ピアスデビュー

何でダメなんですか!
セナは大声で抗議する。
だがヒル魔は頑として「ダメだ」と首を振った。

セナももう20歳、大学3年生になった。
成人式も終え、無事3年生に進級したセナは、1つやりたいことがあった。
それはピアスを身に着けることだ。

高校性の頃から、ずっと憧れていたのだ。
恋人であるヒル魔の耳を飾るピアスの妖艶な美しさ。
童顔なセナには、ヒル魔のようなリングのピアスが似合わないことはわかっている。
だが目立たない小さなピアスだったら、悪くないんじゃないだろうか。

セナはヒル魔に相談した。
ピアスホールを開けるにあたって、手順や注意すべき点を聞きたかった。
さらにセナに似合うピアスを一緒に見立ててくれれば、ありがたい。
だがヒル魔は「ダメだ」と言って、取り合ってくれない。

何でダメなんですか!
セナは大声で抗議する。
だがヒル魔は頑として「ダメだ」と首を振った。

親からもらった大事な身体に、穴なんか開けるな!
ヒル魔がそう怒鳴った時には正直言って、呆れた。
両耳にピアスをいくつもぶら下げた男が発して、これほど説得力のない言葉はない。

それでもセナはヒル魔にピアスをしたいと言い続けた。
別にセナは20歳の大人だし、そもそもピアスに年齢制限はない。
ヒル魔がどう言おうと、穴を開けてしまえばこっちのものだ。
だが記念すべきピアスは、恋人にも賛成してもらいたかった。

次のリーグ戦でテメーらが勝ったら、俺がピアスをくれてやる。
ついに根負けしたヒル魔が、そう言った。
ライスボウル出場のために、大学リーグの頂点に立たなければならない
勝ち上がっていけば、ヒル魔の最京大とセナの炎馬大は絶対にどこかで対戦するのだ。
そして4年生のヒル魔にとっては、大学最後の公式戦となる。

結論から言うと、セナたちの炎馬大は、その年ライスボウルへと駒を進めた。
つまりこのピアスを巡る攻防はセナの勝ち。
これでヒル魔が諦めて、セナがまんまとピアスを手に入れて、この騒動はひとまず終結した。
だがまだ後日談があったりする。
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