年越し

「ええと。あの」
セナは恐る恐る声をかける。
パソコンのキーを叩いていたヒル魔は「あ?」と不機嫌な声を上げた。

クリスマスボウルで勝利した泥門デビルバッツ。
その後は色々と注目され、慌ただしい日々を過ごした。
そして年末。
年が明ければワールドカップユースの話でまた忙しくなる。
だが部員たちはそれを知る由もなく、ようやく落ち着いた時間を楽しんでいた。

そんな中、部員たちは部室の大掃除に取りかかっていた。
午前中は軽く、身体を動かす程度。
そして午後、世話になった部室を綺麗にして、冬休みだ。
だがここに思いも寄らない事態が待ち受けていた。

「なんだよ、これ!」
「終わるのかよ?今日中に!」
大掃除開始からしばらくして、そこここから悲鳴が上がり始めた。
たかが掃除、ちゃっちゃと終わらせる。
そんなことを思っていた彼らの想定外だったのだ。

「カジノって毎日、掃除とかどうしてるのかな?」
セナのひとりごとに、だが全員が頷いた。
そう、部室に鎮座ましましているカジノアイテムが問題なのだ。
ルーレットやスロットマシン、ピンボール等々。

それらは色鮮やかで、一見したところ綺麗だ。
だが実際は細かい部品で出来ており、よくよく見るとそこここに埃がたまっている。
また金属の部分は皮脂、つまり手の油などで曇っていた。
それをピカピカにしようと思ったら、思いのほか手間がかかる。
しかも台数がそれなりにあり、結構時間がかかるのだ。
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