リスク

セナはその小さな身体を縄でグルグル巻きに縛られ、普段は使われていない用具室に転がされていた。
いきなり背後から襲われて、声を上げる暇さえなかった。
そんなことをされたのはアメフト部に入部するとき、ヒル魔にやられて以来だ。
こんな短い期間にまたしてもこんな目に遭うとは、余程運がないのだろうか?
それにしても暑い。朝のニュースで今日は猛暑日だと言っていた気がする。
締め切られた部屋の中では尚更だ。
何でこんな目にあっているのか。いつまでこうしていればいいのか、
聞きたくても布で口を塞がれているし、そもそもこの部屋にはセナ以外誰もいない。
せめて水飲みたいな。。。と思いながら、意識が遠くなっていく。

午後の授業が始まる前にヒル魔が教室の自分の席に戻ると、そこにはメモが1枚。
「小早川瀬那を預かっている。放課後、校舎裏に来い。」
何とも古典的で、笑ってしまうような定番ぶりだった。
ちょっと席を離れた短い時間にメモが置けるということはおそらく同じクラスの人間。
セナを捕らえるという強行手段に出るような発想の持ち主。
そしてなによりも見覚えのある筆跡。
犯人の目星はすぐについた。ヒル魔の右斜め前に何食わぬ顔で座っている男子生徒。
ヒル魔の黒い手帳にいくつかのネタを書き込まれ、何度かそれを利用したことがある。
やれやれだ。ヒル魔は午後の授業開始のチャイムを無視して、教室を出て行った。
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