諦めなければ

** この作品は2013年の甲子園ボウルの試合内容に準じております。**


「こういうの、好きじゃないです。」
セナはため息混じりにそう言った。
声色にも少々残念そうな色合いがこもっている。

今日は甲子園ボウルの試合の日。
ヒル魔とセナは、リビングでテレビ観戦をしていた。
残念ながら多忙の身なので、リアルタイムで見ることはできなかった。
昼間にあった試合のBS放送の録画を、夜中にチェックしていたのだ。

「やっぱりK大、強いですね。」
「今年こそ、ライスボウルで雪辱を果たしたいんだろ」
基本的にはラブラブな恋人同士のセナとヒル魔だが、ことアメフトに関しては違う。
しっかりと真剣なモードに切り替えるのだ。
それはアメフトと恋愛を両立させる2人が、いつの間にか身に着けたコツのようなものだ。

今年は関西のK大と関東のN大の対戦だ。
この試合の勝者が、学生代表となる。
そして年明けに社会人王者と対戦して、日本一を競うのだ。
K大は昨年と一昨年、甲子園ボウルを制したものの、2年連続で社会人代表に敗れている。
そして今回の甲子園ボウルも、優勢だ。
第3Qを終えて13-3、少しだがリードを保っている。

「だけどまだ1トライで追いつけますし、わかりませんね。」
「そうだな。」
セナは真剣な表情で画面に見入っている。
大きなソファにちょこんと身を乗り出している様子がかわいくて、ヒル魔はこっそりと口元を緩ませた。

だが第4Qに入り、K大は更に追加点を入れた。
フィールドゴールで3点、そしてタッチダウンで7点。23-3だ。
これでN大は、残り数分で2タッチダウンを決めなければいけなくなった。
かなり難しいけれど、絶対に不可能ではないと思う。

だけど試合はもうそういう雰囲気ではなかった。
N大はフィールドゴールの3点しかないので、せめて1トライは取ろうという雰囲気だ。
ベンチではコーチ陣が「まぁここまでよくやった」とでも言いたそうな笑顔だ。
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