迷子

おかしい。
こっちの道から行けば、近いと思ったのに。
今日は大事な試合の日。
大学に入って初めて、ヒル魔と逆サイドに立って試合をする日だ。
それなのに、どうやら迷子になってしまった。

セナはキョロキョロと辺りを見回した。
どこかで見たことがあるような気がするが、正しい道がわからない。
多分スタジアムからそんなに離れた場所にはいないはずだ。
それでも自分がどこから来たのかさっぱりわからない。
どうしよう、とセナは力なく空を見上げる。
先程まで晴れていた空は、いつしかどんよりと曇っている。

今の状況で、自分の勘を頼りに道を選ぶのは危険に思える。
誰かに頼るのが、賢明だろう。
だが取り出した自分の携帯電話は切れており、電源が入らない。
そうだ。昨日充電を忘れたのだ。
セナはますます焦り、辺りをキョロキョロと見回した。

誰かスタジアムに向かう人に会えるかもしれない。
炎馬大学か、最京大学の人。
選手じゃなくて観戦の人でもいい。
いやもうこの際、道を知っている人なら誰でも。
セナは再び辺りを見回したが、そこにはセナ以外の通行人の姿すらない。
途方に暮れたセナは、ふぅと大きなため息をついた。
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