ライスボウルの後に

メールの作成画面を開いたものの、文面が思いつかない。
セナは携帯電話を手にしたまま、途方にくれていた。

1月3日、セナはノートルダムの学生寮にいた。
寮に入っている他の学生は皆、年末年始の休暇で実家に帰っている。
だがセナには時間がない。
短い留学期間、フルに練習してにもっと実力をつけたい。
それに並行して、受験勉強も進めなくてはいけない。
だから普段は賑やかだが、1人だと妙に寒々しく感じる寮にポツンと残っているのだった。

今日、日本ではライスボウルが行なわれたはずだ。
ノートルダムはまだ朝だが、日本はもう夜になろうという時間。
もう試合は終わっている時間だ。

後輩たちのクリスマスボウルの試合は、クリフォードが取り寄せてくれた映像で見た。
だがそのクリフォードも今頃は正月休みだし、呼び出すのは気が引ける。
どうしてもライスボウルの結果を知りたかったセナは、意を決して寮のパソコンの前に座った。
そして苦手なパソコンを四苦八苦しながら操作して、ようやく試合を伝えるサイトを探し当てた。
大学生になったヒル魔の最京大学は、社会人代表チームに僅差で敗れていた。

セナはヒル魔に何か言葉をかけたいと思った。
だが携帯電話を取り出したものの、そこで手が止まってしまう。
実際、何と言ったらいいのだろう?
「惜しかったですね」とか「残念です」とか?
それは何だかひどく失礼な気がした。
ヒル魔たちは、きっと持てる力を全て振り絞って戦ったはずだ。
試合も見ておらず結果しか知らないセナが、軽々しく評することなど出来ない。

ライスボウル、結果だけネットで見ました。お疲れ様でした。
セナはようやくそれだけ打ち込んで、メールを送信した。
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