別々の時間を過ごす。
夜だけが俺たちの恋人同士の時間となる。

高校時代、特にデスマーチなどでは文字通り寝食を共にした。
それは濃密な時間だった。
今はそれに比べて共有する時間は短いが、別に不満はない。

そんな自宅で2人で過ごす夜。俺はスコンとセナの頭を叩いた。
痛!何するんですか?と、セナが俺の方を見る。
さっきっから何度も呼んだ。返事がねぇから。
俺は素っ気なく答えた。

すみません。何かボーっとしてて。お風呂入ります。
セナはどこか感情がこもらない声で言った。
俺はどこか覚束ない足取りで風呂場に向かうセナの後姿を見送る。

一緒に暮らし始めてから。
セナはごくたまに今みたいにぼんやりと魂がぬけたような状態になることがある。
無表情でじっと動かない。最初は目を開けて失神しているのかと思ったくらいだ。
それが何を意味しているのか、俺はかなり悩んだ。
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