フェイク

また誕生日がやってくる。
セナは憂鬱な気分で、ため息をついた。

高校を卒業して、大学、そして社会人。
今度の誕生日が来れば、もう四捨五入すれば30歳という年齢になる。
もう誕生日が嬉しい年齢ではない。
だがセナがため息をついている理由はそれだけではなかった。

発端は一昨年の誕生日の少し前。
Xリーグで活躍するランニングバックであるセナは、アメフト雑誌の取材を受けた。
そのとき21番という背番号について聞かれて、こう答えた。
この数字に縁があるみたいです。誕生日も12月21日だし。

その結果、チームのクラブハウスや雑誌の編集部にはセナ宛てに大量のプレゼントが贈られてきた。
しかも手作り品とかメールアドレス付きの手紙とか、気合いが感じられるものも多い。
自分が人気者だという自覚がまったくないセナはただただ驚くばかりだ。
だが恋人であるヒル魔は盛大に妬いた。
贈り主の身元と黒い手帳を照会し始めたのを見て、セナは慌ててヒル魔を諌めた。

そして昨年の誕生日。
ほとぼりは冷めているだろうと思っていたが、甘かった。
プレゼントの数は増えたし、下心が見え隠れす手紙も増えた。
ヒル魔は舌打ちをしながら、手を打つべきだったと毒づいた。

正直なところ、大量のプレゼントは凶器だ。
服や装飾品は好みがある。
手紙は返事を書くだけで、時間を取られてしまう。
食べ物は一見無難だが、賞味期限という問題がある。
不要ならば処分するしかないのだが、セナはそこまでバッサリと割り切ることもできない。
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