2人のお正月
** この作品は2014年のライスボウルの試合内容に準じております。**
「ったく、面白ぇな。」
ヒル魔は楽しそうに画面に見入っている。
セナは淹れたてのコーヒーのカップを置くと、ヒル魔の隣に腰を下ろした。
年が明けて、1月3日。
ヒル魔とセナは、一緒に暮らす部屋のテレビでライスボウルの試合を見ていた。
今年は学生王者K大と社会人王者O(オー)の対戦だ。
この試合の勝者が、日本一になる。
近年、このライスボウルは圧倒的に社会人が強い。
関東王者K大は、学生の中では圧倒的な強さで、3年連続のライスボウル出場だ。
だが昨年も一昨年もライスボウルでは負けていた。
どうしても個々の技能も、チーム力も、学生より社会人が勝るのだ。
だからK大はさまざまなトリックプレーを用意していた。
そして今までの公式戦では使わなかった、多彩なパスワーク。
それに随所に小ネタのような攪乱も入っていた。
例えば、どう考えても意味のないような選手の交代など。
何か後半への伏線か、もしくはただ意味を考えさせることが狙いなのか。
または無駄に大きな声を出して、オフサイドを誘ったりする。
セコい!と眉をひそめる者もいるかもしれない。
だけどヒル魔はこういうプレイが大好きだった。
姑息な手段を取ることではない。
強い相手に挑むのに、なりふり構わずぶつかっていくその姿勢が好きなのだ。
楽しそうなヒル魔を見ていると、セナも愉快な気分になって来る。
実はセナだって、こういうのは嫌いじゃない。
っていうか、むしろこんなプレイをする側だったのだ。
特に高校時代、ヒル魔は明らかに格上の相手との試合の時、トリックプレイを多用した。
フォーメーションの確認をする振りをして、いきなりプレイを始めたり。
観客を煽る素振りをして相手の気を反らしたこともある。
今日のK大のプレイよりも、はるかに姑息だ。
前半が終わって17-7。
K大はリードを許したものの、食い下がっている。
1トライとキックで追いつける、十分射程内の点差だ。
ヒル魔もセナも、今年はまだまだ波乱がありそうだと期待した。
「ったく、面白ぇな。」
ヒル魔は楽しそうに画面に見入っている。
セナは淹れたてのコーヒーのカップを置くと、ヒル魔の隣に腰を下ろした。
年が明けて、1月3日。
ヒル魔とセナは、一緒に暮らす部屋のテレビでライスボウルの試合を見ていた。
今年は学生王者K大と社会人王者O(オー)の対戦だ。
この試合の勝者が、日本一になる。
近年、このライスボウルは圧倒的に社会人が強い。
関東王者K大は、学生の中では圧倒的な強さで、3年連続のライスボウル出場だ。
だが昨年も一昨年もライスボウルでは負けていた。
どうしても個々の技能も、チーム力も、学生より社会人が勝るのだ。
だからK大はさまざまなトリックプレーを用意していた。
そして今までの公式戦では使わなかった、多彩なパスワーク。
それに随所に小ネタのような攪乱も入っていた。
例えば、どう考えても意味のないような選手の交代など。
何か後半への伏線か、もしくはただ意味を考えさせることが狙いなのか。
または無駄に大きな声を出して、オフサイドを誘ったりする。
セコい!と眉をひそめる者もいるかもしれない。
だけどヒル魔はこういうプレイが大好きだった。
姑息な手段を取ることではない。
強い相手に挑むのに、なりふり構わずぶつかっていくその姿勢が好きなのだ。
楽しそうなヒル魔を見ていると、セナも愉快な気分になって来る。
実はセナだって、こういうのは嫌いじゃない。
っていうか、むしろこんなプレイをする側だったのだ。
特に高校時代、ヒル魔は明らかに格上の相手との試合の時、トリックプレイを多用した。
フォーメーションの確認をする振りをして、いきなりプレイを始めたり。
観客を煽る素振りをして相手の気を反らしたこともある。
今日のK大のプレイよりも、はるかに姑息だ。
前半が終わって17-7。
K大はリードを許したものの、食い下がっている。
1トライとキックで追いつける、十分射程内の点差だ。
ヒル魔もセナも、今年はまだまだ波乱がありそうだと期待した。
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